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コロナウィルスは「Wash hands」か「手を洗う」のか?

田代真人編集執筆者
在福民放5局キャンペーンのyoutubeより

巷を席巻しているコロナウィルス。このウィルスの撃退にはなにより手を洗うことが最大の防御だそうだ。たしかに日ごろから見ているとトイレに入って手を洗わない輩が多いのには忌々しく思っていたものだ。しかしさすがにこれだけ喧伝されるとほとんどの人が手を洗うようになってきた。それに加えて、最近はジャニーズ嵐も手洗いのススメ「手洗い動画(Wash Your Hands)」を動画で流すようになった。

で、これを真似たのか、いろんなところで「Wash Your Hands」を呼びかける動きが出てきている。たとえば、福岡では「民放5局アナがタッグ コロナ啓発CM」として、九州朝日放送(KBC)、RKB毎日放送、福岡放送(FBS)、TVQ九州放送、テレビ西日本(TNC)の5局が、合同でCMを流している。

「まけない」というテーマもあるが、もう一つ気になるのが「Wash hands」だ。「手を洗おう」というメッセージはわかる。画面には「手を洗おう」とテロップが出るが、アナウンサーたちは一様に「Wash hands(ウォシュ ハンズ)」と呼びかける。だれ一人ひと言も「手を洗おう」とは言わない……。しかしなぜそれを英語で言わなければならないのだろうか? 

メディアとは、伝えたいことを伝える媒体だ。せっかくメディアを使うのに、その中身は伝わるものでなければ伝わらない。そのうえで、伝えたいターゲット(たとえば子どもなら子ども、20代なら20代)が接触するメディアではそのターゲットに伝わる言葉で伝えないと伝わらないのだ。

英語ならまだわかると思ったのか、しかし英語がわからない人たちにとっては、その言葉がたとえポルトガル語であろうが、それは同じこと。伝わらないのである。なぜテレビという多くの人々に伝えるメディアを使うのに英語で伝えようとするのか? せっかくみんなチカラを合わせて伝えたいのであれば日本語がたしかではないか? 「手を洗おう」という言葉がどの世代にももっとも強く大きく伝わるはずである。幼児にでも老人にでも伝わる言葉である。

ディズニーランドでは子どもに話をするときには、その子の背の高さに合わせて接客をするキャストが屈んで目の高さを合わせて話をするという。そのような細やかさが求められているのがマスコミなのではないのか。伝えたい相手に伝わる言葉で伝わる姿勢で伝えようとする。この姿勢こそがメディアにいま求められているのである。もちろんメディアだけではなく、いま内閣にも求められている姿勢である。

編集執筆者

1963年福岡県出身。86年九州大学工学部卒業後、朝日新聞社入社。その後、学習研究社にてファッション女性誌編集者、ダイヤモンド社にてWebマスター、雑誌編集長、書籍編集などを経て、2007年メディア・ナレッジ設立。代表に就任。出版&電子出版、Webプロデューサー、PRコンサルタントとして活動。現在は、駒沢女子大学教授、桜美林大学非常勤講師を務める。専門は「コミュニケーション」「編集論」。

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