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中村修二氏からの忠告「このままじゃ日本は沈没する!」

田代真人編集執筆者

年末が近づき、そろそろ街中がきらびやかになっていく季節だ。ここで欠かせないのがイルミネーション。日本中で輝く、色とりどりの光は私たちの目を和ませてくれる。これらの光を放つのがLED(発光ダイオード)であることはみなさんご存じだろう。

しかし、ほんの20年前、LEDはまだ赤色と黄緑だけだった。クリスマスツリーを飾るライトも豆電球に色をつけたものが一般的だった。そこに登場したのが、光の3原色で足りなかった青色LEDだ。青色LEDができたからこそ白色LEDができ、LEDが照明としても使われるようになった。

この実用化可能な高輝度青色LEDを開発し、量産化の道筋をつけたのが、中村修二氏であった。当時、20世紀中の実現はありえないとされた彼の業績は、エジソン以来と言われ、国際的にも高く評価されている。パソコンのモニター、街中の信号機、最近大きく普及しはじめたLED電灯など、すべてが彼の業績から始まり、前に動き出したという現実を見れば、これらの評価は当然のことと言えよう。

その後、米国に移住し、カリフォルニア大学カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)教授に就任。現在はLEDを開発するベンチャー企業soraaの経営者でもある。また、数々の受賞歴があるが、2011年には、我々もよく耳にする米国テレビ芸術科学アカデミー(The Academy of Television Arts & Sciences)主催のエミー賞を、技術開発部門で受賞。テレビの技術的発展に貢献したという理由だ。それほどに私たちの普段の生活に関わる業績を残している。

中村修二氏 (c) naonori kohira
中村修二氏 (c) naonori kohira

先日、その中村修二氏の話を聞く機会があったので、その内容を紹介したい。今回、株式会社アクアビジネスコンサルティング/日中アジア太平洋ビジネス研究会主催の講演会だったのだが、久しぶりにお会いする中村氏の毒舌振りは相変わらずであった。苦笑しつつも、米国と日本の違いについて非常に興味深いお話を聞けた。

中村氏曰く「アメリカのいいところは多様性でしょう。学生を見ても、インド系やアジア系の学生がいるからいいのです。もともとのアメリカ人だけだと国としても衰退すると思いますよ。でも彼らアングロサクソン系のアメリカ人のすごいところは、とにかく理論が好き。ものごとの事象について、あとからうまく理論付けしてくる。本もよく読む。

アジア系の学生が、理論はよくわからないけどチカラ技でなにかをつくると、それをしっかり理論で説明してくる。この両者があるからうまくいくんでしょう。

いま私のところの学生は、アメリカ人が5割、あとはインド人、中国人、台湾人、韓国人ですね。日本人はいません。外国人はハングリーだから、やる気もすごいですね」

最近の日本人の少なさに落胆するという中村氏。日本人はとても優秀な民族で半端なく賢い。だからいいものを作る。でも商売が下手。英語によるコミュニケーション能力が欠如しているので、せっかく世界に通じるいいものを作っても、それが日本国内だけにとどまり、グローバルな製品にならない。日本人が語学力を付ければ、もっともっと世界でトップを取れるのにもったいないと嘆く。

「アメリカ人も日本人が大好きですよ。とにかく約束を守る。みんながみんな、言ったことをちゃんと最後までやる。こんな民族は日本人だけです。だからアメリカ企業は日本の企業と提携したがるのです。アジアのほかの国では言ったこととやることがまったく違うという国もあります。最後に裏切られる。そういう国と比較するまでもなく日本人は優秀です。言葉さえできれば日本人はなんでもできるんじゃないですかね」

英語で意思表示ができるようになれば、日本人はいまだ世界でもトップレベルでいられるという。また、中村氏は、大学教育の違いについても言及する。

アメリカの理工系の教授はみんな、100%、企業のコンサルティングをやっています。そのうち半分はベンチャー企業の経営者でもある。なぜならそういう人しか、大学が採用しないからです。そうやって旬の情報を学生に還元するわけです。いま起こっていることを学生に教える。だから学生も現場で起こっている生の情報を学べるわけです。

でも日本は違いますよね。昔のことを永遠に教えている先生もいる。学生がかわいそうですよ。だから優秀な若者はどんどんアメリカに来ればいい。そういうふうな流れが当たり前になれば、さすがに日本政府も考えを改めるんじゃないですか。もしくは行くところまで行って沈没すれば目を覚ますかもしれない。半導体がダメ、テレビ業界もダメですから、システムを変えない限り、最後は自動車業界にまでダメになって、このままあらゆる業界がダメになっていきますよ」

中村氏の指摘のとおり、いくらアベノミクスだなんだといっても、日本はいま、円安などで一時的に景気がよい感じがするだけであって、中小企業含め企業が大きく成長している実感はない。いま抜本的な改革を行なっていかないと、人口も減りつつある現在、日本は本当に衰退していくのだろう。英語が話せないうちに体力もなくなって優秀ささえ失われていくかもしれない。

翻って英語学習に関しても、文部科学省が現在行なっている「小学校外国語活動」で、英語のコミュニケーションがうまくいくとも思えない。しかも今後は、現在小学5年生からの活動を小学3年生からに早めるそうだ。中学校から長きにわたって英語を学んできた40〜50代の人たちが話せないのは英語学習を始める時期ではなく、その方法だと思う。それを2年早め、さらに2年早める、といった「英語学習は早くから」というお題目のみを解決策と考えてしまうような官僚と国会議員では、本当にお先真っ暗としかいえない。いまこそ、我々一人ひとりが、なにをやるべきなのか、真剣に考えるときなのだろう。

編集執筆者

1963年福岡県出身。86年九州大学工学部卒業後、朝日新聞社入社。その後、学習研究社にてファッション女性誌編集者、ダイヤモンド社にてWebマスター、雑誌編集長、書籍編集などを経て、2007年メディア・ナレッジ設立。代表に就任。出版&電子出版、Webプロデューサー、PRコンサルタントとして活動。現在は、駒沢女子大学教授、桜美林大学非常勤講師を務める。専門は「コミュニケーション」「編集論」。

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