東大卒エリート官僚と政治家は、なぜ、倫理と道義を失ったのか

 最近のテレビや新聞、雑誌を見ていると、東京大学を優秀な成績で卒業した「高学歴エリート」と呼ばれる人々が、世の中の厳しい批判に晒される姿が目につく。

 例えば、「刑事訴追の恐れ」を理由に、国会の証人喚問で「答弁を控えさせて頂きます」を連発する財務省官僚(東大経済学部卒)。国会の質疑で、「私の記憶のかぎり、会っていません」と、巧妙に「逃げ」を作って会合の事実を否定し続ける経産省官僚(東大法学部卒)。誰が聴いても聞くに堪えない言葉を発しながら、セクハラではないと言い続ける財務省トップ(東大法学部卒)。不適切な援助交際の問題を引き起こし辞任した県知事(東大医学部卒、司法試験合格)。

 もとより、これらの人物は、いずれも法律の専門家であり、前三者は、自身の行為が法律違反であると立証されにくいことを十分に理解したうえで、自身にかけられた疑念を否定し続けているが、彼らのような「高学歴エリート」が、決定的に忘れていることがある。

 それは、公職に就いた者に求められることは、「法令順守」だけではないということだ。

 彼らのような国民に対する重い責任を負った立場の人間が、「法律」を守ることは当然のことであり、それに加えて、そうした立場の人間には、高度なレベルでの「倫理」や「道義」を守ることが求められる。そのことを、決して忘れるべきではない。

 すなわち、この問題は、「法律に反している」ということが立証されなければ、それで良いという問題ではない。国家や地域を運営するような立場にあるエリート官僚や政治家に求められるのは、「法令順守」だけではない。極めて高い水準での「職業倫理」や「道義責任」が求められる。

 ただし、この「職業倫理」や「道義責任」は、「法令順守」のように、外から強制することはできないものであり、あくまでも、そして、どこまでも、その個人の「自覚」や「矜持」に委ねられている。それゆえ、この問題は、究極、なぜ、そうした「自覚」や「矜持」を持たない人間が、この国のエリート官僚や政治家になっているのか、という問題として問われざるを得ない。

 そう考えるならば、いま、多くのメディアで論じられている問題に加え、一つの根源的な問題を、我々は、問わざるを得ない。

 いま、我が国の「エリート」を輩出している東京大学は、いかなる「エリート教育」を行っているのか?

 東京大学は、日本中から頭脳の優秀な若者を集め、教育し、政界、官界、財界、学界など、様々な分野に「エリート」と呼ばれる人材を送り出しているが、それらの人材に、専門知識を身につけさせ、専門資格を与えるだけで、終わっているのではないか?

 もし、東京大学が、真に「エリート養成大学」であるならば、その大学に求められる最も大切なことを、教えていないのではないか?

 「この国の多くの人々の人生に影響を与え、責任を持つ立場のエリートとして、いかに生きるか」

 その最も大切なことを、教えていないのではないか?

 その問題を、問わざるを得ない。

 もとより、この「エリート」という言葉に心理的抵抗を感じる人は少なくないだろう。

 しかし、現実に、「東大卒のエリート」という肩書を得ることによって、他の学歴の人々に比べ、優遇された道、恵まれた道を歩む人間が、その「エリート」としての特権だけを享受し、その立場に求められる責任や義務(ノブレス・オブリージュ)を自覚しないで生きるとすれば、そうした人材を輩出する大学は、本来、国民が期待する教育機関としての役割を果たしていないことになる。

 そうした懸念から、筆者は4月に、『東大生となった君へ - 真のエリートへの道』(光文社新書)という著書を上梓し、東大生となり、東大卒という肩書を得て生きていく人間が、本来、何を学び、何を身につけ、何をめざして歩むべきかを語った。

 もとより、この問題は、東京大学だけの問題ではなく、多くの大学に問われている問題でもある。しかし、さればこそ、東京大学が率先垂範して、「大学の在り方」を示すべきであろう。

 筆者もまた、1974年に卒業した同窓の人間であるが、決して、この問題を偉そうに述べるつもりはない。自身も、自らの歩んだ道を振り返り、恥じる部分もある。悔いる部分もある。しかし、昨今の世相を見ていると、いま、東大生となり、東大卒の肩書を持って生きる人間が、心に刻むべきことがあるのではないかと、改めて思う。そして、「エリート養成機関」としての東大が、自らの教育の在り方を、根本から省みる必要があるのではないかと思う。

 その思いが、筆者に、本稿の筆を執らせた。

 読者諸氏のご意見を仰ぎたい。

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2018年 4 月 30日、 光文社新書 より上梓した、

『東大生となった君へ - 真のエリートへの道』は、                   

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興味のある方は、お読みください。