若き日に、一人の先達と巡り会い、縁あって、戦略思考の鍛え方について学んだ。

「戦略思考を鍛えたいならば、その戦略的状況を、瞬間的に視点を移し、反対側から見る訓練をするとよい。

 将棋盤に喩えて言えば、その将棋盤を180度回し、相手の立場から盤面を見る訓練をするとよい。」

 この先達の教えに従い、それからの年月、仕事を通じて、戦略思考の修練をしてきた。

 そして、瞬間的な視点の転換を大切な心構えとして行じながら、職業人としての道を歩んできた。

 その結果、視点の転換という戦略思考の要諦は、それなりの身体的な智恵として身につけることができたが、一つ、不思議なことが起こった。

「相手の立場に立って、その戦略思考を読む」

その修練をしていると、副産物のごとく、自然に一つの力が身についたのである。

「相手の立場に立って、その心境を思いやる」 

 そして、その力を身につけたとき、戦略思考の本当の意味が、見えてきた。

「戦略」と書いて

「戦いを略(はぶく)」と読む。

 すなわち、戦略思考とは、「いかにして戦うか」の思考ではなく、「いかにして戦わないか」の思考。

 相手の立場と心境を考えるならば、戦わないでもよい場面では、戦いを避ける。

 そのことの大切さに気がついたのである。

 それ以来、さらに縁あって「戦略参謀」という仕事に携わってきた。そして、著書でも「戦略」について語ってきた。

 そのため、しばしば、経営者の方々から、企業の戦略について、相談を受ける。

 そのとき、いつも心に浮かぶのは、やはり、先ほどの言葉。

「戦略」と書いて、

「戦いを略(はぶく)」と読む。

 では、なぜ、経営者は、無用の戦いをせず、目的を達するために、戦略思考を尽くさなければならないのか。

 この問いに対して、経営コンサルタントやビジネス・スクールの方々は、しばしば、こう答える。

「経営資源を有効活用するため」「経営資源を無駄に使わぬため」

 たしかに、それも一つの見識。

 しかし、永年、経営の現場で苦闘する人間の姿を見つめていると、この答えには、何か乾いた寂しさを感じる。

 では、なぜ、経営者は、戦略思考を尽くさなければならないのか。

 それは、決して、「経営資源」を無駄に使わぬためではない。

「部下や社員の人生の

 かけがえのない時間」

 それを大切にするために、経営者は、戦略思考を尽くさなければならない。

 なぜなら、いかなる華々しい戦略も、その陰で、一人の人間が、かけがえのない人生の時間を捧げているからである。

 そのことに気がついたとき、 真の「戦略思考」が始まるのであろう。

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 2001年3月1日、ダイヤモンド社より上梓した、

 『まず、戦略思考を変えよ - 戦略マネジャーの8つの心得』

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また、

 2002年3月18日、講談社から上梓した、

『知的プロフェッショナルへの戦略』

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では、

時代を経ても変わらない戦略思考の理を、営業の現場の姿から詳しく語っています。

興味のある方は、お読みください。