世の中の誰もが知っているイソップの「北風と太陽と旅人」の寓話。

 それは、北風と太陽が、旅人のマントを脱がせることを競う物語。

 まず、最初に、北風が「俺が旅人のマントを脱がせてみせる」と言い、マントを剥ぎ取ろうと強い風を吹き付ける。

 しかし、旅人は、寒さのあまり、ますますしっかりマントを掴んで離さない。

 そのため、北風の試みは失敗に終わる。

 そこで、次に太陽が「私が、旅人のマントを脱がせてみせましょう」と言い、旅人を、ポカポカと暖める。

 すると、旅人は、暖かさのあまり、自然にマントを脱ぎ、この競争は、太陽の勝ちに終わる。

 このイソップ物語は、あまりにも有名であるが、実は、「心理学版・北風と太陽と旅人」という物語がある。

 これは、まず北風が「俺がマントを脱がせてみせる」と言って、旅人に強い風を吹きつける。だが、旅人がマントを掴んで離さないため、北風の試みは、失敗に終わる。

 ここまでは、オリジナル版と同じである。

 しかし、そこで、太陽が、「私が脱がせてみせましょう」と言って、旅人をポカポカと暖める。

 すると、旅人は、太陽に向かって、こう言うのである。

 「太陽さん。そうしてポカポカと暖めて、私のマントを脱がそうとしているのでしょう。見え透いていますよ。残念ながら、私は、あなたの思う通りにはなりませんよ。」

 こうして、この競争は、北風と太陽の痛み分けとなるという物語である。

 

では、この「心理学版・北風と太陽と旅人」の物語は、我々に何を教えているのか。

「操作主義」の病

 それを教えている。

 「操作主義」とは、文字通り「相手を、自分の意のままに操りたい、動かしたい」という心理。その奥には、人間というものを、あたかも道具や機械のように見なす無意識が潜んでいる。

 そして、この「操作主義」は、いま、「現代の病」の如く世に広がっている。

 特に流行るのが「操作主義のマネジメント」。

「いかにして、部下のモチベーションを高めるか」

「いかにして、部下の心を掴むか」

「いかにして、部下を動かすか」

 こうしたテーマを語る本が、いま、書店に溢れている。

 一見、正統なマネジメント論に思えるが、実は、この言葉の奥に落とし穴がある。

 無意識に、部下との間に「距離」を作り、部下を「対象」としてみる目線。

 その目線の限界に気づいたとき、我々は、マネジメントにおける最も大切な原点を思い起こすのであろう。

部下への深い共感。

部下との邂逅への感謝。

 その原点を、思い起こすのであろう。

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 2007年 8月3日、PHP研究所より上梓した、

 『なぜ、我々はマネジメントの道を歩むのか』

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が、10月27日に、POD書籍として復刻されました。

永年のマネジメントの経験を踏まえ、

「部下や社員との出会いの意味」「部下や社員の成長を支えることの意味」などについて、

最も深いレベルで「マネジメントの思想」を語っています。

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