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乗り捨て可能なカーシェアリング「GIG」を試して考えたこと

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
路上駐車されているクルマをアプリで探して利用するカーシェアリング「Gig」

ASCII.jpの連載でご紹介した、新しいカーシェアリングサービス「GIG」。

米国のロードサービス会社AAA(トリプルエー)の社内ベンチャーとして2017年5月にスタートしたこのサービスは、アプリで車を予約して解錠し、車が利用できるサービスです。

バークレー市とオークランド市の路上駐車許可ステッカーが全車両に貼り付けてある
バークレー市とオークランド市の路上駐車許可ステッカーが全車両に貼り付けてある

日本でも米国でも、カーシェアリングサービスはたいてい、専用の駐車場のスポットに止まっている車を利用しますが、GIGのクルマがあるのは、公道。路上の駐車スポットに駐まっているため、自宅のすぐ近くにあれば、わざわざ専用の駐車場へ取りに行く必要がありません。

しかも、使い終わったら、最寄りの路上に停めればOK。カーシェアリングサービスを、より身近に利用する事ができる仕組みが登場しました。残念ながら、米国の免許証と米国のApp Storeアカウントがなければサービスが利用できないため、日本から旅行に来て試すことはできません。

もし米国のオークランドとバークレーにお住まいの場合は、クーポンコード「HEYGIG」で、85ドル分の利用ができるようになります。

GigのウェブサイトはこちらASCII.jp の記事はこちら

早速試してみた

まずはアプリからアカウント登録。クレジットカード番号と免許証を登録します。免許証はスマホのカメラで表・裏面をスキャンするだけ。また、その人本人かどうか確認するため、内側のカメラで自分お顔を撮影してアップロードし、画像認識で一致しているかどうかを確認します。

これで準備完了。8月末までのプロもコード「HEYGIG」を入力して85ドル分のクレジットをゲットできます。

アプリから、空いているGigのクルマの位置を確認できる。
アプリから、空いているGigのクルマの位置を確認できる。
予約すると、30分間は、他の利用者が予約できないよう、キープしておいてくれる。
予約すると、30分間は、他の利用者が予約できないよう、キープしておいてくれる。

バークレーの路上で、一度気にし始めると、しょっちゅう見かける黒いPrius C(日本ではアクア)。ルーフには青い自転車搭載用のレールが備え付けてあり、すぐにGigのクルマだと分かります。Gigのクルマを探すのはアプリ内から。

最寄りのクルマを見つけたら、そのクルマを「予約」します。30分以内は、他の人が予約したり使用したりできない状態でキープしてくれます。

そのクルマまで行くと、位置情報を認識して、クルマのドアロックをアプリから解除できるようになります。ロックを解除した時点から、クルマのレンタルがスタートします。あとは、ボタン式のエンジンスタートを行って、運転するだけ。

クルマは、バークレーとオークランドの市内であれば、すでに駐車許可が取られているため、2時間以上駐車可能な場所どこでも、駐車チケットやコインを入れなくても駐車可能です。

途中で降りるとき、レンタル状態を続けておくこともできますが、そのままレンタルを終了させることもできます。もし5分以上停めておくなら、一度車をリリースして、再度使うときに予約すればお得です。

カーシェアリングなのに、所定の場所にクルマを戻さなくてもいい点、路上であれば駐車料金がかからない点、使わない時間が長いときには、リリースして料金の発生を抑えられる点で、今までのカーシェアリングよりも利便性は高いと思いました。

利用風景のビデオはこちら。

利用していて、いくつかの疑問

便利な新しいカーシェアリングサービスGigですが、使っていていくつかの疑問点も上がりました。

まず、クルマの偏りについて。

これはバイクのシェアリングサービスにも共通していますが、街の中では、利用者の移動に偏りがあるため、特定の地域に集まってきてしまうという事象が起きうることです。

サービスが始まって2週間ほどですが、ドロップ可能なエリアの減りに当たる我が家の周辺には、たくさんのクルマが集まっており、個人的には非常に便利なのですが、この傾向が続くと、なんらかの形で是正措置が必要となります。

街の動きに応じた傾向も、出てくるのではないでしょうか。

例えばバークレー市内で言えば、ダウンタウン周辺はもちろんですが、クラフトビールのブリュワリーが集まるギルマン・ストリートは、Gigが集まりやすいエリアになりそうです。

ブリュワリーにGigに乗って出かけてドロップし、ビールを楽しんで、帰りはUberで変えると、往復をUberで移動するよりも大幅に交通費を節約できるからです。ちなみに、今のところ、ギルマン・ストリートはGigのドロップエリアから除外されています。

今のところ、偏りが見られるのは、

  • バークレーのライブ・オーク・パークの周辺
  • バークレーのUCバークレー周辺
  • オークランドのテメスカル地域
  • オークランドのBARTのレイクメリット駅周辺
  • オークランドのジャック・ロンドン駅周辺

というエリア。1つ目のエリアに私は住んでいて、おそらくGigでドロップ可能なエリアギリギリまで走ってきて、そこから歩いて帰宅する、というパターンで使われていることが想像できます。

この偏りの傾向が、1ヶ月後にどうなっているのか、もう少し見ていきたいところです。

地域住民との問題

住宅地にクルマが偏ってくると、別の問題が起きます。

バークレーでは、一般の住人も、住んでいる地域の駐車許可証を取って、路上にクルマを停めておきます。普段は住んでいる人のクルマの駐車でちょうど良かったスペースも、Gigのようなクルマが集まってきてしまうと、住んでいる人が自分の家の前、あるいはその周辺に駐車できなくなってしまうと言う問題が発生します。

私の自宅の周辺ではすでにGigのクルマが路上駐車のスペースを占有しつつあり、そうした問題が今後、顕在化してしまうのではないか、と思います。

自転車の場合、トラックに自転車を積み込んで、数が減っているステーションに運ぶことはできますが、クルマの場合、誰かが運転して空いているエリアに移動させなければならず、これは車のメンテナンス以上に人件費がかかりそうです。

こうした偏りの是正するような行動を取る利用者に対して、ポイントが貯まるなどのなんらかのインセンティブを与えるアイディアも、導入されるかもしれません。偏りのある地域から偏りの薄い地域にドライブしたら、ポイントが貯まるなんて、良いアイディアだと思います。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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米国カリフォルニア州バークレー在住の松村太郎が、東京・米国西海岸の2つの視点から、テクノロジーやカルチャーの今とこれからを分かりやすく読み解きます。毎回のテーマは、モバイル、ソーシャルなどのテクノロジービジネス、日本と米国西海岸が関係するカルチャー、これらが多面的に関連するライフスタイルなど、双方の生活者の視点でご紹介します。テーマのリクエストも受け付けています。

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