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Evernoteへの5つの提案 - ライブに強いノートアプリに成長して欲しい

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
無料ユーザーへの機能制限と、有料会員の値上げに踏み切ったEvernote

Evernoteは、「すべてを記憶する」がコンセプトのデスクトップとモバイル向けクラウドノートアプリです。私が使い始めたのは2008年の夏ごろでしたが、その後、有料プランにも契約し、現在もプレミアムプランを使っています。今後も、プレミアムプランを使い続けることになると思います。

無料ユーザーは「負担」という意思表示をした価格改定

さて、2016年6月29日に、Evernoteは価格改定に踏み切る発表をしました。

Evernote: Evernote の価格プランの改定について

無料ユーザー「Evernoteベーシック」に対しては、有料プラン向けの機能だったノートのロック機能を解放する一方で、2つのデバイスしか同期できないという制限を設けました。PCとスマホで同期したら、タブレットには自分のノートが落ちてこない、という仕掛けです。

また有料プランの「Evernoteプラス」は月間1GBのアップロード容量で月額360円または年額3,100円(旧価格は年額2,000円)に、「Evernoteプレミアム」は月間10GBのアップロード容量で月額600円または年額5,200円(旧価格は年額4,000円)に変更となりました。

有料プランの年間1,000円程度の値上げ、無料ユーザーの機能縮小が、今回の価格改定になります。無料ユーザーの同期デバイス数の制限は、サーバや帯域の負担を大幅に減らすことができる施策になりそうです。

ユーザーとしては、じゃあ有料プランに変えよう、と考える人は少ないかも知れません。無料のまま使い続ける工夫をするか、Microsoft OneNoteやAppleの標準アプリ・メモへの移行をする人もいるでしょう。いずれのアプリにも、Evernoteからの移行機能が備わっているためです。

病んだユニコーンの集中治療となるか?

同社は2012年に、「ユニコーン企業」の第一群となりました。つまり、非上場で評価額が10億ドルを超える企業になった、ということです。2014年に1億ユーザーを突破し、2015年には1億5000万ユーザーに達しているとみられています。しかし、他のユニコーン企業と同様、Evernoteも成長のジレンマに苦しんでいました。

フリーミアムモデルを採用し、無料で使い始めることができますが、長期的に利用する人ほど、自然に有料ユーザーに転換していくであろうツールに育てていく戦略でした。実際、筆者もそうですが、日々の仕事に取り込むことができた人は、すべての機能が利用できるプレミアムプランを契約して快適に過ごしていくことになるはずです。

ところが、その思惑は外れ、前述のように、無料ユーザーを抱える負担を軽減する施策を採っていくことを選択しました。Evernoteも営利企業ですから、ビジネス的に見れば至極真っ当な、正しい判断だと評価することができます。

若干遅い方針転換だったかも知れませんが、有料会員をより手厚く保護することのほうが、ユーザーの新規獲得に力を入れるよりも、収益が上がりやすいかもしれません。

現在、スマホの世界販売台数は踊り場。しかも今後の新規ユーザーには大量の途上国ユーザーが含まれ、Evernoteが掲げる「スマートな生産性向上」の文脈が受け入れられないでしょう。もちろんそれでも、有料会員になってくれる人をピックアップしていく必要がありますが、効率で考えたら、既存のユーザーの有料会員化、そして上級会員化を目指す方が良いでしょう。

既存の会員の満足度を高め、プレミアム会員を増やしていくならば、Evernote自体の機能性を高めていく施策を取り入れていく必要があります。

そのための5つの提案をしたいと思います。なんとなく、どの提案にも「Live」というコンセプトが共通していて、私はEvernoteが、もっとLiveに強くなって欲しい、と願っているのだ、と分かりました。

1. Live Link:ディープリンクとエンベッド機能の強化

Evernoteは、シンプルかつ十分なリッチテキスト編集機能が搭載されている点が魅力的です。どちらかというと、ハイパーテキスト(ウェブページ)よりも、ワードプロセッサ(Word)のドキュメント編集をシンプルにしたような構成に近い印象です。

PDFやオフィス文書をノートに貼り付けると、ページを展開してくれる機能は便利です。メモと書類を1つにまとめる際、ファイルを開かなくても中身が見られるからです。

しかし、それ故に、リンクが貼り付けられている際に、URL文字列しか表示されていないのが不便で仕方ありません。確かにウェブクリッパーを使ってウェブサイト上の内容をノートにすることができるのですが、メモの中でいくつもURLが出てくる際、いちいちウェブページやビデオを開いて確認するのは不便なのです。

このあたりを、もうちょっとHTMLっぽく処理しても良いのではないか、と思いました。URLを貼り付けた際、ページのサムネイルくらいはリンクに表示されて欲しいですし、リンク先が写真やビデオであれば、ノート内から直接サーバへ読み込んで再生できるとよいのですが。

あとは地図ですね。GoogleマップでもAppleマップでも良いので、位置情報や地点情報、地図へのリンクを貼り付けたら、ノート内に地図を表示して欲しいところです。いちいちスクリーンキャプチャを撮って画像として貼り付けてるのは面倒なので。

2. Live Doc:見栄えの良い文書もしくはスライドを生成する機能

1つ目で長くなりすぎたので、もう少し手短に。

2つ目はEvernoteでまとめた情報を、どのように活用するか、という方法を増やして欲しい、というニーズです。

筆者は、企画書や打ち合わせのノートといった、共有目的の文書の大部分をEvernoteにまとめています。基本的には、公開の共有リンクを発行して、そのURLをメールやメッセンジャーに流す、という形で他の人に送ってしまいます。

しかし、共有リンクの形でブラウザで開いた文書がそのまま相手の企業内で流通していくとは考えにくいため、Evernoteでまとめたノートを全文コピーして、PagesやWordに貼り付け、体裁を整えてファイル化する、という作業を挟む必要があります。

これをやめたい。なぜ、.docx形式でノートを出力できないのだろう。なんで誰も文句を言わないんだろう。

例えば、すべての原稿執筆に使っているiPad用エディタアプリ「Ulysses」は、Markdwonで書いた原稿(シートという単位)を、直接.docx形式で出力して、メール添付やクラウドストレージへのアップロードを行うことができます。しかもていねいに、テンプレートまで選べます。

また、(これは高級アプリだけど)Mac向けOmniOutlinerは、アウトラインをKeynote形式で出力することができます。タイトルと箇条書きでストーリーをさっと作ってKeynote形式で出力し、できたファイルをKeynoteで装飾する、という快速スライド作成ワークフロー、是非試してみて下さい。

Evernoteプレミアムにも、せめて.docx出力を、できればPowerPointやKeynote形式での出力を搭載してくれると、Evernoteでまとめて、Word文書で共有、という実用的なフローを組むことができるようになるのではないか、と思いました。

3. Live Bullet:強力なアウトライン機能を搭載し、構造化したタスクや情報作りをサポートする

もう、短くするのを諦めつつあります。

3つ目は、Evernoteの箇条書き機能の強化です。情報をまとめる生産性を高める方法は人それぞれですが、個人的には箇条書きを自在に操ることだと思っています。

Evernoteには標準的な箇条書き機能が備わっていますが、この編集機能を強化して、箇条書きの内容をマウスやタッチで自在にアレンジできる仕組みを備えてはどうでしょうか。チェックボックス付き箇条書きは、タスク管理にもってこいですし、箇条書きを作ってから文章を展開する、という編集方法は、ノートそのものを効率的にまとめる仕掛けになるはずです。

一応、CloudOutlinerの買収すれば良いんじゃないか、というつぶやきを加えておきますが、別アプリとしてではなく、Evernoteの箇条書き機能を強化する目的にして欲しいと思います。

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4. Live Intelligent:コンテキスト機能を強化し、インテリジェント性を高める

コンテキスト機能は、自分が書いているノートやクリップしたウェブページに関連するニュースを、ニュースサイトからピックアップしてくれる機能です。

少しノートを書き始めると、下に関連リンクが出てくる仕組み。これは未来があるなあ、と思いつつ、一度もそのリンクをクリックしたことがないほどに、見たことがある情報ばかりです。僕がニュース読みすぎなだけですが。

ニュース記事にも含まれるものがもちろんありますが、もう少し統計データのようなものが出てきたり、そのノートにまつわる話題や、ノート中のキーワードに絞って参考資料リストをいくつも挿入する、みたいな機能が出てきてくれるとうれしいです。会議の議事録や情報共有系のノートに活力を与えられるのではないか、と思います。

ちなみに、私はインタビューの時でも会議の時でも、話しながら、話を聞きながら、ライブでEvernoteにノートを取っていきます。録音しておいて聞き直しながら文字起こし、なんて面倒くさいので。時々会議の時、議事録のEvernote画面をプロジェクタで映しながら進行することすら有ります。そのときに、関連情報がぼこぼこ表示されていったら、と思うと白熱しますね。

もう、「コンテクスト機能」なんてやめて、「ライブ・インテリジェント」あたりに名前を変えて、プレミアムユーザー向けの機能にしたら、結構欲しい人もいるんじゃないか、と思うのですが。

5. Live Edit:チャットなんていらないから、ノートの同時共同編集機能を

ワークチャット、結局我々の回りでは、すんなりとノートブック共有ができなくなった、と受け取る人も少なくなく、混乱を招いているだけに思えております。確かに、ノートにまつわる議論をEvernoteから離れずに行えるようになる機能は重要です。

しかしEvernoteはノートアプリなので、それもノート上で解決した方がスマートだったはずです。

つまり、ワークチャットを廃止して、ノートの同時共同編集機能を入れて欲しいと思うのです。その機能がないために、わざわざGoogleドキュメントを使ったりするのはいやですし、もたもたしているうちに、macOS Sierraで、Appleの標準ノートアプリ「メモ」にも、コラボ機能がついてしまうじゃないですか。

たとえば、ライブエディットみたいな機能名にして、同時共同編集機能を盛り込んで、これをホストできるのはプレミアムユーザーだけ、という制限のかけ方でも良いのではないか、と思います。

どれだけ早く、問題を解決できるか?

ちょっと長くなりすぎましたが、まだ他にも、iPadやiPhoneでのノートへの直接手描き&テキストとの混在機能や、特定の目的のノートを手軽に作れるテンプレート機能、先ほどはいらないといったワークチャットのFacebookメッセンジャーやTwitter DMへの置き換えなど、やって欲しいことはたくさん有ります。

もちろん私の提案がすべての人に当てはまるとは思っていませんし、他の方の#Evernoteへの5つの提案も見てみたいと思います。こうした意見を取捨選択して、ぜひライブなEvernoteになってほしいと願っています。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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米国カリフォルニア州バークレー在住の松村太郎が、東京・米国西海岸の2つの視点から、テクノロジーやカルチャーの今とこれからを分かりやすく読み解きます。毎回のテーマは、モバイル、ソーシャルなどのテクノロジービジネス、日本と米国西海岸が関係するカルチャー、これらが多面的に関連するライフスタイルなど、双方の生活者の視点でご紹介します。テーマのリクエストも受け付けています。

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