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ストリーミングが54%の成長、ダウンロードは12%の減少 - ハイレゾと、アナログと、音楽体験と

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
モバイル化によって、音楽は所有せず楽しむスタイルへと移行中。

音楽市場について、CDが未だにセールスの中心となっている日本市場は例外的であることがより浮き彫りになりました。既に個別の曲やアルバムの購入は落ち込み、ストリーミング中心へのトレンドが強まっています。

Nielsen SoundScanという調査によると、音楽産業は、オンデマンドストリーミングサービス(音声・映像含む)が54%の伸びを見せた一方、デジタルダウンロード販売は落ち込み、アルバムセールスで9%、曲単位では12%の低下となりました。CDも含んだアルバムのセールスでも11%の低下となっています。

トレンドとして、「音楽を所有する」というスタイルから、オンデマンドでその都度インターネットからストリーミングするスタイルへと変化し、場合によってはそのストリーミングの権利に対してお金を払う、という考え方へと移っていることが分かります。

スマホ化と対応を急ぐサービスたち

こうした流れは、音楽がスマートフォンでの楽しみ方へと移行したことが大きいでしょう。CDからデジタルミュージックプレイヤーへ、という移行はAppleがiPodとiTunesを活用して達成し、iPodから派生したiPhoneもデジタルミュージックプレイヤーとしての機能は押さえています。

ところが、AppleはiTunes Storeにこだわったことから、音楽を購入するというスタイルからの脱却までは演出することができず、PandraやSpotify、Beats Musicといったサービスがその役割を担うようになりました。もちろんiTunesもiTunes Radioを投入してストリーミングサービスに参入していますが、これといって話題になっていません。

そこで、かなりイケてるストリーミングサービスであるBeats Musicを有するヘッドフォンメーカーごと、Appleは2014年に買収しています。Apple Storeで、Appleブランド以外のApple製品が並ぶという、あまり予想していなかった風景が見られるようになりました。

また日本でも、スマートフォンからYouTubeのミュージックビデオで音楽を楽しむ若い年齢層の人たちが増えており、YouTubeも音楽に力を入れてきました。確かにストリーミングですが、映像付きで楽しむというスタイルは、音楽という表現の幅を拡げているように思います。

一方、ストリーミングはモバイルデータを大量に使います。そのため、外出先では少し控えめに活用するようになり、一度ダウンロード購入は、データ通信不用で音楽が楽しめるため、完全に死にはしないでしょう。

ただ、携帯電話会社も、音楽をモバイルで楽しむライフスタイルをサポートし始めました。筆者も乗り換えたT-Mobile USAは、主要な音楽ストリーミングのサービスを使用する際、データ通信分をカウントしないというサービスを開始しています。

そのため、外出先でも音楽ストリーミングが聴き放題になり、非常に自由に音楽が楽しめます。個人的に、iTunes Radioの「Classical Chill」というステーションがお気に入りで、四六時中BGMとして流せるようになりました。

例えば出先のカフェでこのステーションを聴きながら、iPhoneのKindleアプリで読書という体験は格別です。

ハイレゾと、アナログと、音楽体験と

日本のオーディオのトレンドは「ハイレゾ」です。ハイレゾとはハイレゾリューションの略で、アナログである音をデジタル化する際のサンプリングレートと量子化ビット数がCD以上であるという一応の定義がなされています。

CDが44.1kHz/16bitでああるのに対し、ハイレゾ音源は例えば96kHz/24bitというスペックで記録されたファイルになります。もちろん、1曲あたりのデータ量も大きくなり、例えば今までMP3で聞いていた音楽が5MB程度だったとすると、ハイレゾ音源だと200MB以上になることもあります。

しかしスマートフォンやタブレットの保存容量は、40倍に拡大しているかと言われると、そんな事はありません。コンピュータも同様です。そもそも、アプリやゲームなどでも容量を使うため、音楽だけに大きくスペースを割くわけにもいきません。

ハイレゾになればなるほど、ストリーミングの方が手元のデバイスの保存容量の問題から現実的ですが、こんどはWi-Fiも含む通信速度や、ケータイのデータ料金がネックになって、自由に楽しめる環境からはほど遠いのが現状です。

そのため、現段階では、音楽のストリーミング化と、ハイレゾ化のトレンドは相反する二極化、と見て良いのではないかと考えられます。

前述のNielsenの調査では、CDは落ち込んでいる一方で、アナログレコードは9%増加したそうです。1991年以来の増加だったそうです。コレクションやより豊かな音を楽しみたいというニーズをアナログレコードがかなえ、より手軽に音楽を楽しみたいというニーズをストリーミングが担う、そんな差異があるのです。

さて、音楽体験については、やはり僕はライブを見に行くのが頂点だという考えの持ち主です。米国に住んでいるので、日本の好きなアーティストのライブに行くチャンスは限られますが、インタラクションの中で音楽を楽しむ経験は代えがたいものがあります。

米国でも、人気アーティストがレコード出版系の会社ではなく、ライブ興業の会社に所属するなど、CDセールスから「ライブ」を頂点とする体験作りへと移っています。時々、バークレーにも有名なアーティストがやってきますが、UCバークレーのスタジアムを使ってのライブイベント、チケットが高い割に取りにくいのです。

そういう意味では、CDにライブの先行予約チケットや握手券を封入するという考え方は、音楽そのものの購買ではないという批判もありますが、「音楽」という体験作りの形として、評価すべきかもしれません。また、海外からもCDのセールスが落ちないビジネスモデルのつくりかたとして、興味を引いている部分でもあります。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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米国カリフォルニア州バークレー在住の松村太郎が、東京・米国西海岸の2つの視点から、テクノロジーやカルチャーの今とこれからを分かりやすく読み解きます。毎回のテーマは、モバイル、ソーシャルなどのテクノロジービジネス、日本と米国西海岸が関係するカルチャー、これらが多面的に関連するライフスタイルなど、双方の生活者の視点でご紹介します。テーマのリクエストも受け付けています。

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