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Google Readerが7月1日に終了 - ニュースをどのように得るかを考える

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
2013年7月1日に終了を発表したGoogleリーダー。その後の情報取得は?

昨日から、意外なほどに大騒ぎになっているGoogle Reader終了の発表。既存あるいは新規のサービスがこれらを巨大なRSSプラットホームが開いた穴をいかに埋めるのかという競争が始まっています。新しいサービスにも期待したいですが、今一度、我々がどのようにして情報を取得するか、考え直すきっかけを与えてくれています。

昨日までの発表では、iPhone・iPad・Mac向けの優れたUIを誇るアプリReederが「Google Readerと討ち死にはしない」と発表していますし、Flipboardは「Google Readerと連携することで、今まで購読していたフィードを引き続き利用できる」といいます

またFeedlyはさらに踏み込んで、Google ReaderのクローンAPIを準備しており、既存のアプリもFeedly上で同じように利用できるようにする「ノルマンディ作戦」を公表し、Google Readerの役割とユーザーをそのまま引き継いでしまおうという上陸作戦を展開しようとしています。

RSSは血液だ!から10年

2003年頃、ちょうどブログが日本でも立ち上がった頃、「RSSフィードは血液だ!」みたいなカッコイイ台詞を聞いたこともあって、僕自身もRSSでニュースを読んできました。それ以前は、ニュースサイトを一度ブラウザで全部開いて、新しいニュースはないか探していました。非力なマシンには辛い巡回作業…。これが、新着記事リストだけで読めるようになったわけです。

Google Readerはフィードを一度Googleのサーバに集め、購読しているユーザーに示し、スターやシェアといった機能でユーザー同士のコンテクストを増やす環境を作ってきました。ある意味で、マシン用のデータであるRSSに、Googleが人間用のインターフェイスを付けていた、という感覚であり、他の原始的なRSSリーダーアプリをウェブで実現していたのがGoogle Readerだったわけです。

Google ReaderはAPIを公開していたので、対応のアプリやウェブサービスは、RSSのクロールをGoogleに任せて、これをいかに快適に読めるようにするかを追究してきたのが、Google Reader対応アプリだったわけです。

Google Readerの終了は、こうしたGoogleへの「ニュース取得の依存関係」の終了であると同時に、では我々はどのようにして、今後ニュースや更新されたウェブの情報を察知し読むかを考え直すきっかけになっていると考えています。

ソーシャルによる情報取得はGoogle Readerの穴を埋められるか?

Google Reader終了の理由はユーザーの減少であり、その主な理由として考えられるのはソーシャルメディア、SNSを経由したニュース取得です。米国のデータですが、2012年の段階で、FacebookやTwitterといったソーシャルメディアは新聞に並ぶ大きなニュースソースになっていました(インフォグラフィック)。

では、既存のSNSとニュース体験について、少し考察しつつ、Google Readerを誰が埋めるのか、あるいはニュース体験がどのように変化していくのか、考えてみましょう。

Facebook:

Likeボタンが埋め込まれることで、非常に手軽にオンラインニュースの記事がSNS上に流れてくるようになっており、Newsfeedがニュース流通の1つのチャネルになってきている。

またEdge RankというアルゴリズムでNewsfeedに表示する情報をユーザーごとに可変させ、友だちの間で盛り上がってる情報を見逃さないというツールとしても機能してきた。

ところが、2013年3月7日の発表でFacebookはNewsfeedを「パーソナルマガジン」のコンセプトで再構成。この「友だちの間で」という前提をどのように展開できるか。Facebookの場合、しなくてもいいと思うけど。

Twitter:

秒速の情報が流れてくる場。先日Twitter HQに取材に行ったときに、情報の流通経路としてTwitterを「Early Warning」という言葉で表現していたのが印象的。

例えばテレビのニュースでは家の裏でサイレンが鳴ってからニュースになるまでは、ヘリか取材車の到着を待って、それが編集されてという数時間がかかるが、Twitterの場合、位置情報検索をすると周囲の人も異変を感じているのか、その場にいた人がどんな情報や写真を持っているのか、等が分かる。

Early Warningは、は日本の緊急地震速報(Earthquake Early Warning)のイメージにも近いと言っていた。つまり、情報ソースは人だけでなく、何らかのシステムの可能性もあり、RSSの情報の書き手に人が加わった感覚。加えて、自他作成済みのリストごとフォローすることで、フィルタリングが可能に。

リストをもっと上手く活用できるようなアプリやツールがあるといいのかもしれないけど、それってGoogle+のサークル?

LinkedIn + Pulse:

プロフィールがものをいうプロフェッショナルネットワークにアドオンされた情報流通。例えばLinkedIn Todayは、プロフェッショナルのバックグラウンドを持つ人がどんなニュースに反応しているのかが分かり、人や企業やその分野のトレンドを反映し始めている。その分野やコンテクストに対して精度の高い情報のピックアップが可能になる。

同時に、Pulseを買収しており、こうしたLinkedIn上でのニュース流通やキュレーション、パーソナルパブリッシングといった分野に対してとても可能性を感じる。

割とリアルにキャリアにびりびり影響がありそうな情報を見逃さない「ソナー」みたいな役割になってくるかも知れないな、とイメージ。

Google+ + Google Search:

意外と僕は「Knowledge Graph」という言葉に可能性を感じていて、今は検索画面にその情報の著者情報やアイコンがGoogle+のプロフィールから流れてきたり、検索画面の右側に検索結果とは別の情報が表示されたりしているけれど、音声や対話型で扱う場合にこうした下地は上手く働きそう。

前述の通りサークルはTwitterのリストのような役割をするし、Google+のコメントやシェアのリアルタイム感、反応の良さはどこか突き抜けてる感覚がある。

Tumblr:

これも好きなサービス。情報を集合体(ブログ)としても、個別(ポスト)にも成立させているところがユニーク。どちらかというと、Google Readerの機能をTumblrがになってくれたら、と願ってやまないのですが。

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まだまだ他にアプリやプラットホームもあるかと思いますが、大きめなプレイヤーの違いと、感じている魅力はこんなところです。おそらくもう1週間から1ヶ月くらいは動きが大きな分野になると思いますので、引き続き、動向を見守りたいと思います。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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米国カリフォルニア州バークレー在住の松村太郎が、東京・米国西海岸の2つの視点から、テクノロジーやカルチャーの今とこれからを分かりやすく読み解きます。毎回のテーマは、モバイル、ソーシャルなどのテクノロジービジネス、日本と米国西海岸が関係するカルチャー、これらが多面的に関連するライフスタイルなど、双方の生活者の視点でご紹介します。テーマのリクエストも受け付けています。

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