秋篠宮家の長女・眞子さまと小室圭氏が10月26日に結婚する(=婚姻届を提出)と宮内庁が正式に発表しました。

 独身の男女の結婚で法的に何の問題もありません。小室氏の母親の金銭トラブルが騒がれましたが、いうまでもなく親子といえども別人格。小室氏のさまざまな振る舞いも批判されるも、眞子さまが好きならばそれでいいはず。今回の場合、眞子さまが皇籍離脱して一般人となるため「圭殿下」が皇室に入ってくるわけでもないのです。

 にもかかわらずさまざまに非難されてきての結末。多くの識者が諸分野より解説しているなか本稿では「現憲法下で家父長制と身分制を唯一残している皇室」という観点から探っていきます。

女性皇族のみ結婚したら一般人となるルール

 憲法で定めがあるのは「天皇」お1人のみ。他の皇族と国民を区別する定めはほとんどありません。とはいえ天皇陛下が皇室という家族から皇室典範(法律)の規定で世襲で決まる以上、おのずから違いは出てきます。ここでは典範や皇室経済法などに依って、その姿を明らかにしてみます。

 典範は天皇位を皇室に属する男系の男子のみで世襲すると定め、継承順位まで明記。この時点で女性皇族が皇位に就く可能性はありません。女性皇族は男性皇族の配偶者と、両者から生まれた女子に大別されます。後者は天皇および皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れます。眞子さまのケースです。

 男系男子のみの皇位継承順位は平成の天皇を基点にすると今上天皇の次が秋篠宮さまで悠仁さまが続きます。ただ歴史上は男系女子の天皇が8人即位しています。これを現代に当てはめると愛子さまが継承順1位となるのです。

愛子さまに「敬宮」の称号があって眞子さまにない訳

 皇族のうち「天皇ご一家」を別格と扱うのが皇室経済法。「ご一家」とは現在だと上皇・上皇后・今上天皇・雅子皇后・愛子さまで、皇室費のうち「内廷費」が充てられます。秋篠宮家や他の皇族は「皇族費」と分けられているのです。

 法律に基づかない制度を加えると天皇とその直系卑属がいかに他の皇族より格上か分かります。文仁親王の宮号「秋篠宮」は独立して一家をなす男性皇族に天皇が思し召されて賜ったもの。同じ「宮」がつくも異なるのが称号で天皇または皇太子の子のみ天皇から与えられます。ゆえに愛子さまは「敬宮」という称号をお持ちなのに対して眞子さまにはありません。

一家の長たる天皇が皇族の結婚を裁可

 このように皇族は天皇を筆頭とする家父長制の色彩が濃い伝統を守っています。一家の長たる天皇または宮家の地位や祭祀が原則として長男のみに継がれる「長子相続」や、それにともなう男女の不平等、同じ親でも直系重視、同一地での居住(赤坂御用地など)といったあたりです。「天皇皇后両陛下」と呼ぶも憲法に規定された国事行為を行うのは天皇のみ。相当な理由と所定の手続きを取れば執り行える「摂政」に就けるのも男性皇族が皇后に原則として優先します。

 家父長制においては家族の婚姻への同意権も一家の長が持っていました。今の皇室にも明文化されてはいませんが実質的に残っているのです。2017年9月3日、秋篠宮ご夫妻が「本日、天皇陛下のご裁可をいただき、私たちの長女、秋篠宮眞子と小室圭さんとの婚約が内定いたしました」との「御感想」を述べられているのでも明らか。

 戦後の民法改正でこうしたくびきから国民は解放され、生まれ順や男女の別なく同親等は等しい相続権を得ました。両性の合意のみで結婚もできます。しかし皇室は異なるのです。息苦しさを感じるという皇族の声はこれまでも記録されてきました。

生まれながらの皇族は自分で税金生活を選択していない

 他方で皇族は一般国民より身分が上です。戸籍の代わりに皇統譜に記され、「陛下」「殿下」の敬称と敬語で紹介されますから。その地位は妃を除いて生まれながらに保障され、全額税負担の皇室費から衣食住すべてがまかなわれるのです。

 眞子さまは都心一等地の広大な宮邸に住み、未成年時は毎年305万円、成人後は915万円の皇族費が支払われます。法はこれを「皇族としての品位保持」のお金としていますが一般人には何のことやら。おそらく「皇族という仕事に対する給料」といったところ。だとしても相当な大金です。「辞退する」という一時金約1億4000万円も同じ「品位保持」を理由とします。

 天皇の「公務」のうち国事行為以外の公的行事は天皇以外の皇族が担当する場合があります。私的な行事も同様。そうした場で働いた対価といえましょう。

 眞子さまの結婚に反対する声のうち公金で生活しているのだから国民が納得しない行為は許されないというものがあります。しかし年間915万円は仕事の対価。金額も法にのっとって受け取るのだから批判するならば立法府が対象のはずです。一時金の辞退に至っては違法の可能性すら出てきます。

 眞子さまのような生まれながらの皇族は普通の公務員と異なって自ら選択していません。物心ついた時から宿命づけられ、抑制的に与えられた仕事を務めてきたのです。選択の自由は限られてきました。その範囲内の1つが結婚相手であったのです。

天皇の地位は国民の総意に基く

 小室氏や姻族の言動から眞子さまにふさわしいかどうか議論する自体は国民の権利で、皇室のあるべき姿を考える良いきっかけになる可能性も。しかし過熱すると象徴天皇制そのものの是非という深刻なテーマへ上り詰めかねないのです。何しろ憲法は象徴の地位を「主権の存する日本国民の総意に基く」とするから。

 今回は天皇陛下ご自身への批判ではないにせよ家族の問題であるのも事実。下手すると左右のイデオロギーから挟撃される怖れすら内包しています。

 保守側の批判者は皇室が家父長的で国民より上の身分であるという点に異存はないがゆえに「お相手として小室氏はふさわしくない」「このような人物が皇室につながるのは許せない」といった反対論が出てきます。「皇室から出ていく話だからいいではないか」との擁護論も男子のみが結婚後も留まれる制度を是とするがゆえです。左派は「家父長制や身分制の例外を残した弊害だ」と叫びましょう。

眞子さま・秋篠宮さま・天皇陛下それぞれの思い

 「国民の総意」について天皇や皇族はどう考えてきたでしょうか。18年11月の記者会見で秋篠宮さまは「多くの人がそのことを納得し喜んでくれる状況」「にならなければ」「婚約に当たる納采の儀」は「できません」と発言。納采の儀は眞子さまの結婚で行われないと発表された儀式の1つでする・しないは秋篠宮さまが決められます。

 20年11月、眞子さまは手記を公表。「結婚に向けて」「家族とも相談をしながら進んでまいりたい」「文章を公表するに当たり、天皇皇后両陛下」に「ご報告を申し上げ」て「私の気持ちを尊重して静かにお見守りくださっている」と綴ったのです。

 ところが21年2月、誕生日の会見で天皇は「秋篠宮が言ったように、多くの人が納得し喜んでくれる状況になることを願っております」と眞子さまの「気持ちを尊重」とはかなり隔たった見解を披露されました。弟宮の発言をなぞった形とはいえ一家の長が「多くの人が納得し喜んでくれる状況」が条件で、現時点で満たしていない(=「願っております」)と示したのはきわめて重大でした。

 この「状況」こそ「国民の総意」と重なる表現です。結局、眞子さまは女性皇族の結婚の儀式を行いません。なかでも両陛下へあいさつする「朝見の儀」まで見送られたのが深刻。この儀式の有無は陛下の意思。儀式を行わないとは天皇や秋篠宮にとって祖父や父が意を砕いて形にしてきた「国民の総意」を失いかねない事態であるが、眞子さまの願いもかなえてやりたいという葛藤から出た妥協点かもしれません。

ぐんと上がりそうな女性皇族の結婚相手へのハードル

 眞子さまに小室氏を諦めるという選択はあり得なかったのでしょうか。ゲスの勘ぐりを承知で申せば、もしそうしたら眞子さまのお相手は二度と見つからないかもしれませんでした。

 小室氏と破談した後に新たな相手が見つかったとしたら、姻族も含めて少しの突っ込みどころもない凄い方でなければいけません。メディアは絶対にお相手を小室氏と比してあれこれ調べるはずです。そんな取材攻勢と怒濤の報道に耐えられる方などそうはいない。というか、それほどの人物ならば結婚相手など他にいくらでもいるでしょう。火中に栗を拾うでしょうか。

 小室氏について宮内庁が事前に十分「身体検査」しなかったのかという疑問もあるようです。でも本来、皇室を出ていく側の女性のお相手のハードルはさして高くないというのが常識でした。眞子さまご自身の決着はついたとしても今後、独身女性皇族の相手のハードルはぐんと上がりそうです。現在5人。なかでも「ご一家」の愛子さまと直宮家の佳子さまの時が思いやられます。

女性宮家が実現したら

 ここに「安定的な皇位継承の在り方を議論する政府の有識者会議」が示した方向性が複雑に絡んできそうです。いくら「男系男子の維持だ!」と叫んでも次世代に悠仁さましかいないという現実は変えられません。

 2案のうち「女性皇族が結婚後も皇室に残る」(女性宮家)が実現したら配偶者の男性も皇婿とか皇配といった皇族扱いになるでしょうから「どのような誰か」は小室氏と比較にならないほどの議論へ発展するのは必至。といって旧宮家の男系男子の皇籍復帰も今や普通の市民として暮らしている方が今回述べたような特殊な環境に応じてくれるかどうか。後の世に「眞子さまの判断は今思えば正しかった」と見直されるかも。もっともその前提は皇室の混乱ですから歓迎できませんが。