しょせん自民党トップを決める内輪の争いで有権者の99%は関係なし。とはいえ面白いのも事実です。しかも今回は本命不在の「フルスペック」型で直後に本当の主権者による審判=総選挙が絶対に行われるから「誰がなるのか」が否応なく注目されます。自民党総裁選とは何で、どこを眺めていると傍観者でも楽しめるのか。ポイントを探ってみました。

【ポイント1】事実上「首相」を決める

 自民党は現在、衆議院で過半数を大きく上回る議席を持っています。衆参両院で行われる内閣総理大臣(首相)指名選挙の最終結果は衆議院の議決なので、総裁(トップ)はほぼ自動的に首相に選出されます。ゆえに事実上首相を選んでいるのと同じです。

 9月29日の投開票後、菅義偉内閣が臨時国会を召集し(しなかったりして!)そこで首相指名選挙が行われるとみられます。

【ポイント2】史上最短の「第1次内閣」となるかも

 誰が勝っても衆議院議員の任期は10月21日に満了します。総選挙の日程は公職選挙法の規定などによると①内閣が閣議決定して満了日まで(今回だとラストの候補は17日)に投票日を設定する。17日ならば公示日(選挙戦スタート)は5日。②内閣が21日までに解散する。投開票日は最も遅くて11月28日、のどちらかと予想されます。

 9月29日の新総裁選出後、臨時国会召集→首相指名選挙→組閣までを10月5日までに終えるのはほぼ不可能なので①は菅現内閣が踏み込まない限り(踏み込んだりして!)なさそう。11月28日まで引き延ばしたとしても憲法および国会法の規定で速やかに特別国会が開かれ、ここで選挙の帰趨がどうであれ内閣はいったん総辞職します。つまり10月上旬発足の新内閣は長くても12月上中旬には総辞職するのです。つまり約60日。史上最短の東久邇宮稔彦王内閣の54日を下回るかもしれません。

 もちろん選挙の結果、与党が過半数を制し、割ったとしても野党の票いかんでは特別国会の首相指名選挙で新総裁=新首相が勝って続投(第2次内閣)すれば「史上最短」は形式的。それでも新内閣は「第1次内閣」と呼ばれ、それが最短になるかも。逆に総選挙で与党が大敗すれば総選挙の日程いかんで本物の史上最短を記録します。

【ポイント3】国会議員と同数票を持つ「党員・党友」とは

 菅内閣は安倍晋三首相が務めるはずだった総裁任期3年の残余期間を埋めました。したがって今回の総裁選は「正式」スタイル。自民党所属国会議員383人と同数の自民党員・党友票の合計766票で争われるのです。フルスペックとも。

 党員とは満18歳以上で日本国籍を有する者が対象で既存党員の紹介を受けて党費(ポピュラーな一般党員が年4000円)を1年以上納めている方々。党友とは自民党を支援する政治団体「自由国民会議」などの会員です。芸能人や研究者、文化人といった立ち位置にいる者のなかには党派色が出ると仕事に支障を来す場合があります。そこで党籍を持たないまま会費を支払って実質的に自民を応援するわけです。合わせて約110万人超

 「党員・党友」は告示日(正式スタート)の9月17日から投開票日(29日)前日までに投票します。郵送または党が設置した投票所に行くかのどちらかで都道府県で異なるのです。

 開票は地方組織である都道府県支部連合会(都道府県連)が29日午前中に行い、党本部(東京都千代田区)がすべての結果を集計して得票数に応じ各々の候補者へ衆参選挙の比例区で採用されているドント式を用いて383票に比例配分します。

 国会議員383人は29日午後、党本部で直接投票します。この時点で「党員・党友票」の結果は公表されていません。議員投票が終わるとただちに開票して「党員・党友票」と同時に結果が発表されます。合わせて766票の過半数(国会議員すべてが投票し、かつ皆が有効であるとする)を得た候補者が当選です。

【ポイント4】決選投票は3位以下の支持者次第

 過半数獲得者がいなかった場合に実施される上位2者による投票。国会議員票は変わらず383。「党員・党友票」は今度は都道府県各1票の47に再集計されてドント式でなく得票の多い者が1票を得ます。計430票で争って多い方が当選。1回目より国会議員票が大きな割合を占めるのが特長です。

 今回のように3人以上の比較的有力な候補……というか大本命なき総裁選の場合、それなりの票を3位以下も集めます。彼彼女に投じた議員は1回目と異なる選択を余儀なくされるわけです。

 1回目と決選で結果が異なったケースは過去2回。1956年で1回目トップだった岸信介候補が2位の石橋湛山候補に敗れました。3位候補との「2・3位連合」が約束されていたとみられます。

 2012年は1回目の「党員・党友票」で圧倒してトップに立った石破茂候補を2位の安倍晋三候補が逆転して勝利しました。

【ポイント5】総選挙により敏感な「地方票」の行方

 過去には「党員・党友票」が先に発表され、2位以下が辞退したケースもありましたが、同時発表の現制度では起きません。しかし決選は別です。1回目で一方が圧倒していたら、そちらに3位以下へ投じた議員票が雪崩を打つ可能性が大です。なぜならば直後に総選挙が迫っているから。

 「党員・党友票」の大半を占める「党員」は地方自治体の議員(都道府県・市区町村。「区」は東京23区)や後援会といった党の最前線で支持をまとめている人々が多く含まれます。また自民党の金城湯池は大都市圏というより、いわゆる「田舎」です。「党員・党友票」をしばしば「地方票」という別称で呼ぶのは「地方自治体」「田舎」という意味合いがにじんでいます。党員の多くは地域に密着して党支持者、無党派層、さらに野党支持者まで視野に入れてシビアに「勝てる総裁」は誰かを勘定しているでしょう。

 党員は自民党に投じそうな有権者よりさらにコアな支え手であり総選挙の地域情勢を国会議員より敏感に察知している可能性が極めて高いのです。選挙本番に最も頼りになる味方でもあって疎かにできるはずがありません。

 2001年の「小泉旋風」は本命視されていた橋本龍太郎候補を小泉純一郎候補が地方票で圧倒。驚いた国会議員票も小泉候補に傾いて勝利をもぎとりました。この時は今回と違い先に地方票が明らかになる制度で、1回目で国会議員票の動向に影響を与えたので一概に並べられません。だが決選はわからない。短期間に思惑が交錯する「一寸先は闇」の攻防が繰り広げられそうです。