ラグビートップ選手にサバティカルは必要か。強化とセットで考えたい選手の「休息」

W杯準々決勝「日本×南アフリカ」の試合後、選手の子供らと走るリーチマイケル主将(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 ラグビー日本代表のトップ選手にサバティカル(長期休暇)は必要か。

 

 W杯日本大会は11月2日(土)の決勝戦まで続くが、日本代表が激闘を終えた今だからこそ考えたい。

 「サバティカル」は旧約聖書の安息日が由来。「長期休暇」「研修休暇」などと訳され、一般的に目的を限定しない1カ月以上の長期休暇を指す。

 ラグビー界では2011年ワールドカップ後に、NZ代表”オールブラックス”の主将だったリッチー・マコウが半年間の休養を取った。

 同じくNZ代表の英雄で、昨季から神戸製鋼でプレーするダン・カーターも、キャリアで2度サバティカル制度を利用している。

「私は16年間の中で2回ほど、サバティカルという休止期間をとりました」

「高いレベルでプレーし続けると肉体的にもメンタル的にもダメになってしまうので、リフレッシュしてチャージし直すことが必要でした」(元NZ代表ダン・カーター)

出典:丸の内15丁目プロジェクト イベント記事「Rugbiz Show ビジネスに効く、オールブラックスの規律」

 激しい肉弾戦が80分間行われるラグビーの疲労度は大きい。

 まして4年に1度のラグビーW杯では、多くの人が目にしたように、一戦一戦が死闘だ。

 15年W杯後には日本のリーチマイケル主将が燃え尽き症候群に陥り、翌16年の代表招集を辞退することになった(17年6月に代表復帰)。

 NZ協会では、代表のトップ選手に対して、燃え尽きや国外流出を防ぐ目的もありサバティカル制度の利用を許可。

 W杯で優勝するために、”絶対に替えの利かない選手”に対して充電期間を与えている。そんなサバティカル制度を、日本代表も導入すべきだろうか。

 日本にも4年後のW杯に不可欠な選手はいるだろう。伸び盛りの20代前半は経験を積むべきかもしれないが、ベテラン選手はより休息を必要としているはずだ。

 しかし選手は自分から「休みたい」とは言い出しにくい。プロ選手なら尚更だ。

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2017年10月の福岡・宗像合宿でのリーチマイケル主将(筆者撮影)
2017年10月の福岡・宗像合宿でのリーチマイケル主将(筆者撮影)

 15年W杯後の日本は、代表強化に邁進してきた。

 トップ選手は16年参入のスーパーラグビー(南半球最高峰リーグ)で、日本チーム・サンウルブズとして世界を転戦。

 テストマッチでは、19年W杯までにティア1(強豪10か国)のすべてと対戦した。

 15年W杯の以前以後で、日本のトップ選手が経験する試合の数、強度は激変したと言ってよいだろう。

 スーパーラグビーに日本代表、そしてトップリーグ――。高度な負荷が続き、W杯へ向けたピーキングが難しかった選手もいたのではないか。

 そんなトップ選手を管理する側は、以前はその変化に追いついていなかった。休息を欲して代表招集に応じなかった選手に対して「来ないというなら2度と呼ばない」。そんなメッセージが発信されたこともある。

 今、日本ラグビー協会の執行部も刷新され、これからの日本ラグビーは、選手の「休息」に対してどんなメッセージを発信していくべきだろうか。

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 ベスト8に終わった南アフリカ戦の翌日、記者会見で第一声を発した藤井雄一郎強化委員の言葉にあった。

「選手は偉業を達成した。しっかりと歴史にベスト8突破を刻んだと思う。いろんなものを犠牲にして臨んだ結果」

 選手は多大な犠牲を払ってきた。もちろんその影響は選手に留まらない。

 中堅・ベテランの代表選手の中には、小さい子供を持つ選手も多い。

 家庭を持つ代表選手を100日間合宿に招集すれば、彼らの子供達は、父親と過ごす時間を100日間失う。

 W杯で勝つためには多くの犠牲を払わなければいけないのだろう。そして日本ラグビーがある限り「強化」はこれからも続く。

 だからこそ、強化と本来セットであるはずの「休息」についても議論と認識を深めていきたい。 【了】