東北勢の初戦突破記録守った岩手・黒沢尻工。「東北チャンピオンが誇り」

2回戦の静岡聖光学院戦でスクラムを組む黒沢尻工フォワード。(筆者撮影)

 

東北6県が連続参加する第67回大会からの30年間、東北6県が初戦で姿を消したことはなかった。

東北の5県が1回戦で敗退するなか、2回戦から登場したBシードの黒沢尻工(岩手)が、12月30日、静岡聖光学院(静岡)に17-12で競り勝ち、“東北最後の砦”となった。

「花園」の通称で知られる高校ラグビーの最高峰大会「全国高校ラグビー大会」。

12月27日に東大阪市花園ラグビー場で開幕した第98回大会で、東北勢は苦戦が続いた。

初日の1回戦で青森北(青森)、山形中央(山形)、仙台育英(宮城)が敗戦。

2日目の1回戦でも秋田中央(秋田)、聖光学院(福島)が黒星を喫した。

5県が姿を消し、残る東北勢は、Bシードとして2回戦から登場する黒沢尻工(4年連続30回目)のみ。

東北6県の参加が途切れずに続いているのは、1987年度の第67回大会から。

そこから数えて前回大会までの30年間、東北6県のすべてが初戦で敗退したことはなかった。

■BKが躍動も、最後は意地見せた「赤ベコ」フォワード。

不名誉な記録もかかることになった30日の静岡聖光学院戦。

黒沢尻工は前半7分、FB手束勇陽(3年)がキックカウンターから相手防御を切り裂いて先制トライ。

黒沢尻工の伊藤卓監督はバックス(BK)を称賛した。

「BKはすごく良かったです。裏に出てからの最終的なつなぎでミスはありましたが、キック処理も悪いわけではありませんでした」

実力を十分に発揮できなかったのはフォワード(FW)だった。

静岡聖光学院のモール攻撃を巧みに防ぐなど見せ場も作ったが、要所でノックオンやスクラムのターンオーバーがあり、ピンチを招いた。

「フッキングのミスだったり、ラインアウトではキャッチャーとのタイミングが合いませんでした。力を抜いちゃいけないスクラムでも抜いていた」(伊藤監督)

「赤ベコ」の横断幕が第1グラウンドになびいた。(筆者撮影)
「赤ベコ」の横断幕が第1グラウンドになびいた。(筆者撮影)

■佐藤キャプテン「バックス全員で『意地を見せてくれ』とフォワードに言いました」

伊藤監督の話では、黒沢尻工は昭和40~50年代、重量FWがじりじりと前進する姿から関西ファンに「赤ベコ軍団」と名付けられたという。

今年の重量FWはその愛称にふさわしい実力を持つだけに、仲間も指揮官も歯がゆかった。

しかし、試合時間残り5分で「12-12の同点」という最終局面で、見せ場はやってきた。

「バックス全員で『意地を見せてくれ』とフォワードに言いました」(CTB佐藤稜真キャプテン)」

この試合の決勝点となったのは、敵陣22m左ラインアウトから組んだ、FWのモール攻撃だった。

じりじりと前進し、最後はFL北田卓寛が左隅に飛び込んだ。伊藤監督は試合後、この決勝トライを「フォワードの意地」と振り返った。

「あそこは(ラインアウトから)違うサインプレーでいいのかなと思ったんですが、押し切りたかったんでしょう。あれはフォワードの意地だと思います」

フォワード陣が意地を見せた終盤のモール攻撃。(筆者撮影)
フォワード陣が意地を見せた終盤のモール攻撃。(筆者撮影)

■「勝ち切らないと東北の名が落ちると思いました」

東北同士の連帯意識はある。

東北勢は地理条件もあり、全国強豪との対戦機会が少ない上、花園予選の多くが10月で終了する。

そこで東北の代表校は、12月末の花園へ向けて実戦を積むため、11月末に合同合宿を行う。

「毎年11月に東北6県と札幌山の手さんで合宿をやります。2泊3日で北上でやりました。(他の東北勢は)みんな帰ってしまったので、頑張らないと」(伊藤監督)

黒沢尻工は6月の東北大会で優勝している。CTB佐藤キャプテンにはチャンピオンとしての誇りを抱いていた。

「東北総体を優勝している身ですし、勝ち切らないと東北の名が落ちると思いました。東北チャンピオンが誇りでもあるので、勝ち切れて嬉しいです」

 

1回戦で北海道勢の旭川龍谷(北北海道)、2回戦で共に合宿をした札幌山の手(南北海道)も去っており、東北・北海道で花園に残っているのは黒沢尻工のみとなった。

迎える2019年元日の3回戦。

対戦相手は地元・大阪の常翔学園(大阪第3)だ。東北チャンピオンの誇りを胸に、第3グラウンドで11時55分キックオフの笛を聞く。

ノーサイド。東北勢の初戦突破記録を守った。(筆者撮影)
ノーサイド。東北勢の初戦突破記録を守った。(筆者撮影)