広告市場も格差極大化へ、グーグルとフェイスブックの2巨人に牛耳られるのか

急成長が続くインターネット広告市場で、グーグルとフェイスブックの勢いが凄まじい。

そのインターネット広告を先導する米国市場において、グーグルとフェイスブックの2社だけで、2016年第2四半期には全米売上高の72%も占めていたようだ。驚くべき市場占有率である。図1に示すように、グーグルとフェイスブックのネット広告売上高の合計が121億ドルを超えたと予測されいる。これは、オンライン広告の業界団体IABが発表した同期間の全米売上高169億ドルの約72%に相当するのだ。前年同期には両社の広告売上高合計の市場占有率が63.9%と推計されており、この1年間で両巨人による市場寡占が一段と進んだことになる。

図1 米インターネット広告の売上高。2巨人(グーグル+フェイスブック)だけの売上高合計が、その他大勢の売上高総計を大幅に上回る。2巨人による市場占有率が、最近の1年間でも急拡大している
図1 米インターネット広告の売上高。2巨人(グーグル+フェイスブック)だけの売上高合計が、その他大勢の売上高総計を大幅に上回る。2巨人による市場占有率が、最近の1年間でも急拡大している

ネット広告でグーグルとフェイスブックだけが勝ち組に

グーグルとフェイスブックのそれぞれの広告売上高および増減率を図2に示す。この1年間でグーグルが23.3%、フェイスブックが72.2%も売上高を伸ばしている。ところが、この2社以外の広告メディア会社全ての売上高総計は減っているようだ。つまり「勝ち組」の2社だけが爆発的に成長しているのに対し、その他の大多数のメディア会社が低迷している。

図2  グーグルとフェイスブックの2社はインターネット広告売上高をこの1年間で大きく伸ばしたが、その他のメディア会社は伸び悩んでいる
図2 グーグルとフェイスブックの2社はインターネット広告売上高をこの1年間で大きく伸ばしたが、その他のメディア会社は伸び悩んでいる

図1および図2で掲げた、グーグルとフェイスブックの米市場における売上高は、それぞれの四半期決算をベースに推定した値である。その他の売上高は、IABが発表した全米のインターネット広告売上高から2巨人の売上高を差し引いた値を用いている。精度はあまり高くないかもしれないが、大きなトレンドは読み取れるであろう。ここでは、Digital Content NextのJason Kint氏がはじいたデータを用いた。

インターネットが出現するまで広告メディアといえば、テレビ、新聞、雑誌、ラジオの4媒体が中心だった。それがインターネットが台頭するに伴い、4媒体の広告市場がネット広告に浸食され続けている。特に、新聞と雑誌のプリントメディアは年々広告売上が減り続け、今や不況業種と呼ばれるほどに陥っている。この流れは、IABのデータからも明らかである。図3は、インターネットと4媒体の広告売上高を、昨年上期と今年上期の推移で示している。インターネット広告売上高は年間で19%増と急成長しているのに対し、4媒体は頭打ちとなっており、新聞や雑誌に至っては下げ止まらない状況となっている。

図3 米国市場における媒体別の広告売上高。2015年上期と2016年上期の売上高を10億ドル単位で示している。
図3 米国市場における媒体別の広告売上高。2015年上期と2016年上期の売上高を10億ドル単位で示している。

テレビ広告からYouTubeやFacebookの動画広告へ

さらに来年には、米国でもついに年間広告売上高でインタネットがテレビ(Broadcast TV+Cable TV)を追い抜く。それに合わせて、テレビ広告からインターネットの動画広告への流れが一段と加速化するのは間違いない。新聞や雑誌と同じように、テレビ広告もインターネット広告にじわじわと蚕食されていきそうだ。

ここでも2巨人が、テレビ広告の大きな受け皿になろうとしている。動画コンテンツ配信のプラットフォームとして、グーグルのYouTubeは確固たる地位を築いてきたが、その強力な対抗馬としてFacebookが浮上している。すでに、YouTubeやFacebookのサイトでは動画広告の出稿で賑わっている。eMarketerの予測によると、米国におけるYouTubeの動画広告売上高が、2016年には前年比30%増の29.2億ドルとなるという。

このように、新聞やテレビなどのレガシーメディアの広告を奪う形で、インターネット広告が急成長してきた。もちろんレガシーメディアもオンラインシフトを進めて新たにインターネット広告の獲得に必死になっているが、2巨人に大きく阻まれているのが現状である。

これからのモバイル広告も2巨人が主導権を

2巨人が特出してインターネット広告市場で圧倒的に強く、さらにシェアを拡大している背景に、モバイルシフトで成果を上げていることがある。IABの調査によると、今年上期(1月~6月)の米国のモバイル広告売上高が155億ドルと、前年同期比89%の爆発的な伸びを示している。そのインターネット広告の約半分(47%)をモバイル広告が占めるようになっている。今後インターネット広告の大半がモバイル広告で占められていくのは避けられそうもない。そのモバイル広告市場でもグーグルとフェイスブックが圧倒的な強さを発揮しようとしている。

モバイルデバイスでメディア接触するユーザーは、今やほとんどモバイルアプリを使っている。ビジター数によるモバイルアプリのランキングでも、上位をグーグル(図4の橙色)かフェイスブック(図4の青色)のアプリが占めている。それらのアプリのビジター数も、この1年間で少なくとも10%以上と勢いよく伸びている。例えばFacebook(SNS)は前年比19%増、Facebook Messengerは同36%増、YouTubeは同18%増となっている。両社は、これらのアプリを無料で多くのユーザーに提供する代わりに、広告事業で生計を立てているわけだ。巨大なユーザーを擁したモバイルアプリを介して、グーグルやフェイスブックは膨大な個人情報を収集し、これらを武器にモバイル広告事業で主導権を握ってきているのである。

図4 ユニークビジター数によるモバイルアプリ・ランキング。comScoreが2016年6月に、18歳以上の大人を対象に米国で実施した調査より。トップ10に、グーグルの5アプリ、フェイスブックの3アプリが選ばれている
図4 ユニークビジター数によるモバイルアプリ・ランキング。comScoreが2016年6月に、18歳以上の大人を対象に米国で実施した調査より。トップ10に、グーグルの5アプリ、フェイスブックの3アプリが選ばれている

グーグルはモバイル検索広告売上げを順調に伸ばしており、米国市場では今年にも広告売上の約半分をモバイル広告で稼げれるようになるという(eMarketerの調査より)。一方のフェイスブックはモバイルシフトが功を奏し、今年第3四半期のモバイル広告売上高が同社のネット広告売上高の84%も占めている。

図3からわかるように、これからの広告市場はインターネット広告がけん引役となるのは間違いない。そのインターネット広告でモバイル広告が主流となるのも間違いない。ということは広告市場全体で見ても、2巨人の影響力は増すばかりである。米国市場の動きを見てきたが、インターネット広告だけにグローバルにも同じ動きが波及していきそう。グーグルとフェイスブックがグローバルにサービスを提供しているからなおさらである。

グーグルやフェイスブックに待ったをかけられるのは、EUが時々仕掛けるように、独禁法違反で提訴したり個人情報利用を制限するほかないのかもしれない。

◇参考

IAB internet advertising revenue report:2016 first six months results、November 2016(IAB)

Google and Facebook are booming. Is the rest of the digital ad business sinking?(recode)

Here Are The Top 25 Mobile Apps In The United States - ARC(ARC)