しぼむ一方で衰退するメディア職場と、ふくらむ一方で活気づくメディア職場

この8年間で、新聞社の雇用者数が約半分に激減したのに対し、インターネットに特化した新興メディア社の雇用者数が約3倍に激増している。これはメディア王国アメリカでの動きであるが、いずれ日本でも起こるであろう。

アメリカ労働統計局(BLS : the Bureau of Labor Statistics)が先週、アメリカのメディア産業で働いている従業員数(雇用者数)の推移を発表した。メディア産業を11分野に分けて、それぞれの1990年から現在までの月間雇用者数を明らかにした。図1では、その中の4分野を抜き出して、グラフ化している。

図1 米メディア産業の雇用者数推移。4分野だけを表示。
図1 米メディア産業の雇用者数推移。4分野だけを表示。

新聞社の雇用者数の下降ぶりが目立つ。1990年から2016年の間に、約46万人から18万人へと60%も減ってしまった。逆にインターネット・パブリッシャー/ブロードキャスティング社で働く従業員は約3万人から20万人弱へと増え続け、昨年10月に新聞社を追い抜いた。映像・ビデオ制作会社もインターネット向けに軸足を移すことにより、上昇気流に乗っている。プリントメディア中心の雑誌社は、新聞社ほど厳しくないが、やはり下降線をたどっている。

インターネットメディアが台頭した1990年代から、新聞や雑誌のプリントメディア市場はじわじわと侵食されていたが、何とか持ちこたえてきていた。ところがリーマンショックでプリント広告売上が急落し、ついに伝統的な新聞社や雑誌社の多くが経営危機に追い詰められてしまう。延命のための人件費削減で、新聞社や雑誌社はこぞってレイオフを加速化させた。50人~100人規模の人員削減も珍しくなかった。景気が回復してもレイオフラッシュが続き、休刊や倒産も相次いだ。

逆に、景気回復に伴いインターネット関連のメディア会社が続々と誕生し、多くの雇用を創出した。そこで伝統メディアからネット特化の新興メディアへの”メディア民族の大移動“が盛んになった。図2にリーマンショック以降の特定分野のメディア社の雇用者数推移を拡大表示した。インターネットに絡むメディア事業会社の雇用増加と、プリント中心の新聞社や雑誌社の雇用縮小が、一段と進んでいるのが読み取れる。

図2 リーマンショック以降の雇用者数推移
図2 リーマンショック以降の雇用者数推移

でも伝統的な新聞社や雑誌社もデジタル化に活路を見出そうと必死になっている。レイオフラッシュで衰退の一路のように見えるが、現場はデジタル化の挑戦で結構、活気づいている。レイオフの対象者はプリント版のスタッフ(いわゆるアナログ派)が中心で、ピューリツア賞の受賞者すら対象になるほど激しい。でも同時にこっそりと、デジタル版専門の編集者やデザイナー、マーケッターなど数多く採用したりしているのだ。伝統メディアからネット新興メディアへの大移動が進んでいると先に述べたが、逆方向の流れも活発化しているのである。

参考までに、BSLが取り上げた11分野のメディア会社の雇用者数推移を、図3に掲げておく。1990年1月、2008年1月、2015年3月、2016年3月の各月の雇用者数だけを抜き出した。最近の8年間で見ると、ラジオ放送局で働く従業員は少し減っているが、テレビ放送局の雇用者数はあまり変動がない。

図3 米メディア産業の11分野の雇用者数
図3 米メディア産業の11分野の雇用者数

メディア産業の雇用者総数(図3の合計)をはじいてみると、驚くことに減っていた。アメリカの人口は、1990年に2億5000万人であったのが、2016年には3億2500万人に膨れ上がっているので、メディア接触人口は明らかに増えているはず。さらに、スマホなどの端末のお陰で、1人当たりのメディア接触時間も大きく増しているはずだ。なのに、メディア産業に携わる雇用者がもっと多くても良さそうなのに、減っているのはどうしてだろうか。

アメリカ労働統計局が行ってきたメディア産業の分類が古すぎて、現状に即さなくなっているのではなかろうか。例えば、Business Insiderが発表した世界のメディア社ランキングで1位のアルファベット(グーグル)や5位のフェイスブックなどは、BSLが分類している11分野のメディア会社に含まれていないのではなかろうか。両巨人のメディア部門で働いている従業員がカウントされていないと思われる。さらに最近の企業では、オウンドメディアやPRなどのメディア部門で働く従業員をたくさん抱えている。こうした従業員も含めると、メディア人口はもっと多いはずだ。メディア人といえばかつては、新聞社や雑誌社、TV局などのマスメディアに勤めている人たちであったが、今後はこうした主流派の人たちが少数派になっていくのかも・・・。