経営危機の米新聞を中国政府系新聞が活用

ボストン・グローブに次いでワシントン・ポストと、経営危機に瀕している米国の名門新聞の売却が続いた。次はロサンゼルス・タイムズかもしれないし、経営が安泰とは言えないニューヨーク・タイムズさえもどうなるかわからない。

ところが経営状況が悪化しているにもかかわらず、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストのような有名な新聞ともなると、今でも世界的に大きな影響力と名声も擁している。だから海外からの意見広告が掲載されたりしている。また海外からサイバー攻撃の標的になったりもしていることも、影響力がある証かもしれない。

先日、ワシントン・ポストの売却が発表されたので、同サイトと同新聞紙を覗いてみた。まずサイトのトップページのスナップショットを以下に掲げる。

ワシントン・ポストのトップページ
ワシントン・ポストのトップページ

目次ページだから、主要記事の見出しや写真などが掲載されている。右サイドには目立つ形で「CHINAWATCH」の枠が設けられている。まるで、中国関連ニュースのニーズに応えて用意した特別枠のように見える。記事ページでも、この「CHINAWATCH」の枠がよく現れていた。

ワシントン・ポストの記事ページ
ワシントン・ポストの記事ページ

そこでその「CHINAWATCH」の中で紹介されている政治記事をクリックすると、CHINAWATCH(ワシントン・ポストのドメイン内)の記事ページに以下のような飛ぶ。政治、ビジネス、ライフ、人、文化などの分野の多くの記事がワシントン・ポストのドメイン内で閲読できる。

ChinaWatchの記事ページ
ChinaWatchの記事ページ

こうした「CHINAWATCH」枠やCHINAWATCH(ワシントン・ポストのドメイン内)の記事は、すべて中国政府系新聞チャイナ・デイリーが広告料を払って提供しているコンテンツであるのだ。チャイナ・デイリーUSAの記事を転載している。上で取り上げたCHINAWATCHの政治記事も、以下のチャイナ・デイリーUSAの記事をそのまま転載したものである。

チャイナ・デイリーUSAの記事
チャイナ・デイリーUSAの記事

でも、一般の米国人は中国政府系新聞サイトに訪れることはあまりない。チャイナ・デイリーでは記事にプロパガンダ色を見えないようにしていても、同サイトの記事はほとんどの米国人の目に触れないままに終わるだろう。でも、このようにブランド力のあるワシントン・ポストのサイトで、非常に目立つ形でチャイナ・デイリーの編集記事を提供していけば、読まれる機会がぐんと増えるはずだ。「CHINAWATCH」枠の上に小さくadvertizementと記されているが、ワシントン・ポストのメディア接触の中で、チャイナ・デイリーの記事も閲読している読者もいるのではなかろうか。これは、米国で話題になっているネイティブ広告のようにも見える。ネイティブ広告では広告と思えないスポンサーコンテンツをメディア内編集記事のように提供するのだが、今回の例ではプロパガンダと思わせないチャイナ・デイリーのコンテンツをメディア内編集記事として提供しているように思える。

またチャイナ・デイリーは、尖閣諸島が中国領であると主張する意見広告を昨年9月に、ニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストに掲載している(見開き2ページの意見広告の写真はこちら)。

ワシントン・ポストの例を見るまでもなく、米国の新聞は広告売上の急落で経営が苦しくなる一方である。それだけに、広告収入がかなり多そうで、しかも定常的な収入が当てにできるチャイナ・デイリーの広告は、ワシントン・ポストにとって欠かせない。新聞紙にも、以下のように1ページ広告でCHINAWATCHが掲載されていた。チャイナ・デイリー記事の見出し上に小さく、次のような説明がなされていた。ワシントン・ポストの編集が関与していないことを、わざわざ言っているのだ。

This suppliment,prepared by China Daily,People’s Republic of China,did not involve the news or editorial departments of The Washington Post.

ワシントン・ポスト紙に掲載されていたチャイナ・デイリー記事
ワシントン・ポスト紙に掲載されていたチャイナ・デイリー記事

◇参考

State-run papers from China and Russia buy convincing advertorial sections on the WaPo’s website(NiemanJournalismLab)

New York Times Publishes Spread From State-Owned Chinese Newspaper(The New York Observer)

China runs ads in top U.S. newspapers asserting sovereignty over islands(The Asahi Shinbun)

ネイティブ広告は有益なコンテンツに成り得るのか?新しいマネタイズ手段としての米国伝統メディアの取り組み(MarkeZine)

ワシントンポストの大胆な試み、広告料を払うと企業も編集意見欄への投稿が可能に(メディア・パブ)