絶滅危機のカメを救え!須磨のファーブルがアリゾナ砂漠に行く

アリゾナ砂漠でのカメ調査/田中幸夫撮影

日本固有種のニホンイシガメが、環境省レッドデータブックの「準絶滅危惧種」に指定されるなど生態系が脅かされている日本のカメ。神戸市の「須磨ふるさと生きものサポータ」代表・山本勝也(56)は13年前から、外来種の駆逐や在来種の保全活動に取り組んでいる。そして世界的なカメの権威、ジェフリー・ロビッチ博士(66)と面会する機会を得た。固有種の保存に向けたアドバイスをもらうべく、海を渡った「須磨のファーブル」。カメだけでなく、ガラガラヘビも日常風景なアリゾナで、博士から授かった「教え」とは?まずは動画をご覧ください。

ふるさと須磨の自然を守りたい

源氏物語の五十四帖の巻名の一つとして、昔から広く知られる須磨。須磨寺前の商店街に、創業昭和4年(1929年)の山本眼鏡店がある。三代目・山本勝也さん(56)は、幼い頃から須磨の山や川で虫捕りに熱中した。13年前に母校の小学校を拠点に「北須磨自然観察クラブ」を立ち上げ、自然保全運動を始めた。「大胆に言うと、弥生時代から変わることのなかった日本の自然が、ここ半世紀で激変した。僕のふるさと須磨が壊れていく。恐怖さえ感じた」

近年のペットブームで外来種が飛躍的に増加、外来種による在来種への悪影響も見られるようになった。従来の生態系が破壊されているのだ。カメの場合、昭和30年代にアメリカから大量に輸入された通称ミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)が、お菓子のオマケやペットとして子供たちに大人気となった。成長し、飼うのが難しくなると、川や池に捨ててしまう人もいた。ミシシッピアカミミガメは大増殖し、日本古来のニホンイシガメは駆遂されていった。今やイシガメは須磨では確認されないまでになった。山本さんは卵から孵ったイシガメの子亀を子供たちに育てさせ、大きくなるとサンクチュアリ(自然保護区)に返す、そんな地道な保全活動を続けている。山本さんは言う。「飼っていた生き物が成長する喜びも死なせてしまう辛さも経験することが大切。子供の頃に生き物と触れ合った原体験こそが、自然を愛し次世代へと受け継ぐ力になる」

一冊の図鑑が山本さんとロビッチ博士を結んだ

須磨水族園から講演依頼を受け、2014年2月に来日したカメの世界的大家ジェフリー・ロビッチ博士(66)。須磨滞在中、案内役を任されたのが山本さんだった。須磨の山、海、寺などを巡り、最後は自宅に招いた。そのとき、ロビッチ博士は偶然、山本さんの本棚に思い出深い本を見つける。それはロビッチ博士が10歳の頃に両親からプレゼントされたものと全く同じ『REPTILES(爬虫類図鑑)』だった。二人はすっかり意気投合。カメ、自然、環境保全、自然と文明など、様々なことを語り合った。そして、いつか一緒にアメリカでカメの探索をしようと固い約束を交わしたのだった。

ロビッチ博士の書斎/田中幸夫撮影
ロビッチ博士の書斎/田中幸夫撮影

ついにアリゾナへ!

ロビッチ博士が所属するUSGS(アメリカ地質調査所)は1879年設立、職員9000人というNASAに並ぶアメリカ合衆国自然科学系の巨大頭脳組織だ。ロビッチ博士は南西部生物科学センターを拠点に、リサーチ・エコロジストとして世界中のカメの調査、研究、保全を仕事としている。

ミシシッピアカミミガメの広がりは、日本と同じくアメリカでも大きな問題となっている。アカミミガメは、最強の水棲生物であるワニと同じ生息地域に棲むため、俊敏で獰猛、食欲も旺盛だ。多くの緩慢なカメと比べて動きが活発で丈夫なため、ペットとして飼う人が増えた。しかし、捨てられるケースも多く、結果として、各地の在来種の生存が脅かされているのだ。

アリゾナのネイティブアメリカンの聖池モンテズマ・ウェルもその一つ。本来ここには生息しない東南部ミシシッピ地方のアカミミガメが持ち込まれ棲みついている。ロビッチ博士は何年もかけアカミミガメを駆逐、在来のソノラ泥亀を守っている。

世界最大の松の森、霊地と言われるセドナ、カリフォルニアの砂漠生物研究所特別エリア、山並みを覆う風力発電地帯・・・。風力発電下に於けるサバクゴファーガメの生態調査は、ロビッチ博士の重要な研究テーマだ。何千と立ち並ぶ巨大なプロペラ群を眼下に、二人はカメへの思いを語り合った。

今回の旅を通して、山本さんとロビッチ博士の友情は深まっていった。7月4日アメリカ独立記念日には、ロビッチ博士の自宅に招待され、アメリカンBBQパーティにも参加した。書斎の本棚の片隅には、二人をつないだ『REPTILES(爬虫類図鑑)』が収められていた。

風力発電下の陸亀調査/田中幸夫撮影
風力発電下の陸亀調査/田中幸夫撮影

須磨寺の亀池

須磨寺の山門を潜ると、千手観音に見守られた亀池がある。山本さんの思いに共感した小池弘三管長が造った。年に一度の掻い掘りには、山本さんを中心に地元の子供たちや保護者たちが参加。カメや鯉をすくい生態調査、池底をきれいにして再び戻す。

環境保全は地元の協力が不可欠だ。小池管長は「命が軽んじられている昨今、亀池が命の大切さを感じてもらう場所になってくれれば・・・」と、微笑んだ。

亀池の掻い掘り/田中幸夫撮影
亀池の掻い掘り/田中幸夫撮影

ドキュメンタリー映画「カメの翼」(91分)2015年公開 文化庁芸術文化振興基金助成作品

お問い合わせ:風楽創作事務所 balmaa2001@yahoo.co.jp まで

【この記事は、Yahoo!ニュース個人の動画企画支援記事です。オーサーが発案した企画について、取材費などを負担しているものです。この活動は個人の発信者をサポート・応援する目的で行っています。】