30歳で画才開花!ダウン症の画家・いかわあきこに起きた「奇跡」

アトリエにて/北川のん撮影

 地蔵や孔雀などを題材とした、カラフルアートで知られる画家いかわあきこ(48)。温かさに包まれるような独特の画風が、高く評価されている。しかし彼女はダウン症で、30歳までは絵を描いたことすらなかった。「奇跡」はどのように起こったのか。

■いかわあきこの描く地蔵・孔雀・桜

 いかわあきこは30歳を過ぎるまで絵を描いたことがなかった。或る日、突然、何かに突き動かされるようにペンを取った。小さなメモ用紙に小さなお地蔵さんが現れた。母親の隆子は、大きな紙を与えてみた。あきこは一心不乱に描き始めた。何十、何百のお地蔵さんの絵が部屋を埋め尽くしていった。障害のある子をもつ知人は言った。「このお地蔵さんは隆子さんだと思うよ。自分をすべて受け入れてくれる母親の姿。あきこちゃんは、あなたの苦労を全部分かっているのよ。」

 ダウン症の子の精神世界は驚くほど深いとも言われる。隆子は半信半疑ながら、あきこが絵を描くと、満面の笑みで喜び拍手もした。父の隆夫も加わった。あきこは、両親の喜ぶ姿がただただ嬉しかったに違いない。毎日、朝から晩まで、お地蔵さんを描き続けた。

 やがて、沢山の人たちに見てもらおうと、小さな展覧会を開いた。すると、思いも掛けない大きな反響が・・・。カラフルな色彩の中から溢れ出る優しさと温かさが、人々の胸を打った。テレビ局がやって来た。新聞社も押しかけて来た。戸惑う両親の傍らで、あきこは人なつっこい笑顔を見せるだけ。両親は我が子がいきがいを見つけた幸福に浸った。

「お地蔵さん、一人で淋しそう。」ある日、あきこが呟いた。お地蔵さんの絵に、蝶やトンボや鳥や花が加わるようになった。

 両親はあきこを動物園に連れて行った。白い孔雀が大きな羽根を広げ、あきこを迎えた。その日から、あきこは飽くことなく孔雀を描いた。隆子の知人が、本物の孔雀の羽根をプレゼントした。あきこは泣いた。「早く返して来て!羽根抜いたところから血が出ている。孔雀に早く返してあげて!」隆子は、その取り乱しように驚くとともに「ダウン症の子は染色体が1本多い。それは天使の1本と呼ばれているのよ。」と友人から慰められた昔を思い出した。

「今、それは真実なのだと素直に思えます。」と微笑む。

左:アトリエにて/北川のん撮影  右:おじぞうさん/いかわあきこ作
左:アトリエにて/北川のん撮影  右:おじぞうさん/いかわあきこ作

■赤に白を混ぜたら何色になる?

 あきこの絵の特徴は色を混ぜないで描くことだ。赤に白を加えるとピンクになるということが理解できない。だから沢山のマーカーやアクリル絵具がいる。画材屋に行くことは、あきこの大きな楽しみになっている。

 もう一つの楽しみは、3時のおやつ。朝から晩まで描き続けるあきこにとって、絵から離れる唯一の時間だ。ケーキより饅頭、コーヒーより紅茶がお好み。

母:居川隆子 父:居川隆夫 愛犬:らら/北川のん撮影
母:居川隆子 父:居川隆夫 愛犬:らら/北川のん撮影

■カラフルアート展を各地で開催

 笑顔と勇気を届けるカラフルアート展。父親の隆夫の運転する車で、家族一緒に愛犬ららも連れて、全国各地どこにでも出かける。

 ダウン症の書家として世界的にも名高い金澤翔子との二人展が実現した。京都大丸や大阪ビッグアイには大勢の人たちが詰めかけた。

 隆子は親の思いを講演会で話すこともある。伝えたいことは、人としての温かさと優しさと一生懸命さ。それは全て、我が子あきこから学んだことだ。

さくらとお月さま/いかわあきこ作
さくらとお月さま/いかわあきこ作

■ダウン症の子を持つ親の思い

いかわあきこのホームページより・・・・・・

 今日、「ダウン症」「ダウン症児・者」に関しての情報がメディアを通じ、日々報道されるようになりました。社会的背景も時代の流れと共に、大きく変わってまいりました。世間の人々に理解を深めていただける状況になりつつありますことを、私たち、障がい者とその家族は、不安を感じながらも期待しております。

 我が子、晶子が誕生の時代(1970年頃)は、「家族・親族」、ましてや「世間さま」に「恥ずかしい子」との思いが強く、暗い日々を過ごしておりました。そのような状況の中で、翻弄されたことも多々ありましたが、ゆっくり、ゆっくり、成長してまいりました。何気ない日々の中で、「なんて清らかなこころ」「なんて優しいこころ」と癒してくれる存在になっていました。それからの日々は、胸を張って、外出できるようになり、その日一日楽しければ…。その日一日微笑みあえたら…。

 親なら当然、こんなことが出来る子に、あんなことが出来る子にと、子供の将来に夢をもち、目標に向かって、叱咤激励の日々を送ることでしょう。

 しかし、私は、ただただ晶子の気持ちに寄り添って過ごすことしか出来ませんでした。養護(支援)学校卒業後、作業所等に通わせていただきましたが、いつの頃からか、自宅で絵を描くようになりました。最初の頃は、「おじぞうさま」と小さな鳥やお花を描いておりました。動物園、植物園、花鳥園、お花畑…など、晶子が興味を示す場所に出かけ、親子共々、楽しい時間を過ごしております。その折々に感動したことが晶子のこころにいつまでも映っているようです。

 朝から夜遅く迄、「この鳥しあわせかな…」「この花しあわせかな…」とささやきながら、描いております。

 ゆっくり、ゆっくり、穏やかな時間が流れています。温かく見守っていただきました多くの人たちに感謝しつつ、いつまでも、このしあわせな日々が続くことを願っています。(居川隆子)

*いかわあきこ(居川晶子)略歴

1970 京都府宇治市に生まれる 

1988 京都教育大学付属養護学校高等部卒業 

1993 京都市洛西の里授産園退園 

2007 みんなしあわせ展(大阪)に展示 NHKテレビで放映

2012 第27回パリ国際サロン出品 二元会新人賞

2015 東久邇宮記念賞

2016 大丸京都店 展示 

*いかわあきこ作品集

「あきこの四季 いかわあきこ」(サンエムカラー発行)

*個展の予定   

(期間)8月1日~20日 9:30~17:30 休館日なし

(会場)木口記念会館 兵庫県芦屋市呉川町14-10 Tel 0797-35-5262

【この記事は、Yahoo!ニュース個人の動画企画支援記事です。オーサーが発案した企画について、取材費などを負担しているものです。この活動は個人の発信者をサポート・応援する目的で行っています。】