日本発!中国、アジアに広がるユニバーサルファッション

日中共同ファッションショー(北川のん撮影)

■ファッションに、年齢や人種は関係ない

 ユニバーサルファッションは、障害の有無や年齢、性別、人種などにかかわらず、すべての人が着やすいようにデザインされた衣服だ。アメリカ発祥と言われているが、高齢者向けのものが充実している日本で独自の発展を遂げた。

 その第一人者が、神戸芸術工科大学の見寺貞子教授(62)だ。ユニバーサルファッションの研究を始めたきっかけは1995年に起きた阪神淡路大震災。自身も被災し、瓦礫の散乱した道を歩くために必要な運動靴や寒さをしのぐダウンジャケットがなく、辛い生活を余儀なくされた。この時「ファッションは人間にとって何なのか」を自分に問いかけることになった。

 急速な高齢化の波が押し寄せるアジア。なかでも13億の人口を抱える中国ではユニバーサルファッションの需要は大きい。中国へ渡り、アジアへユニバーサルファッションの礎を築こうとする見寺教授を追った。

 

■阪神淡路大震災で生まれた問い

 ユニバーサルファッションはユニバーサルデザインを母体とする。ユニバーサルデザインとは、アメリカ・ノースカロライナ州立大学のロナルド・メイスが1985年に提唱した概念で「色々な人たちが利用可能となるデザイン」が基本コンセプト。デザイン対象を障害者だけに限定しない点がバリアフリーとは決定的に異なる。ダイバーシティ(多様性)にもつながる考え方だ。高齢者の多い日本で、どんな人にも着やすくオシャレな服として広まった。

左:2002年出版「ユニバーサルファッション」見寺貞子 右:神戸芸術工科大学 見寺貞子教授(東利幸撮影)
左:2002年出版「ユニバーサルファッション」見寺貞子 右:神戸芸術工科大学 見寺貞子教授(東利幸撮影)

 見寺教授は授業でも講演でも、必ず自身の体験を話して聞かせる。大手百貨店のバイヤーとして最先端のファッションに触れてきた、ファッションは若者のものだとも考えてきた。しかし、その考えを大きく変えたのは1995年の阪神淡路大震災だった。震災直後の生活の中で、必要な衣服を何も持っていないことに気付かされた。シャネルもハイヒールも毛皮のコートも持っていた。が、ダウンジャケットも運動靴も持っていない。その不自由さを身に沁みて体験した。ファッションとは人間にとって何なのか…。そこから、ユニバーサルファッションの研究を始め、日本で最初の専門書『ユニバーサルファッション』(共著:田中直人・見寺貞子 2002年)を出版した。さらに、全国各地での講演、アパレル企業へのアドヴァイス、地域の高齢者と取り組むシニアファッションショーなど、多岐に亘る普及活動を行なう。

 『ユニバーサルファッション』には、こう記されている。

 「生活の基本は、『衣・食・住』と言われるように、衣生活は人間であることの象徴である。が、当たり前に着用している既製服の大半は若者や健常者の感性や体型を基軸にデザインされたもので、その範疇以外の人に配慮されたデザインとは言い難い。

 例えば高齢者の衣服は地味で画一的なものが多く、障害のある人の衣服については、下着やおむつ、エプロン、パジャマなど室内で着用する機能性中心の介護衣料という捉え方で、ファッション性や楽しさなどを配慮した外出着は皆無に等しい。同じ衣服であるにも関わらず、一般商品と高齢者用衣服・介護衣料との間には大きな隔たりがある。本来、ファッションは全ての人に与えられた平等の概念であり、人間にしかできない楽しい行為のはずである。今後、高齢社会を迎える中、より多くの人が快適に生活できるファッション環境の実現をめざすのであれば、現状のファッションの捉え方を再考することが必要であろう。」

記念写真:上海視覚藝術学院訪問(北川のん撮影)
記念写真:上海視覚藝術学院訪問(北川のん撮影)

■日中共同で進めるユニバーサルファッション

 時代は高齢社会に突入、ユニバーサルファッションが大きな注目を集めているのは歴史の必然なのだ。今や中国や韓国などから次々と招待を受ける見寺教授は、アジアにユニバーサルファッションの礎を築こうとしている。そこには、歴史の違い、民族性の違い、美意識の違いなど様々な違いが存在する。しかし、その壁を乗り越えて多様性を実現していくことこそ本当の意味での「ユニバーサルファッション」なのではないか。見寺教授のチャレンジはつづく。

*「神様たちの街」 映画公式サイトkamisamaga.com

見寺教授監修のシニアファッションショーを描いた2016年公開のドキュメンタリー映画。

海外上映(2016年:中国・上海 2017年:ドイツ・フランクフルト 2018年:カナダ・トロント予定)

【この記事は、Yahoo!ニュース個人の動画企画支援記事です。オーサーが発案した企画について、取材費などを負担しているものです。この活動は個人の発信者をサポート・応援する目的で行っています。】