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往生際の悪い安倍総理の言動と残り2年を切った総理在任期間

田中良紹ジャーナリスト

フーテン老人世直し録(477)

霜月某日

 総理主催の「桜を見る会」を巡り、火に油を注いできた安倍総理の言動が、今週に入ってさらに進化を遂げた。招待者の推薦に関与してきたことを認め「反省」という言葉を使ったが、その一方で「最終的な取りまとめに関与したことはない」と関与を否定したのである。

 安倍総理は「最終的なとりまとめは内閣府で行っている」と、自分は受け身で内閣府がすべてを行っているような印象を与えるが、内閣府のトップは内閣総理大臣である。内閣府は総理を助けるために存在する。

 安倍総理がそれを言うなら、なぜ安倍政権になってそれまで1万人規模で推移してきた招待者の数が2倍近くに増加したのか、総理の意思でないなら誰の意思で何を理由に内閣府は招待者数を倍増させたのかを追及したくなる。安倍総理が言えば言うだけ火は燃え広がると思う。

 安倍総理は20日の参議院本会議で、「私の事務所が内閣官房からの推薦依頼を受け、幅広く参加希望者を募って来たと承知しており、私も事務所から相談を受ければ、推薦者について意見を言うこともあった」と述べ、内閣官房から安倍事務所が依頼を受け、事務所から相談があれば意見を言うこともあったと自分の役割を極小化した。

 そして8日の参議院予算委員会で「私は主催者としての挨拶や招待者の接遇は行うが、招待者の取りまとめなどには関与していない」と発言したこととの整合性について、「内閣官房や内閣府が行う招待者の最終的なとりまとめには一切関与しておらず、答弁が虚偽だったとの指摘は当たらない」と答弁した。

 当たり前の話だが、1万8千人もいる招待者の一人一人の選定に総理大臣が関わることはありえない。しかし計画の大枠を決めることに関わっていれば、特に総理枠の人数を決めることに関わっていれば、十分に関与していたことになる。8日だけでなく20日の答弁も虚偽の指摘を免れなくなる。

 2016年の「桜を見る会」は、前年のパリ同時多発テロを受けて警備強化を図る必要があった。そのため政府は招待客を減らして経費増加を抑えようとしたが、その年の7月に参議院選挙が予定されていたことから、改選議員に後援会関係者を招待させることになり、参加者数は前年より千人以上、経費も前年より8百万円増え当初予算を大幅に上回った。

 これは誰の意思なのか。内閣官房や内閣府の官僚の意思でそうなったのか。誰よりも選挙勝利を願っている者の意思と考えるのが普通である。当時はアベノミクスが思い通りにいかず、米国の経済学者から批判されていたため、安倍政権は「アベノミクス第二幕」と称して民主党の政策を真似しなければならなくなっていた。

 しかしそれでも安倍総理が全く関与していなかったのだとしたら、内閣官房や内閣府の官僚が政府の方針を覆して招待者数を増やし、予算を大幅に上回る経費増加を図ったことになる。納税者としては内閣府を徹底追及せざるを得ない。

 往生際が悪いと言うか、嘘に嘘を塗り固める姿勢が問題を拡げていく。「森友・加計疑惑」の時は総理を守らなければならない立場の官僚の嘘が問題になった。彼らは総理を守るために嘘を重ねた。しかし今回は総理自身の発言の一つ一つが問題を拡げていく。

 安倍総理はこの問題を8日の参議院予算委員会で追及されると、初めは「知らぬ存ぜぬ」の一点張りで、「個人情報」と「セキュリティ」を口実に答弁を拒んだ。触れられたくないことが一目瞭然だった。一方で官僚は「文書破棄」を明言し、フーテンは「森友疑惑」を思い出した。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■オンライン「田中塾」の次回日時:3月31日(日)午後3時から4時半まで。パソコンかスマホでご覧いただけます。世界と日本の政治の動きを講義し、皆様からの質問を受け付けます。参加ご希望の方は https://bit.ly/2WUhRgg までお申し込みください。

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