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舛添元都知事を思い出した安倍総理の「桜を見る会」のせこい感覚

田中良紹ジャーナリスト

フーテン老人世直し録(474)

霜月某日

 前回のブログでフーテンは、6日に衆議院で行われた予算委員会の集中審議が緊張感を欠いたものだったことを憂いた。組閣後1か月も経たないうちに2人の閣僚が公職選挙法違反容疑のスキャンダルで辞めたのに、攻める野党も守る安倍政権も姿勢が甘すぎると思えたからだ。

 瞬間風速60メートルを超す台風が関東を直撃することが分かっていながら安倍政権は組閣を強行し、そのうえ安倍総理は「安定と挑戦」と意味不明のことを言って、自らの思い通りにならなかった組閣の実態を誤魔化した。

 メディアは誤魔化しをそのまま伝え、国民に組閣の実態を伝えようとはしなかった。今回の人事はまず二階幹事長を留任させるかしないかで綱引きが行われ、安倍総理は岸田氏を幹事長に据えることが出来なかったことで、任命権者としての力に疑問符がつけられた。

 二階幹事長を留任させたのは菅官房長官である。組閣から一か月後の週刊文春の報道は、見事なほど菅官房長官の側近である菅原経産大臣と河井法務大臣を狙い撃ちにし、フーテンはそこにある種の意図を感じた。

 前に週刊新潮による小渕経産大臣のスキャンダル報道の時にもブログに書いたが、今の週刊誌や新聞・テレビに独自にスクープをする力などない。誰かからリークされた情報に頼って取材を進め、リークした側の意図に乗せられて報道するのが常である。

 だからメディア報道に頼って国会で政府を追及する野党にフーテンは辟易してきた。メディアに頼らず自力で情報を収集する力がなければ、政党を名乗る資格はないと思ってきた。

 野党だけでなく与党についてもそれは言える。霞が関の情報がなければ何も判断できない与党を見続け、フーテンは日本政治が国際社会と対峙出来るのか疑問に思ってきた。米国では共和党も民主党も独自のシンクタンクを持ち、官僚の情報だけに頼っているわけではない。

 最近は安倍政権が霞が関の人事権を握ったことで官邸の力が増したと言われる。しかしただ人事権を握っただけで情報収集能力が政治の側にあるわけではない。官僚の言いなりに政治をやる実態は変わらず、フーテンが安倍政権を「二人羽織」と呼ぶ意味はそういうことだ。

 ただし今回の組閣が面白いのは、霞が関の人事権を握ったのが安倍総理ではなく菅官房長官で、そのため菅官房長官の力が増し、総理の専権事項と言われる組閣にまで影響力を持ったことである。安倍総理は対抗するように今井総理秘書官に補佐官を兼務させることで、政策に関与する力を与えた。

 従って今回の2人の大臣の辞任には権力内部の闘争の色彩が強い。それを野党が国会で追及する場合、下手をすると権力内部に絡め取られ利用される恐れがある。過去の野党はまさにそうした役割を果たす存在だった。

 フーテンが見てきた「55年体制」は、社会党左派と公明党が田中角栄の秘密応援団、社会党右派は金丸信の秘密応援団で、中曽根康弘が民社党を懐柔しようとしていた。フーテンから見れば共産党以外はみな与党の応援団だったが、国民はメディアによって野党があるかのように思わされていた。

 かつての国会では野党が激しく政府を追及したが、それは与党内部の権力闘争に加担したケースが多かった。しかし冷戦が終わり自社なれ合いの時代は終わった。今回の権力内部の闘争に野党はどう関わるのか、それがフーテンの関心事である。

 6日の集中審議は、安倍総理が国民に謝罪をするところをメディアに報道させ、しかし何も責任を取ろうとしないだけに終わった。そこで「いくら不祥事を起こしても政権崩壊につながらない不思議」というブログを書いた。ブログの終わりに8日の参議院でも同じことが繰り返されるのか、新たな展開が生まれるのかと書いたら、新たな展開が生まれた。

 共産党の田村智子議員が安倍総理主宰の「桜を見る会」を追及したのである。総理主宰の「桜を見る会」は、日本が独立を回復した昭和27年から毎年4月に新宿御苑で行われ、招待者は皇族、各国大使、衆参議長と副議長、最高裁判所長官、国務大臣、国会議員、各省事務次官、都道府県知事及び議長、その他各界の代表者等とされ、人数は1万人で費用は国民の税金である。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■「田中塾@兎」のお知らせ 日時:4月28日(日)16時から17時半。場所:東京都大田区上池台1丁目のスナック「兎」(03-3727-2806)池上線長原駅から徒歩5分。会費:1500円。お申し込みはmaruyamase@securo-japan.com。

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