参議院選挙結果はすぐに衆議院を解散できるかどうかの指針になる

フーテン老人世直し録(449)

文月某日

 第25回参議院選挙が公示された。安倍総理は衆参ダブル選挙を狙って最後までじたばたしたが、うまくいかずに参議院単独選挙に落ち着いた。しかし現在の野党の状況を見ると衆議院解散の誘惑は断ち切れない。参議院選挙後なるべく早い段階での解散を狙うことになる。従ってそれが許される結果になるかどうかがこの選挙の見どころである。

 安倍総理が衆議院解散の誘惑にかられるのは現在の野党がバラバラで、しかも野党第一党が立憲民主党だからである。衆議院選挙は政権選択選挙であるから、国民に誰が総理にふさわしいかを問うことになる。与党第一党の党首と野党第一党の党首が比較される。つまり国民に安倍晋三と枝野幸男を選択させる。

 枝野幸男氏は菅直人政権で官房長官を務めた。東日本大震災では連日記者会見を行い広く国民に顔を知られた。東日本大震災時の政府対応と枝野氏は一体である。原発事故を巡るあの時代の記憶を呼び起こせば安倍総理が好む「悪夢のような時代」という言葉にふさわしい。それを象徴するのが枝野氏で安倍総理が勝算ありと思う所以である。

 森友問題で財務省に借りを作った安倍総理は、もはや消費増税延期を言い出せない。消費増税は「アッキー増税」だとフーテンは前から書いてきた。10月の消費増税はやるしかない。従ってその前しか解散を打てるタイミングはなかった。安倍総理がダブル選挙を考えるのは当然だが、しかし考えるのと仕掛けて実現するのとはわけが違う。

 これまでにダブル選挙は2度あった。1度目は自民党内が分裂して大平内閣不信任案が可決された1980年の「ハプニング解散」、2度目は中曽根総理が「脅し」と「買収」と「騙し」を駆使した86年の「死んだふり解散」である。逆に言えば「ハプニング」とか「死んだふり」とか尋常でないケースでしかダブルはない。

 フーテンは86年の「死んだふり解散」の一部始終を取材したが、同じことを今の安倍総理とその周辺のひ弱な連中ではやれないと思う。凄まじい「脅し」と「買収」と「騙し」が見えないところで半年間も繰り広げられた結果の解散だった。中曽根、金丸、竹下らの暗闘を思い出すと、安倍総理が「一強」と呼ばれるのが馬鹿馬鹿しくなるほど役者の格が違う。

 ダブルが簡単でないもう一つの理由は、自民党はもはや単独で過半数の議席を獲得できない非力な政党で、公明党の選挙協力がなければ選挙を戦えない。ところがその公明党は党内事情でダブル選挙に反対である。

 さらに違うのは小選挙区制に変わったことである。小選挙区制では選挙結果の振れが大きく、ちょっとしたことで与党に有利と思われた選挙が逆の結果になる。ダブルには権力すべてを失うリスクがある。それでも安倍総理は解散を喉から手が出るほどやりたかった。

 前回2016年の参議院選挙の時も安倍総理はダブルをやろうとした。自民党の党則を変えて3選を可能にするためである。その年はG7サミットが三重県の伊勢志摩で開かれたが、日本でサミットのある年には衆議院解散があるのがジンクスだった。86年の「死んだふり解散」も東京サミットがある年に、中曽根総理が党則を変え3選されるためにダブル選挙をやった。

 それに気づいたのだと思うが、二階総務会長(当時)は無謀なダブルを止めるため総裁3選を可能にする党則改正を主張した。党則を変えて3選を可能にするからダブルはやめなさいというわけだ。消費増税延期を解散の大義にしようと考えていた安倍総理は、結局、ダブルを諦め参議院選挙で消費増税延期の信を問うことにする。

 アベノミクスに陰りが見え始めたその頃から、安倍総理は新党大地の鈴木宗男氏に急接近し、北方領土問題を解散の大義にするため動き始める。狙いは今年の参議院選挙を衆参ダブルにするためである。外交を解散の大義に据えることにしたのだ。

 そして今年の初め、フーテンが何度も書いたように安倍総理は解散に並々ならぬ意欲を示す会見を行った。ところがそこから安倍外交の歯車が狂い始める。ロシアのプーチン大統領は日米安保条約を理由に返還に後ろ向きになり、安保条約がもたらす例として沖縄の米軍基地問題を挙げた。

 実は安倍総理には前回の16年にダブル選挙をやろうとして、一時的に辺野古の埋め立てを中断したことがある。するとすぐさま米国のオバマ大統領から強い批判を浴び、それ以来、埋め立てには強硬姿勢を取らざるを得なくなった。

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「フーテン老人は定職を持たず、組織に縛られない自由人。しかし社会の裏表を取材した長い経験があります。世の中には支配する者とされる者とがおり、支配の手段は情報操作による世論誘導です。権力を取材すればするほどメディアは情報操作に操られ、メディアには日々洗脳情報が流れます。その嘘を見抜いてみんなでこの国を学び直す。そこから世直しが始まる。それがフーテン老人の願いで、これはその実録ドキュメントです」

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1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。89年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■「田中塾のお知らせ」12月17日(火)19時~21時 場所:東京都大田区上池台1-21-5スナック「兎」(03-3727-2806) 東急池上線長原駅から徒歩5分■参加費:1500円 ■申込先:agoto@K6.dion.ne.jpに住所氏名明記で

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