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受信料を取る資格のないNHKの国連総会フェイクニュース

田中良紹ジャーナリスト

フーテン老人世直し録(327)

長月某日

 安倍総理の国連総会一般討論演説でNHKニュースはとんでもない印象操作を行った。前日のトランプ米大統領の演説を前に抗議の退場をした北朝鮮大使が安倍総理の演説には熱心に耳を傾けたかのようなニュースを伝えたのである。

 NHKはトランプ演説の前に退場する北朝鮮大使の姿を流した後に、北朝鮮代表団席でメモを取る男の映像を流し、前日は退席した北朝鮮大使も耳を傾けたとコメントした。しかしメモを取る男は北朝鮮大使ではなく記録係と思われ、それも一人しかおらずに周囲はガラガラの空席状態だった。

 前日のトランプ演説をフーテンは生中継で見たが、それが歴代大統領と比べてどれほど程度が低いかは前回のブログに書いた。演説後にCNNのニュースコメンテーターたちはトランプ演説が「ダークサイド」であったと口をそろえた。

 映画「スターウォーズ」を観た方はご存知と思うが、宇宙のエネルギー(フォース)には光(ライト)と暗黒(ダーク)の面(サイド)があり、恐れや怒り、憎しみ、攻撃性という暗い感情から力を引き出すことを「ダークサイド」と言い、冷静で穏やかに心を開いて力を得ることを「ライトサイド」という。

 トランプ演説は北朝鮮に対する恐れ、怒り、憎しみ、攻撃性に彩られ確かに「ダーク」であった。それを聞いている側の映像も放送されたが北朝鮮代表団の席に大使ではないが官僚と思しき複数の男がいて周囲は満席状態だった。議場がガラガラの安倍総理演説とは対照的だった。

 国際社会は誰も安倍総理演説に関心を持たなかったことが一目瞭然だ。トランプ大統領の「使い走り」に過ぎないことを知っているから当然なのだが、それをカバーしようとしたのか、NHKは北朝鮮大使が会場から去る1日前の映像と安倍総理演説のメモを取る記録係をつなぎ合わせ、あたかも安倍総理の演説に関心が寄せられていたかのような印象操作を行ったのである。

 折から衆議院解散が決定的となり事実上の選挙戦がスタートしているさなかである。選挙を意識するがゆえに安倍総理は国民に北朝鮮に対する憎悪を煽り、2年前に成立させた安保法制を正当化しようとしている。そのためには国連総会での活躍を国民に印象づけたかった。

 従ってこのフェイク(騙し)は政府与党を有利にするための印象操作と考えざるを得ない。NHKは極めて悪質な編集を行い選挙に影響を及ぼそうとした。それが公共放送を名乗り国民から受信料を徴収して良いものだろうか。日本の国家構造の中で最も闇の部分と思われるNHKの実態を再度指摘しておく。

 03年に米国が国連に嘘の報告を行いイラクに先制攻撃を仕掛けた時、真っ先に賛同したのは英国のブレア政権と日本の小泉政権だった。しかし「大量破壊兵器がイラクにある」という戦争の大義が嘘であることはすぐに明らかになる。この時、英国の公共放送BBCは徹底的にブレア政権を批判、ついに任期途中でブレア首相を退陣させた。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■「田中塾@兎」のお知らせ 日時:4月28日(日)16時から17時半。場所:東京都大田区上池台1丁目のスナック「兎」(03-3727-2806)池上線長原駅から徒歩5分。会費:1500円。お申し込みはmaruyamase@securo-japan.com。

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