自らの非を他人の非にする改造では国民の不信を拭えない
フーテン老人世直し録(318)
葉月某日
内閣改造に対するマスコミ各社の世論調査が出揃った。最も評価が高かったのは共同通信で支持率が44.4%と8.6ポイント上昇し、不支持率43.2%をわずかに上回った。
しかしそれ以外に支持が不支持を上回った例はなく、読売や日経など安倍政権に好意的なメディアでも6ポイント、朝日や毎日では12ポイントの差で不支持が支持を上回った。
要するに内閣改造を見た後、安倍政権に「やめてほしい」と思う国民が「続けてほしい」と思う国民を上回り、1社だけがほぼ互角という結果が出たのである。
そしてどの調査でも、支持する理由は「ほかの内閣よりよさそう」がダントツの1位で、代わりが見つからないという消極的な理由であるのに対し、不支持の理由の1位は「人柄が信用できない」である。
つまり安倍総理とその閣僚らが国民に嘘をついて騙そうとしていると思わせたところから支持率は急落し、そのダメージを回復するのに内閣改造を行って安倍総理以外の閣僚を交代させただけでは不信感は解消されないということだ。
国民の不信を解消するには安倍総理が自身の責任を取って辞任するか、あるいは安倍総理がこれまでの嘘を改めて出直しを図るしかないとフーテンは思う。しかし安倍総理とその周辺は少し耐えしのげば国民は忘れると思っているようだ。
そこで支持率急落の原因を安倍総理の嘘とは考えず、問題を「安倍総理の驕り」より「自民党全体の驕り」にすり替え、民主党政権から政権を奪い取った初心に戻れば支持率は回復すると考えた。
「憲法改正」を引っ込めて「安倍らしさ」を薄め、これまでの選挙で散々使った「アベノミクス」のニンジン効果に頼る「経済優先」を前面に出すことにした。しかしこの期に及んで柳の下にどぜうは何匹いるのだろうか。フーテンには「藁をもつかむ話」に思える。
「アベノミクス」のスタートダッシュは華々しかった。黒田日銀総裁は「2年後に2%の物価上昇を達成しデフレから脱却する」と宣言し異次元の金融緩和を行った。それが海外投資家に好感され株高となって国民を目くらましにする。
それから4年、2%の物価目標は一向に達成されず、黒田総裁は先月6回目の達成延期を発表し、自分の任期中には目標に到達できないことを明らかにした。もはや誰も日銀の金融政策を信用する気になれない。
フーテンは4年前から「アベノミクス」は馬の鼻先にぶら下げられたニンジンだと主張してきた。馬はニンジンにつられて走らされるがいつまでたっても食べることは出来ない。それに気づかない馬はエネルギーを消耗させられ倒れて死ぬのである。
安倍総理とその周辺にとってとにかく馬は走ってさえいれば良い。倒れた先のことなど考えない。ところがそのうちにニンジン効果がおかしいと気づいて「異次元緩和」というニンジンに加え「一億総活躍」という別のニンジンをぶら下げた。
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