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安倍総理こそ日本を代表する「平和ボケ」

田中良紹ジャーナリスト

フーテン老人世直し録(296)

卯月某日

13日、米軍がアフガニスタン東部に潜伏するIS(イスラム国)に対し、トンネル施設を標的に大規模爆風爆弾GBU43Bを投下し、アフガニスタン国防省はISの戦闘員とみられる36人が死亡したと発表した。

大規模爆風爆弾は核兵器以外の通常兵器の中で最大の破壊力を持つと言われ、イラク戦争時に開発されたが実戦に使われたのはこれが初めてだ。実験では爆発後に原爆と同じキノコ雲が確認されたという。

米国のトランプ大統領はこの作戦を「成功」と言ったが、アフガニスタンのカルザイ元大統領はツイッターで、「これはテロとの戦いではない。新しい危険な兵器の実験場として我が国を悪用した非人間的で最も残酷な行為」と非難した。

2001年の9・11後に米国は、オサマ・ビン・ラディン引き渡しを求めてアフガニスタンのタリバン政権と戦争を始め、その時も新型兵器を次々に投入して米国製兵器ショーを見せつけ親米政権を誕生させたが、しかし16年後の今も米国はアフガニスタンを制圧できていない。

だから米国に協力しタリバン政権を打倒して大統領に就任したカルザイ氏のトランプ批判には重みがある。何が「成功」なのかをトランプ大統領は分かっていない。強力な新型兵器を見せつけることに「成功」しても、それが軍事的成功を意味するわけではないからだ。

ところが日本には米国の新型兵器に目を奪われ、米国の軍事技術力に圧倒され、米国が後ろ盾になれば日本は安全だと考える妙な「信仰」がある。これは平和憲法を守っていれば日本は平和でいられると考える「信仰」と全く同じで、これを「平和ボケ」と言う。

特に米軍の最強爆弾投下は北朝鮮をけん制するのが目的で、米軍がその気になれば北朝鮮を軍事力で制圧できるかのようなメディア報道を見ると「平和ボケ」もここに極まれりと思う。米国が最強爆弾で威嚇すれば北朝鮮はそうはさせない軍事戦略を考えるだけの話である。力の競争には限りがない。

現にアフガニスタンに投下した爆弾を米軍は「すべての爆弾の母親」と呼んで史上最強と言うが、ロシアにはこれに対抗して「すべての爆弾の父親」と名付けた爆弾がある。米国の大規模爆風爆弾の4倍の威力を有すると言われる。北朝鮮はもっと安上がりな核戦力に磨きをかけることになる。

戦争は軍事力ではない。知恵の勝負である。そして困ったことだが軍事力を盲信する国には知恵を軽視する傾向がある。その結果、戦争に勝てない。勝てないとますます軍事力に頼りその強化のため知恵に力が向かわなくなる。それが今の米国だとフーテンは思っている。

しかし米国が日本と違うのは少なくも「平和ボケ」はしていない。日本と違って常に戦争をし続けるところに国益を見出しているから「平和ボケ」する暇がない。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■「田中塾@兎」のお知らせ 日時:4月28日(日)16時から17時半。場所:東京都大田区上池台1丁目のスナック「兎」(03-3727-2806)池上線長原駅から徒歩5分。会費:1500円。お申し込みはmaruyamase@securo-japan.com。

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