首脳会談を前に「優しく愛して、お願いトランプ」が日本を覆う異常
フーテン老人世直し録(280)
如月某日
メディアには週末の日米首脳会談に向けたカウントダウン報道があふれている。経済で押し込まれることはないか。安全保障面は大丈夫か。そうした心配が論じられている。
トランプ大統領が選挙中に日本の自動車メーカーを槍玉にあげ、また米軍駐留経費の負担増を言ったことで、まるで「冷たくしちゃイヤ、優しく愛して、お願いトランプ」の雰囲気が日本を覆っている。
先週のマティス国防長官の初来日も、7日のティラーソン国務長官と岸田外務大臣との初の電話会談も、米国が尖閣諸島を日米安保条約第5条の「適用範囲」と言ってくれるかどうかだけに注目が集まり、「言ってもらえた」と安堵の胸をなでおろしている。米国が「適用範囲」と言うのは当たり前で胸をなでおろす話ではないのにこの有様である。
そんな態度では「交渉術」を自慢するトランプ大統領をつけあがらせるだけだとフーテンは思う。さらにトランプの後ろにキッシンジャー元国務長官が「指南役」としているならなおさらだ。
フーテンの見るところキッシンジャーは日本人嫌いである。嫌いというよりバカにしている。バカにしているから日本人には本心を隠してリップサービスをする。しかし日本人以外には「日本人ってバカだよねー」と言っている。ところが日本人はキッシンジャーを妙にありがたがって「日本向け」のご高説を拝聴する。
例えばキッシンジャーは中国の周恩来との秘密会談で「中国人には我々と同じ戦略性があるが、日本人には戦略性がない。日米安保条約は日本を暴発させないためのビンの蓋だ」と言った。つまり安保条約で米国は日本を自立させないようにするから中国にとっても利益になるという意味である。
またキッシンジャーは「日本人は分かり切ったことをやるのに15年もかかる」と言った。ペリー来航で開国するしかないのにすったもんだして明治維新まで15年もかかった。戦争に敗けて西側陣営に付くしかないのに60年安保まで15年も右往左往した。だから冷戦後の世界にもすぐ対応できないし、何をするにも時間がかかる。キッシンジャーはそう考えている。
一方のトランプ大統領も『トランプ自伝』(早川書房)を読めば、日本人を好きではない。まず商売相手としてやりにくい。必ず大勢でやって来てその全員を納得させなければならず、それがなかなか難しい。しかも真面目一方で交渉しても楽しくない。
ただ日本人は金を持っている。その金はアメリカを圧迫して貯め込んだ金で、これまでの米国の政治指導者は日本の貿易政策にうまく対処できなかったとトランプは考えている。そう考える人間だから自分が大統領になれば日本が米国から吸い上げた金を取り戻すのを自分の仕事と考えるのは不思議でない。
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