「オフロードパス」でつづける校内居場所カフェ

■約50の高校で

昨日10月20日、大阪で「居場所カフェが教育を変えていく@大阪」というシンポジウムが行なわれ、僕もそこに参加した。

これはこの8月に東京・日本大学で行なわれた「居場所カフェが教育を変えていく@日大」の大阪版で、最初の東京版については当欄でも紹介している(若い支援者たちのパレーシア~高校生支援の臨床哲学)。

今回も、その8月のシンポジウムとほぼ同じ構成で開かれ、東京からも関係者が4名も参加した。

在阪テレビ局ではあるが、大阪ではよく知られたテレビ番組の取材チームが取材に訪れ、相変わらずの社会的注目の高さを伺わせている。ほかにこの数ヶ月でも、朝日新聞の特集学校内に「居場所カフェ」 ゆるく、じわっと広がるをはじめとして、東京新聞や神奈川新聞にも校内居場所カフェは大きくとりあげられている。

また、校内居場所カフェに関する書籍も出版されている(学校に居場所カフェをつくろう! ──生きづらさを抱える高校生への寄り添い型支援)。

当欄でも実は5年も前からこの校内居場所カフェをとりあげつづけている(「となりカフェ」(高校生居場所カフェ)がテレビドキュメンタリーに!!~動き始めたハイティーン支援)。当時はまだ一部に知られた試みであったが、全国的にも約50の高校で同取り組みが行なわれるようになり、今年は新しい段階に突入しているのだろう。

■「サードプレイスがセカンドプレイスの中にある」

前回のレポートでも触れたように、今回の「現場トーク」でも、3人の女性スタッフが時に涙ぐみながらも現場のリアルを鮮やかに伝えたほか、今回は校内居場所カフェの「元祖」である西成高校「となりカフェ」のはじまりのエピソードも重点的に語られる内容となった。

ただ、となりカフェを人々は語りながら、横浜のNPO「パノラマ」代表・石井正宏さんが語る、神奈川県立田奈高校「ぴっかりカフェ」やその他の居場所カフェの様子も人々はおそらくイメージしながら、聞き、語っていたと思う。

遠方からの参加も含めた聴衆の方々も、スクリーンに映し出される動画や映像をともに見ながら、となりカフェから始まり今も続き未来へと広がりつつある、この「校内居場所カフェ」という動きそのものに囚われていたように僕には思えた。

全国に猛スピードで広がった子ども食堂とは違い、高校という生徒にとってはセカンドプレイス(大人にとってのそれは職場)内に「サードプレイス」をあえて設置するというこの校内居場所カフェは、熱意だけでは開始することはできない。

高校内の管理職の熱望、教員たちの受け入れ、NPOのミッション、NPO代表の熱意、そのスタッフの柔軟さ等をもとに、偶然の出会いや地道な話し合いの積み重ねを通じて、それはやっとのことで始めることができる。

このサードプレイスは、あえて「サードプレイスがセカンドプレイスの中にある」(山田西成高校校長)ことを狙う。

生徒にとって、さまざまな葛藤を抱える学校生活のなかにあって初めて有効に機能するサードプレイス、それこそが校内居場所カフェだ。

■オフロードパス

となりカフェは今年でもう8年目を迎えている。8年続けることは容易ではなく、僕はそのことを当欄で生徒の高い「経験値」をリスペクトし、支援者たちが10年「ローグワン」していくという記事にまとめたことがある。

デススターの設計図を遠く離れたレイア姫に届けるために多くの人々がその設計図をつなげていったあの「スターウォーズ ローグワン」のように、校内居場所カフェというサードプレイスのエッセンスを続けるために、何人ものスタッフがバトンタッチしていくこのムーブメントをその記事では描いた。

そうした一校内での動きと同時に、大阪や横浜や東京の人々が、今の高校を「カラフルに」染めあげるために(日大・末冨芳教授)、時空を連結させて校内居場所カフェというコンセプトと実践を「パス」し続けている。

ローグワンはあるひとつの高校内での動きだが、この「パス」はもっと面のようにゆっくりと全国に広がっていっている。

それはまるで、あのラグビーの「オフロードパス」のように、チームの全員が、ラグビーボールという個性あるかたちのものを大事に抱え広いグラウンドを前進していく動きだ。

あるひとつの流れの人々が倒れても、倒れたと同時に、そばを走る別の流れにそれは引き渡される。あのラグビーWカップのスコットランド戦で見せた日本代表のオフロードパスのように、ある流れが途切れそうになると(となりカフェでいうと大阪府青少年課の委託事業が終わった3年前)次のアイデアと実践が続く(その後、自主事業内で「モーニングとなりカフェ」が始まった朝の高校に「サードプレイス」はある~西成高校「モーニングとなりカフェ」スタート!)。

たとえば横浜やその他においても、石井さんと僕は校内居場所カフェについて語り続けている(「第1回神奈川・高校内居場所カフェサミット」の開催!ほか)。

ゆっくりとした速度ではあるが全国に50ほどの高校でトライされ続けている校内居場所カフェは、それぞれの高校の内部でローグワンし、それぞれの点が面のようにつながってオフロードパスしていっている。

決して急ぐ必要はないが、この動きは教育界の変革とともに走り、やがては流れの中心のひとつになっているかもしれない。

となりカフェの丸テーブル
となりカフェの丸テーブル