勝ち組だけが育休をとる~高齢ひきこもりの「専業主フ化」を邪魔するもの

■「育休」議論に乗ることができるのは「勝ち組」

小泉進次郎氏がやっと大臣になったが、それと同時に彼が主張していた「大臣になっても育休を」がずいぶん話題になっている。それは、賛成にしろ反対にしろ、かなり否定的に論じられているようだ(小泉進次郎の育休「待った」意見に国民から総バッシング!)。

ここは小泉氏を論じる場ではないのでその議論の中身はスルーするが、やはりポイントは、「育休」議論に乗ることができるのは、ある種の「勝ち組」だということだろう。

それは、政治家だろうが大企業サラリーマンだろうがNPO代表だろうが変わりない。育休をとるかとらないかという選択ができる立場は、そもそも育休が標準的にそのシステムに備わっていることが条件になる。

NPOなどは未整備かもしれないが、代表が育休をとることで組織全体に波及していくという効果もある。

いずれにしろ育休が選択の一つとしてありそれを受け入れるとか受け入れないとかで悩むことができるのは、ある種「選ばれた人たち」だということだ。

育休などそもそも選択外にある人々は、非正規雇用、小企業や小規模事業者等、非常に不安定な立場にいる方々だ。それらの人々は、大雑把ではあるが、労働人口6700万の4~6割だと推定できる(非正規雇用4割ブラスアルファ)。

■アンダークラスの男たちは育休男たちを密かにバカにする

そんな人達は育休云々の外にいる。そんな議論に加わる余裕はなく、従来の性的役割分担にあまり疑問を感じない。それはそうだろう、従来の古典的男性ジェンダー(男は仕事)を少しはみ出る男性の育休取得的可能性を考え始めると、日常生活が混乱する。

だから、そうした古典的男性ジェンダーの人々は、小泉大臣が提唱して微妙に「フルボッコ」された育休議論にピンときていないと思う。大臣になったのだから、単純に男らしく仕事しなよという感じだ。

このように、半分程度の男性ジェンダーたちが従来の「オトコ」を標榜し、育休的可能性を封じる。

一方で、育休的男性ジェンダーを少しだけ揺るがす男たちは、大多数が社会的には「勝ち組」だ。

勝ち組のオトコたちには悪いけれども、彼らの語り方や見方はどうしても上から目線になる。そんな上から目線の男たちが、当たり前のように育休を語っても、それは下流社会/アンダークラスにいる古典的男性ジェンダーたちにはまったく伝わらない。

余裕があるから育休なんて言えるんだろ、汗も流さず上からカッコいいことばかり言うなよな、まあ言っても仕方ないから遮断しよう、という感じでアンダークラスの男たちは育休男たちを密かにバカにする。

■勝ち組の暴力性

前回や前々回で述べたように(もう「就労」はやめて、「専業主フ」かボランテイアでいいだろう?働かないことを「悪」とするのは、就労支援者だ)、高齢ひきこもり脱出の一つの解は「専業主フ」化だと僕は思う。

専業主婦が550万人いるとして(日本の人口、1億2730万人の内訳)、その何割かには就労圧力がかかっている。中流家庭で夫の稼ぎがある程度あったとしても、毎月のキャッシュが足りないものは足りない。だからなくなくパートに出ようという現在専業主婦の方は多くはないが少なくもないだろう。

だから、550万人の専業主婦は減っていくはずだ。

何十万人減るかはわからないものの、日本の階級社会化がさらに加速すると、「働かなくていい妻」の存在は非現実的になる。専業主婦の割合が減るのは目に見えている。

その減った分を、高齢ひきこもりたちが専業主フとして穴埋めするというのが僕の提案だ。労働の新しい配置としてなんら問題はなく、現在は夫の収入により専業主婦化できている一定数が、親の年金によって専業主フ化する層に入れ替わるのは、社会全体としてはあり得ることだと僕は思う。

そうした社会構造の転換を邪魔するものとしては、旧来の世代的役割規範(若者は働かなければいけない)に加えて、性別役割規範(オトコは働かなければいけない)や社会階級的断絶(「勝ち組」だけが性的役割を乗り越えることができる)などが存在する。

そもそも、オトコの育休は勝ち組がとる。そこには、下流層からのルサンチマンが浴びせかけられ、その階級対立は残念ながらさらに固定化してしまう。その固定化が、高齢ひきこもりの専業主フ化を阻止する。現在の男性ジェンダー優位社会が専業主婦以外の専業主フを否定し、その「勝ち組の象徴」である育休議論により、性的役割分担社会を固定している。

育休をとれる勝ち組は、その存在により、高齢ひきこもりの専業主フ化を阻止してしまう。勝ち組が意図せずとも、社会の役割分担を彼らはその存在により固定する。

そこが勝ち組の暴力性であり、高齢ひきこもりの専業主フ化を阻む要素の一つでもある。

ここでも勝ち組は邪魔なのだ。