■非営利、政治、NPO

98年のNPO法設立以前より、いわゆる市民活動/運動としてNPO的人々は存在した。NPOは特定非営利活動法人の訳だと思われているが正確ではなく、Not-for-Profit Organization「非営利組織」全般を指す。この言葉は、非営利的に動くさまざまな組織を指している。

「非営利」は狭義においては、「解散時に資産を持たない」「メインの活動のみを行ない資産活用等は行なわない」等になるだろうが、広義においては「金儲けにガツガツせず、内部留保に邁進しない」程度でもいいのでは、と僕は思う。

そのように非営利はあいまいな概念なのだが、NPOの活動領域が福祉・教育・保育・環境など、あまり金儲けにならない分野が中心のため、最近はNPOの不正事件が時々報じられるものの、市民活動/運動の延長としてそれはいまだに位置づけられていると推測する。

そうなると、政治的なポジションとしては、どちらかという権力の中心から遠い、野党寄りということになり、現実の政党のなかでは、最大野党である民進党支持が中心と捉えられているだろう。

現実に民主党が政権をとった数年間、NPOのもつ野党イメージとそれまで野党だった民主党のイメージは自然につながり、多くのNPO関係者が与党だった民主党の政策に深く関わっていった。

■フリースクール、こども保険

が、保守政党の自民党が政権を取り戻し、リベラル色がいったん薄くなった時以降も、NPOは与党を劇的に離れることはなかった。

それはたとえば「不登校」支援政策にも反映され、不登校支援の代表的NPOは、自民党政権に戻ったあとも協力体制を続けている。

それは念願の「教育機会確保法案」につながったものの、以前よりフリースクールが目指してきた学校外施設の承認からは程遠いものになった(「不登校対策 不十分」 関連法案 賛否の中、衆院委通過)。

が、同法成立を「はじめの一歩」として位置づけ、各フリースクールが願う公教育の拡大(学校外の単位認定)を目指して、引き続き与党サイドと交渉していくのだろう。

また最近の与党はリベラル政策も含めた幅広いサイドに立っている。それは「参与」政治とも呼ばれ、首相が抱いているであろう超保守的政治思想とは別レベルで、金融政策から教育政策まで国民受けするものを積極的に採用する。

自民党は人材も多様で、たとえば人気の小泉進次郎氏らが中心となり「こども保険」なども提唱する。

こども保険については当欄でも以前とりあげ(こども保険の「心地よさ」~責任と正義を超える笑顔と身体の躍動、「守ってあげたい」)、この保険の背景を「責任」ではなく「快」のレベルで哲学的に考えてみた。

■アドボカシーを貫徹するために

こども保険については、NPOフローレンス代表の駒崎弘樹氏も、小泉氏らとのこの対談ではポジティブにとりあげている(こども保険 少子化無策だと社会保障システムは崩壊 小泉進次郎・村井英樹議員インタビュー(上)教育無償化や待機児童問題解消の実現を目指す)。

財源がどうであれ、少子社会の日本においては、「子どもに投資する」社会を目指す必要があることは誰も異論がない。

が現実は、シルバーデモクラシーが跋扈し、現実の投票行動やそれを求めるための与党の政策は、シルバー寄りのものとなる。このシルバーデモクラシーについては、僕も当欄で論じてみた(狂い咲きシルバーロード~美しく醜いシルバーデモクラシー)。

小泉氏らの構想では、待機児童解消もこども保険が財源になる。政策の大元の議論は与党ペースになり、アドボカシー(NPO事業対象者の声の「代弁」と、それに基づくミッションの現実化)の標的の王道はここになるため、駒崎氏の動きはNPOの原理的にも仕方がない。

ポイントは、アドボカシーを貫徹するにはこのように権力サイドにNPOは立ってしまうということだ。

この点において従来の市民運動とは一線を画し、与党党首が思想的には懐古主義・急進的右派だとしても、政権全体としてNPOのミッションに叶う方向に走っているとすれば、党首の思想や経済政策の新自由主義等はスルーする。

本音では多くのNPOは、与党の懐古主義は気になっているのだと想像するが、目の前にいる当事者(不登校の子どもや待機児童・保護者等)を支援するために、与党の思想的部分は見てみないふりをする。

■NPOは市民運動とは違う

また、日本の政治は現実には官僚が動かしていることから(これは国政も地方自治体も同じ)、政治レベルあるいは「立法」の手続きレベルで現れる政治家とはそれほど深く関わる必要も原理的にはない。

日本の政治構造は、司法が最強のアメリカとは反対で、官僚による行政が最強、次に立法が来て最弱が司法であるとはよく言われることだ。

NPOは、日本の官僚組織と与党にアドボカシーしていくことが、そのミッションを貫徹するためには現実的だ。

NPOは市民運動とは違う。また、野党と強いつながりを維持すると、ミッションの現実化が遠くなる。これはNPOにとってメリットがない。

NPOはミッション貫徹のために「与党化」する。アドボカシーのために権力サイドに立つ必要があるのだ。

この構造を、代表的NPOが明言すべきだ。ソーシャルセクターが自らのミッションに誠実になるとは、「与党化する」ということを。★