小田原は、2017年の「池袋ウエストゲートパーク」か

■窪塚洋介と『池袋ウエストゲートパーク』

さっき自分のFacebookタイムラインを流し読みしていると、懐かしのドラマ『池袋ウエストゲートパーク』放映から17年たったという記事が紹介されていた(「池袋ウエストゲートパーク」の最強出演陣 いまやエンタメ界をけん引)。17年とは中途半端だが、どうやらあのドラマに出演していた俳優陣(窪塚洋介や妻夫木聡等)が、いまでは最強の俳優たちになっているかららしい。

窪塚が、映画『沈黙』で好演していることも大きいだろう。

山一證券倒産などを経て日本社会が本格的にグローバル化し始めてはいたが、『池袋ウエストゲートパーク』放映時の00年はまだ日本社会は「階層社会」とはなっていなかった。

リーマンショックもまだで、少子高齢化社会がやってくると盛んにメディアが騒いでいた時期ではあるが、社会はまだのんびりしていた。

そんな雰囲気のなか、池袋で、いまでいうマイルドヤンキーたち(あの頃は「チーム」という言葉がまだ残っていたかな)がブイブイ飛ばすこのドラマは僕にも新鮮だった。

特に窪塚(キング)の存在は圧倒的で、その後たいへんな事故を乗り越えラッパーとなり『沈黙』に至る彼を見ていると、なんとなくしみじみする。加藤あいや森下洋子もよかった。

だがやはり、00年は総中流社会の最後の最後の頃で、池袋の騒ぎは、マイナーな人々の騒ぎだった。下流層が5,000万人程度存在し(40%が非正規雇用で)、6人に1人が相対的貧困状態で、200万人以上が生活保護という2017年のいま、「池袋ウエストゲートパーク」は大都市の周縁に必ず存在する。

そして、窪塚的カリスマは存在せず、逆に軟弱なマイルドヤンキーばかりが増殖して、近くの公園でたむろしたり家でスマホゲームしたりする。

■「チーム」で盛り上がる必要はない

そんな感慨に浸りながら続けてFacebookタイムラインを見ていると、例の小田原市の「生活保護不正受給阻止ジャンパー」問題の続報が流れていた(ジャンパー以外にワイシャツやマグカップも 不適切と小田原市)。

どうやらオリジナルロゴ(「HOGONAMENNA 保護なめんな」、SHAT〈「生活」「保護」「悪撲滅」「チーム」〉等)入りジャンパーだけではなく、オリジナルTシャツやオリジナルワイシャツもつくって着用していたらしい。マグカップやボールペンもあるとか。

このロゴのセンスはなんとなく昭和で格好悪いがマンガ的でもあり、それこそ「チーム」感は出ている。

これを、人権軽視という点から問題視するのは、一種の教条的ポリティカル・コレクトネスであり、少し過剰かなと僕は思う。だから、小田原市が懸命に事態の収束を図ろうとするその有り様は、僕はだいぶシラケる。

それよりも、生活保護担当者たちが、不正受給撲滅にこれほど(変なロゴグッズづくり)の情熱を捧げるモチベーションに僕は興味がある。

生活保護的「最後のセーフティーネット」的システムは、必ず不正受給する人々が現れてしまう。その完全撲滅はおそらく防ぎようがなく、不正率の減少政策も含んでのこうしたセーフティーネット・システムだと僕は思うのだ。ジャンパーやマグカップをつくって「チーム不正阻止」を別につくらなくても、担当者による地道な発見と支給停止を行ない、年度はじめの総会などで地味にその減少率を報告する類の分野だ。

それを倫理的に追求し「悪撲滅」と盛り上がらなくとも、人間が存在する以上起こってしまう出来事の一種だと僕は思う。思春期にある子どもたちの一定割合が「万引き」してしまうようなものだ。それ自体は悪ではあるが、人間が群れとして存在する時、必ず現れる出来事であり、行政システムとしてはそうした「悪」も込でシステムづくりする必要がある。

「チーム」になって盛り上がる必要はない。

■4人に1人が生活保護受給というエリア

この「チーム」と、池袋ウエストゲートパークのチームたちを僕は比べているのではなく、生活保護不正阻止でこれだけ盛り上がる地域は、逆に言うと、生活保護というあり方が目立つ地域であり、その不正に行政が特別に着目せざるをえないほどまだ市内に拡大していないのではということなのではないか。

つまりはリーマンショック以前、『池袋ウエストゲートパーク』の頃のようなまだ社会が完全に階層化されていない雰囲気を小田原市は残しているのだろうかということだ。

そこまで調べる気力は今日の僕にはないけれども、生活保護という有り様が珍しい地域なのであれば、このグッズづくりと「チーム」化の盛り上がりはわからないでもない。

大阪市の某区の4人に1人が生活保護受給というエリアで仕事(高校内居場所カフェ等)をする僕とすれば、今回のジャンパー事件は牧歌的出来事でもある。

オリジナルロゴグッズと「チーム」化で盛り上がるほど不正受給を憎むエリアがある一方で、4人に1人が生活保護でありある意味「不正」は制度の一部だとおおらかに受け止めてしまうエリアも現代の日本には混在するようだ。

こうでも考えないと、大の大人が、それも行政人たちが、SHATなどで子どもっぽい盛り上がりができる理由が僕にはわからない。★