貧困ハイティーン女子にコンドームを

■ハイティーン女子にコンドームを贈る

この前僕は、某貧困ハイティーン女子にコンドームをプレゼントした。

その少し前は、スタッフを通じて貧困ハイティーン男子にコンドームを贈るようお願いした。いずれも、計画的な妊娠・出産を10代の若者たちに意識してもらうためのささやかな実践だ。

現実は、性欲でギラギラ燃え盛り、同時に、おしなべて「避妊倫理」のようなものが著しく低いハイティーン男子にそれを期待するのは現実的ではない。

また、いわゆる「教育困難校」において僕が出会ってきたハイティーンのなかには、「軽度の知的障害」(その原因としては乳幼児期の「広義の児童虐待」〜親たちからすると「日常」である養育環境のルーズさや暴言が飛び交う夫婦の会話等〜がある)をもつ生徒がいる。

そうしたハイティーンたちは杉山登志郎医師の言う「第四の発達障害」の状態にあり、「避妊」という仕組みそのものが理解しにくい。

つまり、精子の発射をコンドーム内に押し留めることが「妊娠の制御」であるということと簡単に結びつかない。

妊娠システムのあり方を学んだことがないのか、学んだとしても、言葉や簡単なイラストや教師のまどろっこしい説明だけではイメージしにくいのかもしれない。

だから、コンドームの意味がわからない。意味がわからなければ、ギラギラ10代男子にとってはあれほどめんどくさいものはなく、「これから」という時に装着することが望ましいコンドームはすっ飛ばしたい。

そうした男子たちに避妊作業を期待するのはかなり徒労で、やはり結論としては「自分の身は自分で守る」ために、妊娠可能性当事者である、ハイティーン女子に避妊の意味を説明しコンドームを直接手渡すことが手っ取り早い。

■「ニート若者」でもある祖父祖母

すべての貧困ハイティーンカップルが望まない妊娠をし、すべて児童虐待につながるかというと、そんなことはない。だがそれらカップルたちは男子も女子も、往々にして親との関係が悪く、虐待の加害者・被害者関係であることも珍しくないため、中流家庭にあるような祖母・祖父による育児支援は臨めない場合がある。

また、それら虐待加害者である祖父祖母たち(といっても40才手前の人もおり、労働行政的にはそれら祖父祖母は「若者」だったりする→ニートの定義は39才まで)にしても曽祖父曾祖母(といっても60才程度で若いが)から虐待を受けており軽度の知的障害を持っていたりする。

そもそも貧困家庭においては、男親系・女親系はわかりやすいかたちでストレートにつながっておらず、40才の祖母(ハイティーン女子が生むであろう赤ちゃんから見て)が数人子どもをつくっていたとしてもそれら子どもたちの父親がすべて異なっていたりする。

G.マルケスの『百年の孤独』の世界は、わざわざコロンビアのマコンド村に行かなくても、大阪や東京や神奈川の大都市にある。

現在は、そうした「マコンド村」が拡大しており、相対的貧困層2,000万人に加え全部で5,000万人程度の下流層が形成され(ピケティが示唆する4割下流はだいたい5,000万人くらいになる)。そのなかの何%かはわからないものの上に書いたような虐待の連鎖の時間にいる。

■「最大の弱者」は赤ちゃん

もちろん、貧困ハイティーン女子や男子が全員児童虐待をするわけではない。だが、無意識的困難環境(粗雑な家庭環境や夫婦間の暴言等は、広義のネグレクトや心理的虐待になる)は知らぬ間に家のなかにつくられていくし、「突発的暴力」(かっとしてモノを投げる等)は、容易にやってくる。

ふだんは善き親だったとしても、突発的にやってくる衝動性は止めることはできない。

その可能性をもつ人々が、僕が観察する範囲では、残念ながら貧困で虐待被害者のハイティーン層に多いように見える。

赤ちゃんがこの世界にやってきた時、「最大の弱者」は当然その赤ちゃんになる。赤ちゃんを暴力から守ることが、赤ちゃんの存在を知った周囲の大人たち・専門家たちの最大課題となる。

赤ちゃんに対して暴力が振るわれる環境が待っていると想像される場合、その暴力確率性が下がるまでは(育児環境が整うまでは)できるだけ妊娠・出産は送らせたほうがいいほうが現実的だろう。

だから僕は、コンドームを貧困ハイティーン女子にプレゼントする。パッケージを開けてしまうと、それを見た彼氏が「別の男」の存在を疑うかもしれないので、空けないままその使用法を細かくレクチャーする。

女子たちは使用法は知っていることは多いもののなんとなく他人事だ。けれども、僕がユーモアを交えつつ避妊の意味を熱心に説明すると、徐々にその顔は真剣になる。

■「変な大人」によるアドバイス

こんな場合、僕のような「変な大人」によるアドバイスは有効だ。既存の価値観からだいぶズレつつ「クライアントの利益の最優先(ソーシャルワークの重要理念)」を守る変な大人は、困難環境にある若者たちから多少は信頼される(変な大人については、僕のこの過去ブログ等参照癒しのパンダ~究極の「変な大人」)。

10代男子の欲望のリアリティーを説明し、仮に妊娠した場合「ドーナツトーク(僕の事務所)と知り合ったからにはソーシャルワークの網の目に必ず乗せる(専門家集団がかかわる)」ことを説明する。

つまり、10代にとってはうっとおしい専門家集団が押し寄せるということだ。

こうして細かく説明すると、ハイティーン女子の顔は真剣になるが、どこかでうれしいんだろうと信じてはいる。★