義務教育に「となりカフェ」を〜教育機会確保法が成立

■教育機会確保法の成立

不登校の児童・生徒への支援の強化を明記した「教育機会確保法」が12月7日成立した(不登校児童生徒の支援強化=教育機会確保法が成立)。残念ながらフリースクールへの通所行動自体は義務教育には認められなかったが、長年の関係者の要望の入り口にようやく立てたことから、僕も感慨深い。

しかし、当欄でも指摘してきたように、小中の不登校への「支援」そのものは実は充実している。たとえば大阪市では、通称「サテライト事業」という公的な居場所支援が存在するし(NPOが受託運営する「居場所」が市内10ヶ所以上の施設に設置されている)、全国的にも、名前は硬いが適応指導教室という名の公的な「居場所」がどの自治体にもある。

また、中学にはスクールカウンセラーが配置され、生徒や保護者の悩みを聞く体制は確立されている。

こうした公的な取り組みは一定の成果を上げ、僕が20年以上に渡って取り組んできた不登校支援についてはかなり進んだと実感している。

実は問題は、「不登校が減らない」ことなのだ。言い換えると、不登校が「高止まり」していることだ。

現実の不登校支援そのものは一定の成果をあげているにも関わらず、「次から次へと」不登校が現れることから10万人以上の水準で高止まりしており、この高止まりのインパクトの強さから、「まだまだ支援が足りない」という共通認識が形成されている。

この高止まり現象については、以前も当欄で触れた(「不登校の高止まり」は「学校」の終わり)。この記事はM.フーコーを引用するなど若干哲学色が強いが、いくら支援の成果を上げても次から次に現れる不登校現象の本質は「学校そのものが制度疲労を起こしている」という点は、自分でも気に入っている。

■不登校の「高止まり」

人口が1学年100万人水準になって5年ほどたっており、120万人以下水準になってから15年ほどたつ(小学一年生の児童数推移をグラフ化してみる(2016年)(最新))。不登校数自体は10万人超えになってから全国の不登校児童生徒数の推移20年になろうとしている。

こう見ると、人口減少のわりには不登校数は高止まりのまま変わらないことから、比率としては増えてはいる。が、上述したように「支援」は一定の成果は上げている。

4月再デビュー、高校デビューなどで一定の子どもたちが学校に戻っているのではあるが、その数を上回る「新しい不登校」の子どもたちが存在するというのが実情だろう。

不登校の子どもたちの生活自体の過酷さから、不登校「支援」のほうに社会は目を向け、実際に現場で支援するNPOなどの熱心なアドボカシーもあり、今回の念願の法制化にこぎつけた(当然反対もあるが)。

けれども、事の本質はすでに「支援」ではない。高止まりを食い止めるためには、言葉は悪いが「予防」がポイントなのだ。

ある意味「学校」、特に義務教育の小中の学校は「制度疲労」を起こしているかもしれない。が、我々の社会は基本的に「変わらない」社会だ(「空気が」徐々に変えていく)。その疲労した「制度」が変わるのは、長い長い時間を要するだろう。

だからこそ、今ある取り組みを拡大することで、「予防」につなげることが我が社会での制度づくりのポイントだと僕は思う。

■「支援」ではなく「予防」を

その、今ある取り組みとは、当欄でも時々指摘する「学校内居場所カフェ」だ。

現在は、横浜・川崎・大阪において、実験的に取り組まれている(「カルチュラル・シャワー」高校生カフェは2.0に~横浜、川崎、大阪のチャレンジ)。

特に大阪は、大阪府の委託事業として大規模に展開されており、今年前半は委託事業が切れたものの幸運にも11月より再開され、僕の法人でも4校で居場所カフェを展開している(うち3校が大阪府の事業時代は変わる、高校居場所カフェ)。大阪では、合わせて6法人が、10校以上の高校で「居場所カフェ」を展開する。

この事業の「元祖」は、大阪府西成高校で始めた「となりカフェ」だ。関西限定ではあるものの1時間のテレビドキュメンタリー(MBSドキュメンタリー「映像'14」 ここにおいでよ~居場所を見失った十代のために~)にもなったこの取組は今も高く評価されており、恒常的な事業となるよう僕はアドボカシーしていきたいと思っている。

この「学校内居場所カフェ」を、高校だけではなく、小学校や中学校にも拡大してみてはどうか、というのが今回の提案だ。これは確実に「不登校予防」につながると思う。

■義務教育に「となりカフェ」を

実は僕は、義務教育のシステム内にこうした居場所カフェを設置することは日本では難しいだろうと諦めてきた。けれども各地で講演するたびに、参加者から「義務教育のなかでこの居場所カフェはできないんですか」という質問が相次いでいる。

その際僕は、「いやあ、とてもムリですねぇ」と答えてきたものの、果たしてそうだろうか。「空気」の醸成が変化のためには何よりも必要な我が国において、今回の教育機会確保法成立は「空気」づくりの大きな流れとならないだろうか。

本丸は「支援」ではなく、「予防」だ。その予防のために、義務教育のなかに居場所カフェを試しにどこかの中学で設置してみてはどうだろう。

義務教育に「となりカフェ」を。★