「保育」よりも、まずは「正社員解体」だ

■日本死ね、はあまりにキャッチーすぎて

僕はこのYahoo!ニュース個人を週一で更新していくようにしているが、最近はもう話題が多すぎて、なかなか一週間待たせてくれない。

オバマが広島で印象的なスピーチを行ないその記事(「亡霊」はあなたに何を語りかけるか~広島、オバマ、思春期)をこの前書いたばかりだというのに今日記事を書こうと思ったのは、この記事(日韓「経済不安が少子化加速」 意識調査)を読んだからだ。

それを読むと、結局、「保育よりも正社員か?」という感想を抱く。

この3月に起きた保育園騒動(日本死ね云々)のキモは、保育園に1人の幼児が入園できなかったことではなく、硬直した保育園入園システムが続く限り女性の社会参加が滞り続けることにある。

つまりは、人口減少時代において労働者人口も同時に減る現在、税と社会保険の担い手として、女性・若者・高齢者があげられるが、このなかの最大戦力である「女性」が増えるためにはまずは安心して仕事に臨める子育て環境を政治が用意するしかない。

1人ひとりの女性はそんなことまで考えて仕事をしていないだろうが、社会政策的には露骨にその問題が背景にある。当然、有名ジャーナリストも評論家も、良心的な政治家も官僚も、エネルギッシュなNPO代表も、みんなそのことはわかって「保育環境を整えよう!!」と唱えている。

日本死ね、はあまりにキャッチーすぎて保育園を希望する母の願いに焦点化され、それを称揚する人々はそうした母の願いを一見支持しているだけに見えてしまうが、日本社会の課題がわかっている多くの人々は、「女性に働いてもらいたい」そして「税と年金の担い手になってもらいたい」と露骨に思っている。

■正規雇用と非正規雇用の垣根をなくす

が、上の記事(経済不安が少子化を加速)を読むと、保育環境不安よりも、どうやら若い社会人たち・カップルたちは、日本経済の不透明さに不安を抱いているため、家庭や育児に臨めないようなのだ。

まあそんなことはわかってはいたが、保育環境不安にクローズアップしていくと、若い人たち・カップルたちの最大不安がぼやけてしまう。

家庭を持てない、子どもをつくる気がしないその最大要因が「経済不安」だとすると、その答えは簡単だ。

つまりは、「正社員」と「非正社員」、正規雇用と非正規雇用の垣根をなくし、より安定した雇用環境を整えていくということに尽きる。

言い換えると、「短時間低収入」の正規雇用や、一定期間の雇用関係と一定の収入がみこめる非正規雇用のあり方をシステム化するということだ。

前者(「短時間低収入」の正規雇用)はいま、L型正社員やジョブ型正社員などと呼ばれ、外資系企業の現場ではすでに取り入れられている。後者は派遣法改正のなかで徐々に取り入れられているらしい。

いずれにしろ、従来の正規雇用と非正規雇用の二項対立を崩していく現実が、いま進んでいる。

こうされて一番困るのは、実は、既存の労働組合なのだそうだ。

既存労組、つまりは「連合」は正社員中心の組織であり、いまは非正規を少しは焦点化する議論を始めたらしいが、基本的に従来の正規雇用を守る組織だと思っていい。

■皮肉なことに労働者は既得権益化

労働組合とはそもそもアンダークラスそのものである「労働者」を守るものであるが、ひとつの国の中で「先進国」化がすすむと、その労働者はミドルクラス化(中流化)していくため、皮肉なことに労働者は既得権益化していく。

労働者は大きな力をもつようになり、その存在そのものが、既存労働者/正社員に隠れた存在、つまりは非正規雇用労働者を隠蔽していく。

言い換えると、非正規雇用、アンダークラス、ニート、(多くの)女性労働者を隠蔽していく。

60年前であれば、それらはすべて「労働者」として一括して語れたものが、一部は中流化、一部は下流化していく。そして、中流化(ミドルクラス化)した層が「声」をあげる権利を同時にもち、同時に下流化する層はその声が抑圧されていく。

だから、有力労働組合ほど、本当の「下流」労働者の存在を隠蔽させてしまう。

その有力労働組合が、現在では「連合」になる。 

■「保育」ではなく、「正社員解体」

そうした状況を解放するためには、アンダークラス/非正規雇用へ光を当て、硬直した正規雇用のあり方に気づいてもらうしかない。

言い換えると、正規雇用を一定程度「解体」するしかない。

正規雇用を解体し、ジョブ型雇用とかL型雇用などと呼ばれる「雇用契約は安定するが賃金や待遇はかなり低い」層を創出する。

また、派遣や契約社員の地位をより一層確かなものとし、それら「安定した非正規雇用」の層をもっと拡大する。パートとかアルバイトなどの不安定層をもっと圧縮していき、「非正規雇用エリート」である派遣や契約を拡大する。

こうした雇用契約に関する改革をそれぞれの現場で推し進めると、若いカップルがもつ「経済不安」はもう少し軽減されると思う。

この社会には余裕がない。だからどこかに政策を一本化する必要がある。

もしかして今は、「保育」ではなく、「正社員解体」かも。そりゃ、ふたつを同時に進めればいちばんいいが、そんな甲斐性は我が国の政治にはないなあ。★