Lの世界(ローカル経済圏)での、新しいハイブリッド・ジョブトレーニング

■LとG

この夏あたりからよく聞くようになった「L型産業」や「L型雇用」という言葉だが、ここにきて予算の情報もチェックしていくと、それらがまずは「官」から徐々に動き始めたようだ。

その前に、「L型」を少し解説しておくと、これは簡単な概念で、つまりは「ローカル型」を意味する。これの反対概念としては「G型」があり、グローバル型の意だ。

LとGは、元々、経営共創基盤・代表取締役CEOである冨山和彦さんが政府に説明したこの資料(我が国の産業構造と労働市場のパラダイムシフトから見る 高等教育機関の今後の方向性)が大元になっているようだが、この資料や冨山氏の存在そのものはある種のトリガーであって、ここに至るまではさまざまな力が動いていると想像している。

が、背景や権力構造は今回はとりあげない。今回は、こうした流れの確認と、これに伴う「新しい職業訓練」のかたちについて触れてみる。

硬直しきった日本の職業訓練と大学システムを変更すること自体には、僕は大賛成だからだ。

■Lの世界

グローバリゼーションや新自由主義が跋扈するG経済圏に対し、L経済圏はそうした速度や割り切りは求められない。冨山氏の上資料にあるように、LはGとは違う独自の理屈で動いている。

たとえば、Gは完全競争でLは不完全競争、Gの労働生産性は高いがLの労働生産性は非常に低い。Gは生産拠点=消費地ではない、Lは不完全競争で公共性は高いが地域社会との親和性は高い、等、その違いは明確だ。

ちまたで言われる日本経済のグローバリゼーションはあくまでもGの世界であり、サービス業を中心とした70%以上を占めるLの世界では違う原理が働いている。

そのLの世界について池田信夫氏は「新たな江戸時代」の到来と述べ(L型産業で「江戸時代化」する日本)、日本がかつて成し遂げた「勤勉革命」の方向であれば日本経済の生き残りも可能と述べる。

要するに、日本国中をグローバル化が覆うわけではなく、それとは逆に非効率である意味「日本的」なL型産業がそのほとんどを占め、サービス業を中心としたその「Lの世界」の刷新次第で、すでに「少子高齢と格差の社会」になってしまった我が国が生きていく道はある、ということだ。

■L型大学

そのために、すでに国は動き出していると僕は思う。

たとえばこんな記事(地方に本社移転、税優遇 社屋投資や転勤で控除)やこんな記事(地元就職条件に奨学金 地方創生へ大学生向け基金)を見ていると、新しいサービス業創出のための地方への人の移動に、国が取り組み始めたように見える。

富山氏は上資料で、「L型大学」を提案し、「L型大学(含む専修・専門学校)では、『学問』よりも、『実践力』を」と提案する。詳しくは資料を見ていただきたいが、たとえば、L型大学の経済・経営学部においては、マイケルポーターや戦略論ではなく、簿記・会計、弥生会計ソフトの使い方」が重要である、と説く。

たとえばL型大学の法学部では、「憲法や刑法ではなく、道路交通法、大型第二種免許・大型特殊第二種免許の取得」が重要である、と説く。

■「現実的な就労訓練」

僕もまったく同意見だ。

僕は長い間ひきこもりやニートの若者支援の現場にいるが、高校や大学中退後にひきこもりやニートになり、それが10年ほど潜在化し、支援機関を訪れるのは30才前になってから、という若者を数多く見てきた。

そうした若者は、学力に見合った就労訓練を年齢に応じて獲得していれば、ニート化ひきこもり化を防げただろうに、と思うことはこれまで数限りなくなあった。

が、大学進学率は50%、専門学校や浪人や大学院まで含めると「何となく進学」する若者は70%を超える。こうした若者に対し、あるいは高卒で就労を志す少数の若者に対しても、「現実的な就労訓練」を提供できれば(現在ある硬直的な就労訓練や「おしゃれ」だが非現実的で高学費な職業学習ではなく)、若者たちはより多くが就労でき、そして少子高齢社会の重要戦力として社会保険と税を担うことができるだろう。

■「ハイブリッド・ジョブトレーニング」

そのために僕は、大学や専門学校で行なう「L型」教育とは別に、「ハイブリッド・ジョブトレーニング」と最近呼び始めた一連の「流れ」と「混合」による就労訓練・学習に取り組んでいる。

それはこのaimaカフェ(aimaカフェ/大阪府・中間的就労の場づくり事業)の実践だが、詳しくはこのurl内の記事や、記事内にあるFacebookページを参照されたい。

僕は「若者支援者」であり、特に最近は、ニートやひきこもり問題の源泉である「高校中退」の予防と支援に取り組んでいることから、L型「大学」というよりは、そうした大学からは比較的遠い若者たちが受けることのできる、現代社会に見合った就労訓練の創出を考えている。

そこで到達したのが、以下の流れだ。

1.困難高校内での「居場所カフェ」でアウトリーチし、

2.直営カフェでカフェ業務という就労訓練を受け、

3.就業インターンとアルバイトを兼ねた「バイターン」(有給職業体験プログラム・バイターン)を経験して(大阪では考案者・石井正宏氏の公認を得て公式に初めて展開する)そのまま理解ある事業所で長期アルバイトにつく

このような「流れ」と「組み合わせ」をここでは「ハイブリッド・ジョブトレーニング」と名づけている。

「Lの世界」では、L型大学も必要ではあるが、Lを地道に支える幅広い若い力がさらに必要になる。そこに、困難高校にいる高校生やそうした高校を中退した若者をつないでいく。そうした若者支援が、「Lの世界」を担う重用な人々の創出につながれば、今から50年のこの国のかたちが少しはポジティブになると思う。★