トラウマ治療が男性ジェンダーの欲望と暴力を隠す

下記NHKサイトより
下記NHKサイトより

NHKニュース「声なき声」届けて性暴力なくせ

■「声なき声」

Facebookのコメント閲覧を、僕はすべての「友だち」のコメントを見ることができるように設定している。

そうすると、全員のコメントをざっと見るだけで30分はかかってしまうが、僕が見落としている記事なんかに注目している「友だち」がおり、ありがたい。

たとえば上のNHKニュースなどは、「PTSD治療が、我々の社会の特徴である『男性ジェンダー権力社会』の問題を結果として隠蔽してしまうという皮肉」について考えさせてくれ、ありがたかった。

この記事にあるように、女性への暴力は、メディアで伝えられる数よりもはるかに多い。ということは、その被害者数も莫大なものになり、多くが「声なき声」として潜在化している。

これは当の女性たちも含む我々の社会では、暗黙の了解事項あるいはタブーなのかもしれないが、これが顕在化できない理由は、この記事では「被害者の顕在化行為そのものが被害者自身を再度傷つけるため(要約)」としている。

が、顕在化が難しい最大の理由は、被害者の女性のトラウマ再生産のほかに、「この『男性ジェンダー社会』自身が、その社会の権力構造を維持し続けるため、顕在化させていない」と僕は考える。

もちろん、誰か特定の男性ジェンダーが中心となってそうしたミッションを敢行しているわけではない。社会全体として、暗黙の了解として、性暴力の実数と実態を隠蔽化していると思うのだ。

当然、この社会の権力構造を維持するために。

■トラウマ治療が社会を隠蔽する

そこに、臨床心理学や精神医学がある意味加担していると思う。

具体的にはPTSD治療というあり方で加担しているのだが、J.L.ハーマン等の理論をはじめとして(『心的外傷と回復』等参照)、僕はこれらPTSD治療本にはおおいに影響を受け、尊敬している。

ハーマン/中井『心的外傷と回復』、究極の名著!!
ハーマン/中井『心的外傷と回復』、究極の名著!!

が、皮肉なことに、こうしたPTSD治療の確立とそれらの実践そのものが、そもそもこうしたトラウマの原因となっている性暴力を大量に生み出し同時に隠蔽してしまっているこの社会の問題を覆い隠す、都合のよい道具になっているのかもしれない。

トラウマ治療という名目の重要性と必要性が、そのトラウマを毎日大量に生み出し続ける元凶(男性ジェンダーの欲望・暴力)を隠す。

心理学はこのように、「被害者の傷つき・トラウマ」のみに焦点化し、そのトラウマの元になる事件を常時生じさせる社会構造のあり方にまでは届かない。

■当事者は語れない

それが心理学なのだからといわれてしまえば仕方ないものの、困るのは、カウンセラーや臨床心理学者自身がこのレベルにとどまり続けてしまうということだ。

また、権力サイドである男性ジェンダーは、こうした構造の受け入れを無意識的に拒否する。僕は変人なので若干受け入れているが、男性ジェンダー権力社会という人類社会のありかたそのものが、女性ジェンダーの被害の潜在化を生み続ける。

だからこそ、誰かが語らねばならない。

が、「当事者は語れない」。その問題の当事者であればあるほど、語れなくなってしまう(その理由は当ブログのこの記事ほか参照→当事者とポスト当事者)。

つまりは、NHKサイトにあるような橘さんのような方が、代弁し、代表するしかない。

これが、 哲学者G.スピヴァクのいう「サヴァルタンは語ることができるか」ということの現実的適応だと思う。★