■「潜在性へのアプローチ」

僕は3月に関西の青少年支援の老舗NPO代表を退職して、4月から一般社団法人officeドーナツトークというのを開設してがんばっている。

当法人の行動指針は「潜在性へのアプローチ」であり、その「潜在性」とは、たとえば「10代後半の高校中退層」であり(高校中退後、ひきこもり予備軍となるが支援機関や行政が実態把握困難)、たとえば「大阪市南部でのさまざまな青少年問題」(複合的重層的に問題がつながるが全体像の把握が困難)だったりする。

前者は「年齢」において、後者は「地域」における「潜在性」を指す。

このように、「臭いものに蓋をする」文化である我が国は、目の前に問題があると誰もがわかっているのになかったことにする、恐ろしい国民性を持っている(一例は、現在の福島原発汚染水問題)。

いずれはそれらの潜在的問題は必ず顕在化して問題になるのに、今現在問題でない限りはそのことをなかったことにする。

どうも僕はこれが体質的に合わず、精神的にはおそらく日本人ではないのだろうが、日本語以外しゃべれないし、来年50才になるしいまさら海外に引っ越すのもしんどいので、死ぬまでこのエリア・国で生きていこうと思っている。

で、せっかく死ぬまでここにいるのだから、大きなNPOで無理して経営仕事をしていくよりも、小規模ながら自由な活動ができる新しい法人を設立したというわけだ。

そこで、僕が最もやりたいことをやっている(「ソーシャルセクター」らしく仕事すること。つまり、「ビジョン〈10~20年後の世界観〉」→「ミッション〈団体使命〉」→「行動指針〈このひとつが「潜在性へのアプローチ〉」→2~3年「戦略」立案→事業「コンセプト」立案→各事業の展開、という「理念から現実へ」の流れ通りに仕事すること)。

■現在は「完全な階級社会」へ移行していく途中

で、いまの「大学」に関する潜在的問題についてふれてみよう。

上の行動指針でも述べたとおり、ひきこもりの数を減少させるために、officeドーナツトークでは、「高校中退予防」に全力で取り組んでいる。それは具体的事業としては、「高校生カフェ」(全国でも生活保護受給率No.1である大阪市西成区の、府立西成高校において「となりカフェ」という「居場所事業」を展開している高校中退・不登校フォローアップ事業)。

今年は、府立桃谷高校という、大阪では老舗の通信制高校において、同様の高校生カフェを展開する予定でいる。ほかにも、府立箕面東高校という「クリエイティブ・スクール(大阪独自の取り組み。同校と桃谷高校の2校で展開されている)」にも、僕はお手伝いしている。

で、こうした高校生支援は、高校中退後潜在化しひきこもりやニートになっていく若者たちの増加を防ぐために、なくてはならないものだと思っている。

だから、地域若者サポートステーションが今年から160施設程度に増え、高校支援についても予算が大幅にアップされたことは非常にいいことだ(今のところ就労支援名目が多いだろうが、実質的に中退予防に取り組むサポステが増えることを望む)。

高校とは、一部が階級社会となった我が国において、規模という意味では「最後のセーフティネット」になったといってもよく、また、格差社会の中の一人ひとりの高校生からしても、社会に出る前の「最後のモラトリアム」といってもいいからだ。

ややこしいのは、現在はあくまでも「完全な階級社会へシフトしていく途中」だから、少し前の当ブログでも書いたとおり(親は総中流、子は階級社会を生きている)、親と子が違う階級に属することも現代日本では珍しくなく、そうなると、下部階級の子世代は、上部階級の親世代の影に隠れてこれまた「潜在化」しているという側面があるということだ。

つまり、相対的には、子世代にとっては高校時代をどう捉えるか、高校時代をどう過ごすか、ということが我が国ではものすごく大事になってきている、と僕は思う。

■大学の生まれ変わり

が、現実は、大学に半分が進学する。が、現実は、大学に行った人の70%がその後の進路で躓いている。

たとえば大学中退予防に先進的に取り組む、NPO法人NewVeryの山本代表のインタビューでは、いわゆる「ストレーター」(大学卒業後3年正社員の人)は31%にすぎないという(たとえばこのインタビュー参照私大生の8人に1人が中退者になっていた!?)。

18才の50%が大学に進学するものの、その50%のうちの7割が4年後躓いてしまう。大学に行った半数以上が躓くということは、つまりはその半数は大学とは違う進路でも元々よかったんじゃないかと、僕は単純に思ったりもする。

また、今の少子社会を受けて、大学は生き残りに懸命になっている。が、どんなに大学が生き残りの努力をしようとも、現在の大学数は多すぎる。

一学年200万人もいた団塊ジュニア世代が大学生を終えたのは90年代なかば、そこに学生数を焦点化してきた各大学は団塊ジュニア卒業後も同程度で学生を募集し続けてきたのだから、相対的に入学数が増えてしまうのは当たり前だ。

これからの一学年の人口は団塊ジュニアのほぼ半分である100万人強で推移していく。単純に考えて、目先の大学改革では、90年代なかばに設定した定員を満たすはずもない。もうすでに起こっている現象だろうが、想定した学生数に足りずに倒産する大学もこれからはさらに増えていくだろう。

僕はそれはそれで仕方ないと思う。むしろ、学生数減少を逆手にとり、倒産・廃業寸前の大学は、新しい「職業訓練校」として生まれ変わってほしいと願う。

■アニメや高度なITが役に立つか?

現在、僕の仕事の範囲で聞こえてくる「職業訓練」に関する学校のカリキュラムは、現在の若者が抱く職業訓練のニーズ(それは無意識的なニーズであるが)にまったく適合していない。

ヘルパー等の現実的に需要がある福祉職を除き、おしゃれなカタカナ職業や、アニメ・声優・ゲームや、ホテル等の高レベルの接客や、これまた高レベルのIT等といった、現在世の中にある職業訓練に関する学校は、現実の若者のニーズに比べると「ハイレベル」すぎる。

また、いわゆる職人系の仕事も同じくハイレベル、あるいは「世界が違う」職業すぎる。

もっと、現実のアルバイトにあるような職業、たとえば「コンビニ店員」「ファーストフード定員」「ユニクロ的店舗の定員」「工場軽作業」等の「職業訓練」が現在の若者には最も必要だと僕は思う。

そうした仕事はこれまで、まさに「アルバイト体験を通して」若者たちは覚えてきた。そのような体験で社会を支える仕事を知り、その後正社員になったあと、そのアルバイト体験を活かしてきた。

が、いまは、そもそもそうしたアルバイト的仕事を諸事情で深く体験できない(正確に言うと、体験できない/長続きしない若者が数十%存在する)。その結果、従来であればそうしたバイト経験を元により高度な職業訓練へと移行したのだが、バイト体験(社会参加の基礎的訓練)を体験しないまま、社会人を目指すことになる。

で、いくつかの挫折のあと、ニートやひきこもりへと移行していく。

■早めに脱皮しよう!!

このような層は、現在「大学中退している層」とある程度重なるだろう。だから、廃業可能性のある一部私立大学は、早めに新しい時代に見合った職業訓練校・技能連携校へと脱皮することをおすすめする。

そして現在ある高校は、「代表的セーフティネット」であることを意識し、こうした職業訓練に関する学校(元大学)とより連携をすすめることをおすすめする。

現在は、授業も生徒指導もクラブもすべて兼務する教員が、空いている時間を探して生徒が職業体験できる会社を個人的努力の中で探しているという状況ではないのか。

人口構成の変化が過渡期であり、社会のあり方(中流→階級)も過渡期だから、そこに対応する社会システムも異常なほどの過渡期、それが現在の日本だ。

ここに我々は臭いものに蓋をせず対応しなければいけない。★