「統一概念」をつくってほしい~「スネップ」、ニート、ひきこもり、発達障がい、精神障がい、フリーター…

タマはタマ。ガラス越しですが……(和歌山電鉄貴志駅にて)

■気になっていたSNEP

少し前から気になっていたSNEP。Solitary Non-Employed Personsの頭文字をとった略語で、「孤立無業者」と訳されている。

定義的には、「無職・未婚で学生でもない20~59才の人を指し、家族以外とは誰ともコミュニケーションをとらない人」のことを指すそうだ。

詳しくはこの記事新概念「SNEP」(スネップ)が話題 ニートより孤立無援、100万人超える等を参照いただきたいが、数としては162万人を超えており(2011年)、やはり男性が多いとのこと。

あの「ニート」を日本に持ち込んだ1人である、おなじみ東大教授の玄田有史さんが提唱している新概念だが、ニートに比べて対象年齢が拡大した点(ニートは34才まで)などを考えると、年齢的に「ニート後」の救済を目的にした概念提唱なのだろうと僕は思っている。

実際僕なども、大阪において若者の自立支援をしているなかで、34才を越えた方たちも普通になってきたなあと感じていた。それどころか僕は、「専門家」らしくもなく、この頃はニートが34才までだったのか、はてさて39才まで拡大されたんだっけと、イマイチ確信がない。

というのも、この仕事をしていると誰でもそう感じると思うが、とにかく若者の再社会参加は急ぐとろくなことがない。

自立支援の仕事とは、若者の社会参加の「スモールステップ」の積み重ね具合をみながら、着実にゆっくりと経験値を積み重ねていってもらうことにつきるのだ。

だからいつのまにか、支援対象の若者の年齢が気にならなくなってきた。その方が25才だろうが38才だろうが、時間がかかるものはかかる。

が、のんびり支援しすぎても年齢ばかりが積み重なっていく。年齢的にも40代になっている当事者の方もいらっしゃるのだろう。

とはいいつつ、スモールステップを焦ると、またひきこもりに近い生活になるから、時間はかかる。

そのような、「ニート後」の年齢になった方々に対して支援システムを構築してほしいという願いを込めて玄田さんたちはこの概念を提唱しているのではないだろうか。

■いったい何人いる?

が、僕は逆説的に予想するのだが、この新概念が出てきたことで、玄田さんたちの願いとは逆に、若者支援にかかわる人々が逆に混乱していくように思える。

というのも、ではいったい「社会参加に迷える人たち」は何人いるのか? という根本疑問が出てくるからだ。

社会参加できず苦しむ若者たちは、SNEP162万人の他に、先ほどのニートは60万人(2010年)、ひきこもりは70万人(2010年)。といわれる。一つひとつの定義を説明しないが、これらは当然多くの部分が重なり、同時にいくつかの部分が重ならない。

たとえば、大学生のひきこもりの場合、学生だからニートでもスネップでもない(ニートは未就学・未就労・未訓練の意)。が、日々の状態としてはニート状態にある若者と区別することは難しい。なぜなら、多くのひきこもりが、完全に屋内にひきこもっていることはなく、それなりに外出しているからだ。

逆に、ニートでありつつひきこもっている若者も当然たくさん存在する。年齢が高ければ、スネップでありつつひきこもり、そして当然ニートでもある(ニートとスネップの違いはコミュニケーションの有無と年齢の幅)という方も存在する。

こうした方などは、スネップ162万人にもニート60万人にもひきこもり70万人にも入ることだろう。

また、角度は少し違うが、フリーター(非正規雇用)でありつつ年金・健康保険は親が代わりに支払っている方もいらっしゃるだろう。フリーターは183万人(2010年)で、そのうち何万人が自分の年金を親に支払ってもらっているのか、僕は今のところ知らない。

関西のいろいろなところから講演の演者として僕はこれまで呼んでいただき、呼ばれた先でいちいちこのこと(フリーターのうち何割の親が年金を肩代わりしているか)という質問を講演の参加者の皆さんに逆質問してきたが、みな首を振ってばかりだった。

年金・健康保険を自分で支払うということをシンプルに「社会参加」の指標の一番とするならば、現在の統計ではどれだけの若者が親ではなく自分で年金・健康保険を支払っているのか、よくわかっていないらしい。

■統合概念を

また、ひきこもりやニートの若者の中には、発達障がいや精神障がいを抱える方たちも少なからず存在する。

発達障がいは「発達凸凹」(発達障がい圏域の方たち)の考え方も現れ、いまだその定義が揺れている「障がい」だ。

また、精神障がいには、たとえば「人格障がい」というカテゴリーがあり、ここに属する「境界性人格障害」を発達障がいやひきこもりと関連づけてどう捉えるか、精神医学界ではいまだ結論が出ていないとも聞く。

そしてそして、上のスネップやニートと、この発達障がいや精神障がい、またひきこもりとは、多くの事例で重なることがあるというのが、現場の実感だろう。

が、驚くことに、これらの諸概念は、いまだ統一されていない。1人の若者が、ひきこもりでありニートであり発達障がいであり精神障がいであり、時々フリーターであり、最近ではスネップである、こんなことも実際あるだろう。

また、1人の若者が、それらの1つには属するが他のものには属さない、ということもあるたろう。

また、1人の若者が、それらの3つには属していたが、年齢を重ねると2つになったということもあるだろう。

はっきり言って、支援者の僕自身、これらの定義をどう捉えればいいのかよくわからない。

僕は何が言いたいのか。

つまりは、若者支援にかかわる専門家の方たちが一同に集まり、わかりやすい、そして当事者と家族のみなさんにとって本当に便利なカテゴリーを創設してくださいということです。

スネップを創設した玄田さんのような方があと何人か集まって、玄田さんは経済学者なのでほかの学者として、精神科医・社会学者・教育学者等、ついでに倫理学者なども僕は推薦するが、それら学者たちと、NPOを中核とする支援者、また親の全国組織なども集まり、「若者の社会への再参加」という大テーマのもと、わかりやすいワンフレーズを生み出してほしい。

すべての学会・業界が納得できる、わかりやすい概念は不可能なのだろうか。

そうした議論のあとに残ったのがスネップであったとしてても、当事者や現場の支援者は誰も反対しないだろう。★