豪雨災害ボランティア 参加して分かった必要な準備と求められる支援

ボランティアに行く際は、入念な準備が必要だ(筆者撮影)

熊本県南部を中心に甚大な被害をもたらした「令和2年7月豪雨」。各地では災害ボランティアセンターが開設されており、ボランティアの受け入れが本格化している。新型コロナウイルスの感染対策も並行して実施する必要があり、これまでの災害とは勝手が違う部分もある。実際にボランティアに参加した筆者の経験をもとに、事前の準備等についてまとめたい。

新型コロナのためボランティアの居住地に制限

熊本市在住の筆者が参加したのは7月16日木曜日。仕事の関係でこの日だけの参加となった。熊本地震の際に、避難所運営を支援するなどしていたが、ボランティアセンターを通してのボランティアは今回が初めてだ。

私事になるが、現在熊本市在住の筆者は以前、県南にある県立水俣高校で常勤講師をしていたことがある。当時、今回の豪雨災害で被災した芦北(あしきた)町や津奈木(つなぎ)町から多くの生徒が通学していた。筆者自身も、当時は食事や買い物や観光で両町をよく訪れており、思い出の地となっている。それだけに、テレビや新聞で芦北・津奈木の被害状況を知るたびに、胸が苦しかった。ボランティアセンターが開設されたら現地に足を運んで力になりたい。そう考えていた。

芦北町社会福祉協議会のホームページ(HP)を確認すると、津奈木町社会福祉協議会と広域で「芦北・津奈木広域災害ボランティアセンター」を開設したと書いてある。Facebookでも定期的に活動報告などを行っているようだ。事前申し込みの上で同センターへ行けば、両町で依頼のあった場所へと派遣される仕組みという。

ボランティアに参加できるのは、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から「県内在住者のみ」。過去2週間に県外へ移動していないことも求められる。熊本県社協が運営する「熊本県災害ボランティア情報[特設サイト]」によると、現時点では県内の他の被災自治体でもボランティアの居住地に制限を設けている。

ボランティア活動保険の加入は必須

全社協の「ボランティア活動保険加入のお申込み」より
全社協の「ボランティア活動保険加入のお申込み」より

芦北町社協のHPでは、参加申し込み方法について丁寧に解説されていた。まず、ボランティア活動保険に加入する必要があるという。インターネットで調べると、近くの社協で加入できるらしい。しかし、仕事の関係で出向く余裕がなかった。困って社協に相談してみたところ、「今回の災害は特例で、ネットでの加入申し込みと保険料のクレジットカード決済が可能です」と教えてもらえた。

ネットでの申し込みは、ものの数分で完了。保険は1人年間500円の「天災タイプ」を選んだ。保険期間は申込日から1年ではなく、年度単位(今回は2021年3月31日まで)なので注意が必要だ。

保険の申し込みが終わったら、「別紙」の活動上の注意を確認する必要がある。「必ず団体行動」「被災者へ寄り添う気持ちで接する」「被災家屋の前での集合写真の撮影や被災者との記念撮影は絶対に行わない」「謝礼は受け取らない」といった注意点が書かれていた。

最後に、ネットから印刷した事前申請書を記入してFAXで提出する。筆者のオフィスにはFAXがないので、近所のコンビニエンスストアから送信した。FAXでの提出が難しい場合は、電話でも対応してもらえるという。ボランティアセンターによっては事前申し込みが不要の場合もあるので、あらかじめ該当する社協のHPで確認した方がよいだろう。

西日本高速道路株式会社「災害ボランティア車両の高速道路の無料措置について」より
西日本高速道路株式会社「災害ボランティア車両の高速道路の無料措置について」より

車でボランティアセンターまで向かう場合は、高速道路の通行料金の無料措置が講じられる。西日本高速道路株式会社のHPから、ボランティア車両証明書様式を印刷して、往路復路の2枚を記入する。復路については、ボランティア終了後にボランティアセンターで押印してもらう必要があるので、注意が必要だ。なお、熊本県は、熊本市と人吉市災害ボランティアセンターをつなぐ「災害ボランティアバス」を運行している。7月17日~8月30日の金・土・日・祝日(お盆期間を除く)に運行。県内在住の中学生以上が対象で、毎便先着40名。料金はかからない。詳しくは県のHPを確認していただきたい。

踏み抜き防止のインソールも持参すべき

申し込みが完了したら、持参物を準備する。筆者は熊本市内の作業服・関連用品の専門店で調達することにした。対応してくれた店員の男性は、何度もボランティアに参加した経験があり、芦北町にも数日前に行ったばかりだという。男性店員におすすめ商品を質問しながら、撥水加工ヤッケの上下、長靴、踏み抜き防止のインソール、ゴム製手袋を購入した。

筆者が購入した撥水加工のヤッケ上下。合わせて1900円ほどだった(筆者撮影)
筆者が購入した撥水加工のヤッケ上下。合わせて1900円ほどだった(筆者撮影)

店員男性は過去に2度、ボランティア中に釘が足裏に刺さったことがあるといい、踏み抜き防止のインソールについて「絶対長靴に入れるべきです」と強く勧められた。手袋は最初手のひら部分だけがゴム製のものを選んでいたが、泥のかき出し作業の場合は手袋が濡れるので、「全体がゴムのものがよい」と教えてくれた。合計金額は4千数百円程度だった。

このほかに、マスク数枚、タオル数枚、水筒、熱中症防止のための飴、昼食も必要だ。マスクは感染症予防のため。タオルは1枚は首からかけて、もう1枚は危険防止のため頭に巻いた。

作業は30分が限界

ボランティア当日は、自宅で検温を済ませてから車で芦北町にあるボランティアセンターに向かった。午前9時過ぎに到着し、受付を済ませると、テントに案内された。注意点などを確認するオリエンテーションを終えると、続いてマッチングが行われる。

マッチングが行われるテント(筆者撮影)
マッチングが行われるテント(筆者撮影)

芦北町社協のHPによると、災害ボランティアセンターに寄せられる依頼は、主に「住居の後片付け、敷地内や住居内の汚泥の除去」「避難所での手伝い」「救援物資の仕分け」の3種類だという。様々な依頼について、ボランティア参加者は、マッチングスペースで挙手によって活動先を選択する。筆者は力仕事の「住居の後片付け、敷地内や住居内の汚泥の除去」に参加することにした。チームのメンバーは6人。自己紹介を済ませた後、一輪車やスコップを軽トラに積み込み、現地に向かった。

派遣先は芦北町のとある地区。川沿いに家々が連なる。依頼があった家は床上浸水しており、泥のかき出しが必要だった。チームのリーダーの男性によると、泥が乾くと固まって作業が難しくなるという。泥のかき出しについては、時間との勝負だ。

古い家屋は、床下にコンクリートではなく、砂利が敷き詰められていることが多い。浸水によって泥が大量に入り、砂利と合わさって固まりつつあった。スコップだけではかき出せない場所も多い。農業用の鍬(くわ)で掘り起こしてから、スコップでかき出していく。これが思いのほか大変だ。限られたスペースのため体勢の維持が難しく、かつ砂利と泥はずっしりと重い。新型コロナ対策でマスクを着用しているのだが、マスクの中が湿ってくると呼吸がしづらくなる。作業は30分程度が限界で、こまめに休憩して熱中症対策のため水分と塩分を補給した。6人がかりでやっとの作業。依頼があった世帯は高齢のご夫婦だったが、ボランティアセンターに依頼しなければ泥が固まるまでに作業を終えるのは難しかったであろう。

積み上げられた砂利交じりの泥(筆者撮影)
積み上げられた砂利交じりの泥(筆者撮影)

休憩中、ご夫婦と水を飲みながら会話した。過去の水害では、水が来ても床下浸水で済んでいたこと。当日の午前1時半ごろは大丈夫だったが、その後一気に水かさがまして怖かったこと。町内のいろんな場所で土砂崩れが発生していること。熊本弁で発される一言一言を受け止める。応じるこちらも、自然と熊本弁が出る。最初はどう接すればいいかよく分からなかったが、変に身構えることなく、普通に接すればいいと気づいた。会話中、相手が時折見せてくれる笑顔に、なんだかほっとした。

芦北町内の山々。町内各地でも土砂崩れが発生した(筆者撮影)
芦北町内の山々。町内各地でも土砂崩れが発生した(筆者撮影)

休憩時間や移動時間があるため、作業時間は4時間程度だった。それでも終わった時には腰と腕が極度に張っていた。「ありがとうございました。本当に助かりました」。立ったまま両手を太ももの前に置き、90度の角度でお辞儀をする2人に見送られ、チームはボランティアセンターに戻った。

ボランティアセンターまでの道中、他のメンバーにボランティアに参加したきっかけについて尋ねてみた。同じ車内には熊本市から1人で参加した男性と、熊本県美里町から参加した女性2人組。筆者の質問に、皆きょとんとした。「きっかけって言われても……。うーん、なんでだろう。テレビとか新聞でニュースに触れて、いてもたってもいられなくなったからかなあ」。そして、笑顔でこう付け加えた。「でも、まあ、あんまり理由はないかも。力になりたかったというか、来たかっただけです」。皆、うなずいた。

「細く、長く、できる範囲で」

今回の豪雨災害において、ボランティアの力は長期にわたって必要になるだろう。筆者は芦北町に滞在した短い時間で、多数の土砂崩れの現場、浸水の現場を目にした。これらは報道されていないものばかりだ。地元住民によると、芦北町だけでも被災エリアがあまりに広大で、まだ手付かずの現場も多いという。熊本県の集計によると、7月16日時点の県内の家屋被害は、全半壊が592棟以上、床上浸水が5525棟以上だという。今回の豪雨災害の被害は、九州など全国各地に及ぶ。チームリーダーの男性は、筆者にこう話した。「細く、長く、できる範囲で支援を続けます」。復興までの道のりはまだ長い。持続可能性のあるボランティアが求められると感じる。