手指用アルコール消毒剤、毎日使っても大丈夫?米政府がメーカーに安全性と効果の証明を要請

(写真:アフロ)

近年、日本でも公共施設などで見かけることが多くなった手指用のアルコール殺菌・消毒剤(ハンドサニタイザー)。アメリカでは、設置されているものだけでなく、携帯用の小さなサイズも広く普及し、多くの人が日々持ち歩き、手洗いの代わりに頻繁に使っています。

ところが先日、米食品医薬品局(FDA)が、こうした製品を長期にわたり継続的に使用した場合の安全性と効果を証明する最新の科学的データを一年以内に提出するよう、製造メーカーに要請しました。

想定外の大量使用

なぜFDAが突然このような要請を出したのかというと、本来、アルコール殺菌・消毒剤は水と石鹸で手洗いができない時のために作られたものですが、近年はその手軽さから、手洗い場が近くにある場合や特別菌に感染しやすい場所や状況でなくても、習慣的に一日に何度も使う人が増えてきているからです。

FDAがこうした製品の調査を開始した1970年代には、これほど多くの人が頻繁に使うことは想定されていませんでしたが、近年の調査で人の血液や尿から想定以上の殺菌成分が検出されていること、また、こうした洗い流さないタイプの製品は含まれている成分が手指に残りやすく体内に吸収される可能性があることなどから、特に妊婦や子供にとって問題がないのか調査する必要があると判断されたのです。調査の対象となっている成分は、こうした製品のほとんどに使われているアルコールやエチルアルコール、イソプロピルアルコール、塩化ベンザルコニウムです。

懸念される抗菌・殺菌製品の安全性と効果

実は、FDAが殺菌剤の安全性と効果に関する調査を行うのはこれが初めてではありません。

2013年には、一般消費者向けの抗菌石鹸やボディソープの製造メーカーに対して、効果と安全性を証明する科学的データを提出するよう要請。FDAは、こうした抗菌製品が普通の石鹸よりも殺菌効果が高いという証拠はないとし、むしろ抗菌製品に含まれるトリクロサンなどの活性成分が抗生物質の効かない耐性菌を生み出す危険性があり、また、動物実験ではこれらの成分がホルモンの働きを阻害したことなどを指摘しています(以前の記事)。

次いで2015年には、医療施設で使われる殺菌剤においても、アルコールやヨードなどの成分の安全性と効果に関する科学的データを提出するようメーカーに要請。医療施設では日に100回以上殺菌剤を使う人もいるため、特に妊娠中や授乳中の医療従事者への影響を調査するとしています。

これら調査の結果と最終規定はまだ出ていませんし、現時点では抗菌・殺菌製品を使用することの危険性は断定されていませんが、FDAがこれほど何年にもわたり何度も調査を行っているということは、大きな懸念があるということでしょう。

水と普通の石鹸で十分な効果

米疾病予防管理センターは、疾病・感染防止には普通の石鹸と水で手洗いすることが重要であり、石鹸と水がない場合にはアルコール分を60%以上含む手指用殺菌剤を使うよう薦めています。

水や石鹸を使わない殺菌剤は便利ですし、抗菌成分が入っている石鹸は効果がありそうに見えますが、どんなに便利で効果の高い製品でも必要以上に使えば弊害が出るはずです。直接的に明らかな弊害がないように見えても、広い視野で見ればどこかで問題が起こっているかもしれません。私たちは便利で安全な生活を追及するあまり、逆に健康や住みやすい環境を脅かしてしまっているのかもしれません。無菌状態で生活することはできないのですから、抗菌・殺菌剤に頼りすぎず、特別な状況でない限り水と石鹸で丁寧に手を洗い、菌と上手に共生することが自然の摂理に適った生き方なのではないでしょうか。

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