変わるアメリカの遺伝子組み換え表示、ゼネラルミルズに続きマースやケロッグなど食品大手が自主表示を発表

前回の記事で、米上院が州ごとの遺伝子組み換え表示義務化を容認し、バーモント州における7月からの表示義務化が現実味を帯びてきたこと、これを受け、ゼネラルミルズが全米で遺伝子組み換え製品の自主表示を発表したことを記載しました。

その後、ゼネラルミルズに続き、食品大手のマース、ケロッグ、コナグラ・フーズも全米で自主表示することを発表しました。

M&Mやスニッカーズ、ぺディグリーなど多くの著名な食品ブランドを傘下に持つマースは、同社サイト内で「バーモント州の表示義務化に伴い、全米で、遺伝子組み換え原料を含む製品に対して明確に容器包装に表記する」と発表。

シリアルやスナック菓子のプリングルスなどのブランドを保持するケロッグは、メディア各社の取材に対し、”4月後半から、全米で、同社の遺伝子組み換え原料を含む製品に「遺伝子組み換えにより製造(Produced with Genetic Engineering) 」と記載する”と伝えています。全米での自主表示を決めた理由はバーモント州のみ対応するのは費用がかかるためとし、今後も国としての統一した対策を国会に要請し続けると主張しています。

缶詰や冷凍食品などの加工食品を扱うコナグラ・フーズは、「バーモント州の基準に沿う形で、7月までに全米で遺伝子組み換え製品の自主表示を行う」と発表。他社と同様、州ごとの表示基準への対応は煩雑であり費用がかかるため、国全体での対策を国会に要請し続けるとしています。

缶入りスープで有名なキャンベルスープは、上院決議を待たず、今年1月に表示義務化への支持を発表。「国の統一基準が制定されない場合は、バーモント州の基準を超えてすべての遺伝子組み換え原料を自主表示する」としています。

大企業、市民団体の粘りに完敗

この一連の出来事で興味深いのは、巨額の資金を投入して表示義務化に反対し続けた大企業が市民団体の戦略と執念に勝てなかったこと、そして、世界に名立たるグローバル企業群が人口60万強の小さな州の規制に振り回されていることです。

安全性や意義はともかく、米国民の大多数は遺伝子組み換え食品の表示を望んでいます。市民団体はこうした国民の声を届けるべく、2012年からカリフォルニア、ワシントン、オレゴン、コロラドと各州で表示義務化に向けて取り組んできました。しかし、施行により食品価格が高騰すると主張する食品・アグリ業界の反対キャンペーンに阻まれ、いずれも否決されています。

これまでに業界が反対運動に費やした資金は1億ドル以上に上ると言われていますが、市民団体は諦めることなく各州に働きかけ、結果、バーモント州で表示義務化の施行が決定し、メインとコネチカットでは近隣州の参画等を条件に法案が可決しました。

業界はバーモントの施行を阻止しようと、州ごとの表示義務化を無効化するよう国会に働きかけたものの、上院で棄却され、万事休すとなりました。

大手食品企業にとって、全米で2番目に人口が少ないバーモント州は決して重要な市場とは言えないでしょう。にもかかわらず各社が自主規制に踏み切ったのは、違反時の罰則が厳しいこと、そして、同州だけに遺伝子組み換えを表示した製品を配送する特別な物流システムを構築するのは非効率であり、全米で自主表示する方が安く済むと判断したからです。キャンベルスープは、全米での対応に加え、同州の規制は例外規定が多くかえって対応が煩雑になるという理由から、規定外の製品を含め同社の全製品で表示することを決めています。

大企業における効率化と利潤追求の盲点を市民団体が見抜いていたのかは分かりませんが、結果として、たったひとつの小さな州の決議が全米を揺るがす大規模な表示改革に繋がったのです。

想定される今後の展開

今後他の州でも表示義務化が施行されれば、州ごとの対応は難しいため、企業は最も厳しい基準を想定した表示に切り替えざるを得ないでしょう。これまで表示規制が皆無だったアメリカで、企業は業務効率化と利潤確保のために、世界で最も厳しい基準での自主表示をするようになるかもしれません。

現時点では、バーモントの基準に即した形で全米対応する企業が多いようですが、かえって消費者が混乱することになりかねません。

全米での自主表示を行う企業は限られていますから、州外では同じ遺伝子組み換え原料を使っていても表示のある製品とない製品が混在することになりますし、州内でも動物性食品など規制対象外の製品には表示されませんから、表示のない製品が必ずしも遺伝子組み換え原料を使用していないことにはなりません。

結局、どうしても遺伝子組み換えを避けたい消費者は、有機か非遺伝子組み換え認証のある製品を選ばなければなりませんから、現状と何ら変わらないでしょう。

それでも、米食品大手が自主規制を行うようになったのは大きな変化であり、4年にわたる市民団体の努力が報われたことになるでしょう。図らずも市民の声が大企業に聞き入れられた事例として、長く語り継がれることになるかもしれません。

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