米、遺伝子組み換えの表示義務化に向け前進

(写真:ロイター/アフロ)

遺伝子組み換えに関する表示義務がないアメリカでは、長い間、“知る権利”を求める市民や市民団体と表示義務化を阻止したい食品・アグリ業界との攻防が続いていました。そして先日、この争いに終止符が打たれることが予感される新たな動きが起こりました。

市民団体は、連邦政府より法案が通りやすいため、州ごとに表示を義務化するよう働きかけており、これまでにメイン州とコネチカット州で近隣州の参画を条件に表示義務化法案が可決、バーモント州では今年7月から表示義務化が施行されることが決まっていました。

一方、食品・アグリ業界は、州ごとの対応は煩雑であるうえ、ひとつの州で施行されると他州の追随が容易になることから、何とかしてバーモントの施行を阻止しようと躍起になっており、国会議員に対して、州や自治体ごとの表示義務化を禁止し、代わりに国として任意の表示基準を定める法案を審議するよう要請していました。

この法案は反対派からダーク法(DARK:Deny Americans the Right to Know:国民の知る権利を否定する法律)と呼ばれ非難されていましたが、昨年、下院でこの法案が可決。同じく昨年末には、食品医薬品局が任意表示に関するガイドラインを発表し、上院での可決も時間の問題と見られていました。

ところが、上院では十分な賛成票を集められず、法案は棄却されました。これにより、7月のバーモント州での施行が現実味を帯びてきたのです。

企業による合理的な対応

これを受け、上院決議の2日後に、食品大手のゼネラルミルズが、ひとつの州のみで対応するとコストが高くなるという理由から、全米で自主表示することを発表。さらに、表示済の製品が店頭に並ぶまでに僅か数週間しかかからないことを明らかにしました。

同社は現在でも法案に賛成する立場を示していますが、数年前から一部製品で遺伝子組み換え原料を排除する試みを実施しており、傘下ブランドではオーガニック製品も多く取り扱っているため、表示にかかる負担はそれほど大きくなかったと見られ、水面下で着々と準備が進められていたようです。

これまで、食品業界は表示義務化に反対する理由として、製造工程での分別処理導入により価格が高騰すると主張していましたが、同社は今のところ、値上げに関して言及していません。

他にも、オーガニックスーパーのホールフーズやアイスクリームメーカーのベン&ジェリーズなど環境・社会問題対策に力を入れる食品小売・メーカーは早々に自主規制を発表。今年初めには、食品大手のキャンベルスープが表示義務化への支持を表明し、国が統一した義務化基準を制定できない場合は自主的に表示を行う旨を発表しています。

バーモント州での施行後は、多くの企業がこの流れに続き、全米での自主表示に切り替えることが予想されます。

表示により発生する新たな問題

しかし、表示によって遺伝子組み換えにおける問題のすべてが解決されるわけではありません。

バーモント州の規制は、偶発的混入率を0.9%と日本(5%)よりも厳しくEUと同等にしているものの、例外規定が多く、肉や牛乳などの動物性食品やアルコール類は対象外とされています。表示義務化によって規制の抜け穴ができ、むしろ消費者が混乱することになるかもしれません。

それでも、規制の実施は表示を望む国民の声が届いたことの証でしょうし、どうしても遺伝子組み換えを避けたい人はオーガニックという選択肢がありますから、情報開示の観点では一歩前進したと言えるでしょう。

遺伝子組み換えの安全性や必要性に関しては、依然議論が続いています。消費者は、表示されることで安心するのではなく、表示によって逆に見え難くなった問題に気付き、より一層注意深く企業に情報開示を求めていく必要があるでしょう。日本の消費者も、アメリカの状況から学び、自国における問題に適用すべきでしょう。