大学は無料化すべきか?アメリカで議論が活発に

(写真:アフロ)

アメリカで、大学の無料化に向けた議論が活発になっています。

テネシー州では2年前から州立2年制大学の授業料無料化を実施、オレゴン州とミネソタ州でも昨年同様の法案が可決しています。さらに、ニューヨークなど11州でも法案が提出され、議論が続いています。

オバマ大統領も、昨年に続き今年の一般教書演説でも公立2年制大学の無料化を提案。昨年7月には授業料の4分の3を連邦政府が負担する連邦法案「アメリカ大学誓約法(America’s College Promise Act)」を提出し、9月には労働省と企業の共同事業として1億7,500万ドルを投入し、今後5年で3万4千人の学生にIT・医療・高度製造技術の教育を提供することを発表しています。

また、民主党上院議員らは先週、公立2年制大学の授業料無料化に加え、低利率での学資ローン借り換え、連邦給付型奨学金の学費上昇率との連動などを盛り込んだ法案「教育負債削減法(Reducing Educational Debt Act)」を提出しました。

反対派は、無料化の実現に必要な600億ドルの資金源確保を疑問視し、民間投資による支援などの代替案を主張していますが、具体的な施策は未だ出ていません。

なぜ大学無料化が必要か

なぜ大学の無料化が議論されるのかというと、近年、大学の学費が高騰し、学生の負担が大幅に増しているからです。アメリカには連邦・州・民間による充実した奨学金制度があり、学生の60~70%が利用していますが、学資ローン総額は1.3兆ドルに膨れ上がっています。

大学進学適正試験(SAT)の運営母体であるカレッジボードの調査によると、4年制大学の昨年の年平均授業料は、私立32,405ドル(約380万円)、公立9,410ドル(約110万円)と、過去20年で70~110%も増加しています。寮などの費用を含めると、私立43,921ドル(約520万円)、公立19,548ドル(約230万円)に上ります。 

日本では、大学の年平均授業料は私立86万円、国立54万円ですが、2031年度には国立大学の授業料が93万円程度に上がるという試算を文部科学省が昨年末に出していますから、他人事ではないでしょう。

学費が高騰している理由は、学生数の増加率に州政府の支援が追いついていないことが原因とされています。カレッジボードによると、過去14年で学生数は30%増加しているにも関わらず、州の大学向け予算は3%減少しており、その差額が学費に転嫁されています。また、不動産所有や事務員・教員数の増加などにより大学の運営費が増加していることが原因とする見方もあります。

学資ローンの金利が高いことも問題で、連邦政府のローンでも4~7%であり、連邦ローンを組む学生の11.8%が自己破産しています。その多くは中退した学生で、ローン返済を抱えているうえ卒業後に十分な収入がないことが原因とされています。

大学教育の意義

そもそも大学教育を税金で賄う必要があるのかという声もありますが、欧州では多くの国が大学無料化を実現していますし、労働統計局によると大卒者の平均収入は高卒者の1.6倍になっており、大学教育は格差是正に一定の効果があると見られています。また、国としての競争力向上のためにも若者の教育は不可欠であり、特にコミュニティカレッジと呼ばれる実務に直結する2年制大学での教育は有益であるため、連邦政府の支援が必要と言われています。

教育制度に関しては各国様々な問題があり、様々な議論がありますが、本当に学びたい若者が学べる環境を提供するのは社会の責任ではないでしょうか。

アメリカは良くも悪くも日本の一歩先を行っているように思いますが、今後日本も同様の問題が起こらないよう、大学の意義や運営方法などを今から充分に議論しておく必要があるように思います。