「竹繊維はエコじゃない」米連邦取引委員会が大手小売4社に罰金130万ドル

(写真:アフロ)

アメリカでは、竹を原料とするレーヨン(バンブーレーヨン)製の繊維製品を「環境にやさしい」と主張する企業が後を絶たず、連邦取引委員会(FTC)が厳しく取り締まっています。

FTCは先日、ノードストロームやJCペニーなど大手小売企業4社に対し、バンブーレーヨン製の衣類や寝具を「竹繊維」と不当に表記し、抗菌性や生分解性を主張するなど環境にやさしいように見せかけたとして、計130万ドル(約1億6千万円)の罰金を科しました。

高級百貨店のノードストロームは36万ドル、百貨店のJCペニーは29万ドル、大型雑貨店のベッド・バス・アンド・ビヨンドは50万ドル、アウトドア小売のバックカントリーは15万ドル、既に全社が支払に合意しています。

バンブーレーヨン、何が問題?

アメリカでも日本でも、「竹」と表記して良い繊維は、竹の繊維をそのまま紡いで作る天然繊維だけです。麻やヘンプに似た堅い素材で、一般に「バンブーリネン」と呼ばれていますが、短く堅い竹の繊維を糸にすることは難しいため、まだあまり市場に出回っていません(著書)。

一方、レーヨンは木材や屑綿、竹などの原料を溶剤で溶かし、化学物質と反応させて糸状に形成して作る合成繊維です。日米共に繊維表示に関する法律で、原料に関わらず「レーヨン」と表記するよう定められています。

ところが近年、竹は生育が早く繁殖力が強いため農薬や肥料や大量の水を必要としないことから「環境にやさしい」と認識されるようになり、竹を原料とするレーヨン製の商品を「レーヨン」ではなく「竹」と表記する企業が増えてきました。さらに、レーヨン製品に竹自体が本来持つ抗菌性や生分解性があると主張する企業も出てきました。

続く摘発、止まらぬ違反

こうした状況を受け、FTCは2009年に、「竹繊維」や「環境にやさしい」と表記してバンブーレーヨン製品を主に販売していた中小アパレル4社を摘発。

以下の点で不当表示・虚偽広告に当たると指摘し、証明できない場合は表記を改めるよう指示しました(FTC)。

  • レーヨンは製造過程で有害物質を使用するうえ大気を汚染するため、原料が何であれ「環境にやさしい」繊維とは言えない。
  • 製品化後のレーヨンが原料である竹の抗菌性(製造過程で使用する物質による抗菌性ではなく)を保持することを証明する科学的な証拠はない。
  • 自治体のゴミ回収など一般的な方法で廃棄した場合、妥当な短期間では土に返らないため、生分解性があるとは言えない。

その後4社いずれもレーヨンの環境優位性や抗菌性・生分解性の証拠を提出することはできず、パブリックコメントを経て、同様の不当表示が起こった場合は一件につき最大1万6千ドル(約200万円)の罰金を科すことになりました。

それでも違反は減らず、翌2010年にFTCは、今回摘発されたノードストロームなど4社を含め小売企業78社に警告文を送付。

さらに2013年には、アマゾン、メイシーズ、シアーズ、マックススタジオの4社に計126万ドル(約1億5千万円)の罰金を科しています。

この間、FTCはウエブサイトで消費者・企業向けの資料をそれぞれ公開するなど、この問題を啓蒙する活動を行っています。

こうした経緯を経て、今回の摘発に至りました。

企業や個人がすべきこと

あくまで、バンブーレーヨンを販売することが悪いわけではなく、環境優位性を証明できないにも関わらず、環境にやさしいかのように主張することが問題です。

レーヨンは柔らかく滑らかな風合いに秀でた繊維ですから、堂々と「レーヨン」として販売すれば良いのですし、竹の環境優位性を主張したいのであればバンブーリネンを販売すれば良いでしょう。

繊維としては環境にやさしくなくても、原料の竹が木材よりも環境にやさしいと主張したいのであれば、アメリカでは原料を特定できる場合に限り「竹を原料とするレーヨン」と記載することが許可されています。ただし、この場合も消費者が誤認しないよう、レーヨン生産時の環境負荷を説明すべきでしょう。

環境優位性を計測・証明するのは難しいことですが、少なくとも企業は説明責任を果たすべきですし、消費者もさまざまな問題を学び自分なりの意見を持つべきでしょう。

JCペニーは今回の件に関し、以下のように発言しています。

「JCペニーには消費者を欺く意図はなかったので、FTCがこの問題に気付かせてくれたことを感謝しています。この件以降、弊社では製品に関する記述をより明確で透明性の高いものに作り変えています。また、製品原料の開示に関する内部トレーニングプログラムを作り、こうした問題を防ぐ方法を模索しています。」(Adweek)

今回摘発された他の企業も知らなかっただけかもしれませんが、FTCが取り締まりを開始してから6年が経過していますし、既にこれほど多くの企業が罰金を科されているのですから、今後は違反する企業は減っていくと思われます。

直接体内に入る食べ物と異なり、繊維製品は偽装表示があってもあまり大きな話題にはなりませんが、真摯に環境にやさしい製品を作っている企業のためにも、環境負荷を考えて行動している消費者のためにも、この問題が広く伝わることが大切だと思います。