アメリカで広がるアンチ消費主義、年最大の稼ぎ時ブラックフライデーに敢えて休業する店が出現

(写真:アフロ)

消費主義の権化のような国アメリカで、近年アンチ消費主義が叫ばれるようになっています。

過剰消費を表す象徴的な日、ブラックフライデー。

感謝祭(日本の元旦のような家族で過ごす国民の祝日、11月の第4木曜日)の翌日の金曜日のことで、クリスマス商戦の開始日ということもあり、小売店がこの日に一斉に大型セールを開催します。店が黒字になる日という意味で、ブラックフライデーと呼ばれます。

ところが、小売企業にとって年一番の書き入れ時であるこの日に、反消費主義を訴え、敢えて休業する店が出現しました。

この大胆な決断をしたのは、REIという全米に143店舗を持つアウトドアショップ。”買い物をやめて野外で遊ぼう”というキャンペーンを展開し、ブラックフライデーは全店休業。さらに、12,000人の店員には”野外で遊ぶため”に給与を払い、有給休暇とすることを宣言しました。ネットでのオーダーは当日受けるものの、処理するのは翌日の土曜日からにするとのこと。

同社では、ブラックフライデーは年10位以内に売上が多い日。にも関わらず、この決断に至ったのは、近年ブラックフライデーの競争が年々激化し、社会問題となっているからです。

過熱する買い物欲、ついに死亡事件も

感謝祭は本来家族と過ごす日であり、10数年前までほとんどの小売店は休業していました。ところが、ブラックフライデーの競争激化により感謝祭の夜から開業する店が増加。出勤を強いられた従業員の不満の声が高まっていました。

さらに、消費者の購買欲も過熱。前日から長時間行列していた客が開業と共に殺到し、客の下敷きになった従業員が死亡する事件や、先を争う客同士の争いで発砲事件が起こり、過剰な消費主義に対する批判が高まっていました。

こうした状況を受け、最近は感謝祭の日に休業する店が再び増え始めていました。同社もそのひとつでしたが、さすがに書き入れ時であるブラックフライデー当日の休業を宣言したのは同社が初めてです。

REIのストリツキーCEOは、「最初は売上減を危惧したが、人々が野外に出ることは同社にとって良いことであり、金銭を超えた成功をもたらす」と語っています(USA Today)。

マーケティングか、良い行いか

もちろん、同社のこの試みにはマーケティングとしての意味合いもあるのでしょう。同社のウエブサイトでは、この活動を拡散するよう伝えていますし、既に多くのニュースに取り上げられましたから、宣伝効果は小さくないはずです。

数年前には、アウトドアブランドのパタゴニアが似たようなマーケティングを行い、大成功を収めてます。サイバーマンデー(感謝祭の翌月曜日のネット上の大セールの日)に新聞やメルマガで消費主義を批判する広告を出し、同社のフリースの写真と共に「このフリースを買わないで」と訴えたところ、逆にその後1年で同社の売上は30%増えています。同社は環境意識の高い企業ですから、このような効果は期待していなかったのかもしれませんが、その後ソーシャルマーケティングの例として頻繁に取り上げられています。

REIもこれに倣ったのかもしれませんし、それを批判する声もあります。しかし、企業は収益を上げなければ成り立ちませんから、社会に良い影響を与えるマーケティングは決して悪いことではないでしょう。

日本でも近年、以前は家族とゆっくり過ごす日であった元旦に開業し、福袋で過剰消費を煽る店が多いですが、ブラックフライデーと同じでしょう。

買い物は悪いことではありませんが、必要ないものを安く手に入れることで満足するのではなく、必要なものが十分にあることに満足し、モノ以外の豊かさを見出す時代なのではないでしょうか。また、企業も本来必要ないものを売るために無理に需要を創出するのではなく、社会に意義のある製品を作り売るよう企業文化を変えて行くべきであり、そうした企業が支持される社会になりつつあるように思います。