米国で電力の再生エネルギー比率を50~100%にする法案が次々可決、実現可能性は?

(写真:アフロ)

米国の各州で、電力販売量に占める再生エネルギー比率目標を50~100%に設定した法案が相次いで可決しています。

今年6月には、ハワイ州で2045年までに100%、バーモント州で2032年までに75%とする法案が順次可決。今月始めには、カリフォルニア州で2030年までに50%とする法案が成立しました。

米国では州が詳細なエネルギー政策を策定しますが、電気事業者に一定割合の再生エネ導入を義務付ける政策「再生可能エネルギー・ポートフォリオ基準(RPS)」が導入されている州は、50州中29州とワシントンDC。加えて、法的拘束力を持たない再生可能エネルギー目標を設定している州が8州あります。

但し、州ごとに再生エネルギーの定義や規定内容が異なるため、単純に比率が高い方が良いというわけではありません。米環境保護庁は環境にやさしい再生エネルギーを「グリーンエネルギー」と定義していますが、ダム建設に伴う環境影響が懸念される大規模水力はこれに含めていません。国や地域により定義は異なりますが、大規模水力を含めるか否かにより比率は大きく変わってきます。

州ごとに異なるエネルギー事情

カリフォルニア州は、再生エネルギーの定義に大規模水力を含めていないにも関わらず、昨年時点で再生エネ比率が20%を超えています(風力が最も多く、次いで地熱、ソーラー)。現行目標は2020年までに33%であり、これに向けて電気事業者は既に様々な規制に対処しているため、30年までに50%は実現可能な目標と見られています。

ABCによると、州内の電気事業者はこの法案を好意的に見ているそうで、再生エネは成長分野であるうえ、転換コストの一部を消費者が負担することになるため、大きな不満は出ていないとのこと。

一方、消費者も、電気自動車の購入やソーラーパネル導入時の助成金やリベートなどにより転換コストを補填できるうえ、元々カリフォルニア州民は環境意識が高いこともあり、特に批判は出ていないようです。

ハワイ州では、風力、太陽、水力(大中小規模)、地熱、海洋(潮力、波力、温度差等)、バイオガス、バイオマス、バイオ燃料、再生エネルギー由来の水素と、再生エネルギーを幅広く定義しています。

同州は元々石油依存度が非常に高く、現在でも電力源の70%を占めていますが、既存のRPS(2010年末までに10%、15年末までに15%、30年末までに40%)に則り、風力・太陽光を中心に再生エネを積極的に導入した結果、昨年までに再生エネ比率が21.3%に達しています。

多くの州は、石油・石炭から再生エネに移行する過程で天然ガスに大きく依存していますが、同州は天然ガスにも大規模水力にも頼ることなく、一気に再生エネに移行しています。

新規制では、2040年末までに70%、2045年末までに100%と設定されていますが、この勢いで導入が続けば実現不可能ではないと見られています(EIADSIREDBEDT Hawaii等)。

バーモント州では、これまで法的拘束力のない目標のみが設定されていましたが、2014年末に同州電力源の70%を占めていた原子力発電所が老朽化により閉鎖されたことを受け、今年RPSを設定。再生エネ導入を加速しています。

同州最大の都市バーリントンは、住宅用電力の100%を再生エネルギーにした全米初の都市として話題になりました。

同州もハワイ州と同様に再生エネルギーに大規模水力を含めており、2013年時点で大規模水力を含めた再生エネ比率が42%、含めない場合は17%と、大規模水力が大半を占めています。RPSでは、大規模水力含めて2017年初までに55%、その後は3年ごとに4%ずつ増え、2032年に75%と設定されています(EIA)。

他にも、オレゴン州やワシントン州など大規模水力発電が盛んな地域では再生エネ比率が70~80%と高くなっていますが、そのほとんどが大規模水力です。元々化石燃料比率が少なく他州と比べて大きな改革は必要ないため、こうした州のRPSでは大規模水力を除く再生エネ比率目標として15~25%が設定されています。

なぜ導入を急ぐのか

州ごとに事情があるにせよ、なぜこれほど多くの州が急に再生エネ導入を強化しているのでしょうか。

ブルームバーグ・ニューエネルギーファイナンスは、建築費から運営費まで各電力のライフサイクル全体における総発電コストを分析した結果、陸上風力と太陽光発電の価格競争力が高まっていると発表しています。

今年前半から後半にかけて、陸上風力と太陽光発電の発電コストが下がる一方、石炭・ガス・原子力の発電コストは上がっており、特に陸上風力の発電コストは天然ガスとほぼ同じ程度まで下がっているとのこと。今後2年以内には、石炭・ガスよりも安くなると予測しています。

ブルームバーグ・ビジネスはこれを受け、"風力と太陽光がターニングポイントを超えた"とする記事を発表。資源の取得費用が掛からない点が事業者にとって魅力であるとし、化石燃料価格が上がると再生エネ導入が増え、再生エネ導入が増えると化石燃料発電の稼動量が減少して発電コストが高くなるため、再生エネ導入が一層増えるという好循環が生まれるとの論法を展開しています。

ハワイ州の州議会エネルギー環境保護委員長クリス・リー氏は、法案署名時の会見で次のように語っています。

「ハワイでは既に、新規の化石燃料発電より再生エネルギーの方が安くなっている。今後の技術革新により再生エネはさらに安くなるが、化石燃料は供給の減少とともに価格が高くなる。再生エネに移行する時期が早ければ早いほど、高価な化石燃料の購入に費やす金額が減る。」

一方、気候変動対策に積極的なカリフォルニア州のブラウン知事は、法案署名時にこう語っています。

「これまで我々の繁栄を支えてきた資源が、今では破壊の源となりつつある。我々がその源を取り除かなければ、破壊は実現してしまう。それはあまりにも辛いことだ。」

カリフォルニア州では、ここ数年歴史的な干ばつが続き、水不足が深刻化しています。他の多くの州でも、数百年に一度とされる大きな自然災害が相次ぎ、被害は拡大しています。

各州が導入を急いでいるのは、再生エネの価格が下がり機が熟したこと、激化・頻発する気候災害により対策の必要性が強く認識されるようになったことが要因なのでしょう。未だ化石燃料に大きく依存している州はありますが、今後も価格低下と災害の激化が続けば、いずれ移行せざるを得なくなるでしょう。それがいつになるかにより、次世代の人々の暮らしやすさが変わってくるのかもしれません。