水不足でトイレの汚水を飲料水に?アメリカでも激化する異常気象
広島の土砂災害のニュースはアメリカでも報道されていますが、米国内でも異常気象の激化・頻発は深刻です。
国土が広いアメリカでは多様な気象条件が揃っているため、東海岸など雨量の多い地域では洪水やハリケーン、逆に雨量が少ない南西部では旱魃や山火事というように、地域ごとにまったく異なる気象災害が起こっています。
その頻度と規模は増すばかりで、毎日いやというほど全米各地の災害のニュースが報じられています。
例として、先週一週間に起こった異常気象を挙げてみます。
洪水から旱魃まで、地域ごとに異なる気象災害
イリノイ州シカゴ周辺、インディアナ州東部、アリゾナ州フェニックス周辺、ニューヨーク州北部で、集中豪雨による洪水で家屋や車が水没。
ペンシルバニア州フィラデルフィアでは、暴風により多くの建物が損壊。
ワシントン州北部では、豪雨による土砂崩れで高速道路や車、家屋が損壊。この地域は先月大規模な山火事被害にあったばかり。
日本からの旅行者も多いヨセミテ国立公園の近郊では、山火事で13,000世帯に退避勧告。
ミズーリ、アラバマ、ジョージア州など南部では熱波で40度を越す猛暑に。
旱魃で水不足が深刻化するカリフォルニア州では、適切なノズルを付けずに車の洗浄や植物の水やりをすると500ドルの罰金を科す条例が施行され、ロサンゼルスでは水の使い過ぎを取り締まる警官の数を増やしています。
貯水池の残量が危機的状況にあるテキサス州北部のウィチタフォールズ市では、汚水を浄化して飲料水として再利用するシステムを導入し、水の蒸発を防ぐため貯水池にバイオポリマーを投入するなど、必死の対策を講じています。
汚水の再利用はインパクトがあったようで「トイレから蛇口へ」と大きく報道されましたが、下流に位置する都市では、上流の都市の汚水処理水が流出した川の水を浄化して飲料水として供給していることも少なくないので、特別驚くようなことではありません。ただ、さすがに自分で出した汚水を飲料水として再利用するとなると、気分的には嫌なものでしょう。
このように多くの気象災害が起こっていますが、先週だけ特別多かったわけではありません。ここ数年常にこのような調子です。
米国海洋大気庁によると、東海岸北部の都市で海面上昇により「不快なほどの」洪水が起こる頻度は1960年代と比べて900%も増加、東海岸南部やテキサスの一部では500%、カリフォルニアでは300%増加しているそうです。
なぜ異常気象が起こるのか
異常気象が頻発・激化している原因は、議論はあるものの、地球温暖化とする説が有力です(Scientific American)。
個々の現象は、特殊な気象条件の下にたまたま起こったことであり、温暖化と結びつけることは難しく、被害の程度も地域の災害対策状況に因るところが大きいですが、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)もオバマ政権も、温暖化が異常気象の激化頻発の要因のひとつである可能性が高いとしています。
そして、温暖化の原因は人類の経済活動である可能性が非常に高いのですから(IPCC)、私たちの行動次第で変化は起こるはずです。
温室効果ガス削減はこれまでうんざりするほど言われてきたことですが、十分な対策が取られなかったために、既に気温上昇2度以内という深刻な被害を食い止めるための目標値は達成不可能な状況に陥っています。そのため、ずいぶん前から、温暖化「緩和策」から温暖化「適応策」へと議論が移ってきています。
それでも、少しでも被害の規模を減らすために、温室効果ガス削減は必要ですし、災害対策の重要性は増すばかりです。
以前の記事でも記載しましたが、アメリカでは温暖化は政治的問題と捉えられがちです。しかし、頻発する自然災害を目の当たりにし、反対派議員たちも徐々に対策の重要性を認識し始めています。
自然の采配と諦めるのは簡単ですが、私たちができることは、たくさんあるはずです。
度重なる気象災害を見て、人々がどう行動するかにより、未来は決まっていくのでしょう。