【2019参院選】有権者ではない日本社会の一員「外国人」のことどう見てる?ー外国人関連公約・政策比較

2019参院選は入管法改正後初の国政選挙となる。外国人に対する主要各党の見解は(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

入管法改正後初の国政選挙、主要各党の「外国人」関連公約を比較

7月21日に行われる、2019年参議院議員選挙が4日に公示されました。主要7政党のマニフェストが出揃い、様々な公約が示されています。

筆者は2017年衆院選時に関連の公約比較を行いましたが、あれから2年弱の間に外国人を取り巻く状況には大きな変化がありました。

特に2018年末の臨時国会での審議を経て成立した改正入管法がこの4月に施行となり、単純労働分野への外国人の受入れが始まったことは日本社会の重要な歴史的転換点であると言えます。入管法改正以後初となる国政選挙において、主要各政党が有権者ではない外国人のことを、マニフェスト(公約)内でどのように扱っているのか、いないのか。現在、273万人に上っている“サイレントマイノリティ”(声なき少数者)である外国人に関係するキーワードより比較しました。

*今回参照・引用した各党マニフェストURLは最下部にリンクをまとめています。この記事で取り上げなかった難民、ヘイトスピーチについては各政党マニフェストをご一読ください。以下、各項目で囲み部分はマニフェストからの引用です。

各政党マニフェスト内に、外国人関係のキーワードが登場し言及があったかを表した(筆者作成)
各政党マニフェスト内に、外国人関係のキーワードが登場し言及があったかを表した(筆者作成)

外国人労働者(外国人人材、特定技能等)についての言及

【自由民主党】

・国内外で中小企業の即戦力となる高度外国人材の採用・定着支援やグローバル人材の育成強化を行います。(4ページ)

・外国人の適正な在留管理の徹底を図るとともに、特定技能外国人の大都市圏などへの集中を防止するため、地方における受け入れ環境整備や地方定着のノウハウ、優良事例の共有などを積極的に行います。(109ページ)

*上記他、新たな在留資格「特定技能」の介護および農業分野について、必要な支援を進めるとの記載あり。

【公明党】

・2019年4月から開始された特定技能制度の適正な運用を確保するため、賃金の上昇や生産性の向上、国内人材の確保に向けた取り組みを着実に進めます。また、一元的相談窓口の設置や受入れ地域が大都市圏に過度に集中しないよう、適切な運用を図ります。(35ページ)

【立憲民主党】

・外国人労働者の権利擁護や日本語教育の拡充などで多文化共生社会を実現します。(7ページ)

【国民民主党】

・グローバル人材と高度技能人材の育成のため、まず人的資源の裾野を広げることに注力し、その上で、産官学の連携による体制の強化を図ります。(49ページ)

・活力ある日本社会の実現には、外国人労働者が必要であり、その能力が存分に発揮され、国民との協働・共生が地域社会や生活の現場においても推進されることが大前提です。(49ページ)

*上記他、特定技能制度に留まらない抜本的な外国人労働者受入れの在り方について、適切な待遇や現行制度の見直しなどについて検討するよう政府に求めるとしている。また、外国人人材の大都市圏への集中の回避、受入れに際して生活支援や多言語ワンストップセンターの整備に取り組む自治体等に対する財政上の支援要望についても記載あり。

【日本維新の会】

・マイナンバーカードによる外国人労働者の在留管理。(4ページ)

【日本共産党】

・外国人労働者を雇用の調整弁にする改定入管法を抜本改正します。(17ページ)

・外国人の人権、労働者としての権利を守る体制を早急に確立します。(18ページ)

【社民党】

・新たな外国人在留資格について家族の帯同を認めないなど非人道的な仕組みの導入に反対し、外国人労働者を地域社会を構成する一員として正面から迎え入れる制度とします。(8ページ)

自民党、公明党が現行制度の適正な運用や管理について言及した一方で、日本共産党および社民党は制度の抜本的見直しや外国人の権利擁護を訴えており、「外国人労働者受入れ」における立場の違いが明確となっています。

技能実習生/技能実習制度についての言及

【自由民主党】

・技能実習生の適切な在留管理を図るため、実地検査のための体制強化や規則の改正などを通じて、制度の運用を適正化します。(109ページ)

【公明党】

・悪質な仲介業者の排除等を目的とした二国間の協力覚書の作成等を推進。技能実習制度についても、実地検査の体制強化等により、引き続き、適正な運用に努めます。(35ページ)

【日本共産党】

・制度本来の目的からかけはなれ、人権侵害の温床となっている技能実習生制度は廃止します。(17ページ)

【社民党】

・全ての外国人労働者の権利保護と生活支援を実施するとともに「外国人技能実習制度」を抜本的に見直し、実習生の人権尊重を最優先に技能・知識を真に学ぶことのできる本来の国際貢献制度に改めます。(8ページ)

こちらも外国人労働者と同様に自民・公明は制度維持の上適正な運用の強化を、共産・社民は制度自体の見直し・廃止という立場です。社民党はマニフェスト内に技能実習生の失踪者の推移に関するグラフを掲載しています。

外国人の子ども(外国人児童生徒等)についての言及

【自由民主党】

・日本に在住する外国人が社会に溶け込み、また活躍する環境を整備するため、公立学校における外国人の子供の日本語能力や学力を保障するための指導を行う教師や指導員の配置など、学習者の日本語能力に応じたきめ細やかな受入れ体制を構築します。(48ページ)

【公明党】

・高等学校段階におけるきめ細やかな支援を実現するため(中略)両親のいずれかが外国籍等の外国につながる子どもの受け入れ体制の充実、学科の在り方の見直し等に取り組みます。(8ページ)

・日本語能力が十分でない外国につながる子どもへの教育について、多言語翻訳システム等のICTの活用も促進しつつ、学校における日本語指導や母語による支援、進学等の包括的な支援体制を強化します。(9ページ)

【国民民主党】

・中長期に渡って日本で暮らす外国人が増加していることから、外国人の子どもの就学機会の確保や就学支援、学習支援を行います。(65ページ)

・外国をルーツとする子どもたちの幼児教育を含めた教育のあり方を検討するとともに、不就学や不登校の問題に取り組みます。(65ページ)

マニフェスト冊子版(PDFダウンロード)内で外国人の子ども等に言及したのは自民、公明、国民民主党のみとなりました。自民党は「外国人が日本社会で活躍するための日本語教育」との見出しをつけており、中長期的視野で子どもたちの教育を捉えていることがうかがえました。

公明党は「外国につながる子ども」という表現を用いて、高校内での支援やICT活用など具体的かつ最新の施策について言及しています。国民民主党は外国にルーツを持つ子どもの幼児教育についての記載があることが特徴的です。

尚、日本共産党、社民党はホームページ上でのみ海外にルーツを持つ子どもについての言及がありました。日本共産党は「外国人児童の学校教育、外国人学校の支援に取り組みます。」、社民党は「外国人学校への支援を強化」との記載が見られました。(「」内は原文ママで抜粋)

日本語教育/多言語化(翻訳等)についての言及

【自由民主党】

・外国人が日本語を学習する機会を確保することが必要です。今年成立した「日本語教育の推進に関する法律」に基づき、「地域日本語教育の総合的な体制づくり推進事業」などを継続的に実施・充実させるなど、真に外国人との友好を育むための環境整備を行います。また、海外における日本語の普及にも取り組みます。(49ページ)

*上記他、留学生の適切な在留管理を目的とした日本語教育機関の告示基準見直し、行政・生活情報について外国人の使用言語の多様化を踏まえた多言語対応の推進について言及あり。

【公明党】

・外国人が置かれている状況、能力に応じて日本語教育を受ける機会が確保されるよう日本語教育の機会を拡充。その基盤として日本語教育の水準の維持向上に取り組みます。(9ページ)

・外国人の方が適切な情報に到達できるよう、多言語対応を促進するなど、誰もが安心して暮らせる社会をめざします。(34ページ)

*上記他、日本語教育機関の告示基準の見直しや、人権相談等の多言語対応、外国人旅行者等受入れ環境のための多言語対応の推進など記載あり。

【立憲民主党】

・外国人労働者の権利擁護や日本語教育の拡充などで多文化共生社会を実現します。(7ページ、再掲)

【国民民主党】

・地域や職場、学校での交流事業の支援、日本語教育の機会確保、また外国人対応が増えている自治体への政府からの支援を求めます。(125ページ)

自民党は新たに公布・施行された「日本語教育の推進に関する法律」についても触れ、外国人との友好な関係構築のための日本語教育環境整備拡充を訴えています。また、自民・公明共に日本語教育機関(主に留学生を受け入れる日本語学校)の在留管理体制の強化を盛り込んでいる点が特徴的です。

日本共産党はホームページ上でのみの掲載が確認され、「地域での円滑な日常生活をおくるために、夜間中学などを含め外国人労働者・家族の日本語教育の充実を図ります。」と述べています。

共生(多文化共生等)に関する記載、維新を除く主要6党に

2019年参院選マニフェストにおいて全体的な特徴として、外国人関係のキーワードが顕著に増加したことの他、日本維新の会を除く主要6党に「共生社会」「多文化共生」等の言葉がキーワードとして登場していることが挙げられます。

自民党は国民と外国人の双方から声を聴くための取組を推進するなど、日本人と外国人が安心して生活できる多文化共生社会の実現を打ち出し、公明党は「日本人と外国人がお互いに尊重し合える共生社会の実現を目指す」と記載。

立憲民主党は「3つのパラダイムシフト」の柱の1つとして「多様性を力にする社会への転換」を目指し、多文化共生社会の実現を宣言しており、国民民主党は「日本国民との協働・共生が地域社会や生活の場においても推進されること」が活力ある日本社会の実現の大前提であると述べています。

共産党は人権の制約や差別があってはならないとし「多様性を認め合いながら共生する社会を作ります」と訴え、社民党も「個人の尊厳を尊重し、年齢、性別、国籍、人種、信条、障がいの有無等にかかわらず、多様性を認め合い、人権を尊重する共生社会をつくります」と記載が見られました。

それぞれの共生社会、多文化共生社会に対する微妙なニュアンスの違いから、私たち一人ひとりがどのような選択をしてゆくのか。改めて入管法改正による歴史的転換点後の日本社会の未来について考えてみていただければと思います。

さらに詳しく知りたい方へ・・・

最後に、さらに外国人関連政策について各政党の立場を詳しく知りたい方々は、NPO法人移住者と連帯する全国ネットワークが実施した「移民政策についての政党アンケート」https://migrants.jp/news/voice/20190703.html)をぜひご参照ください。

技能実習制度は継続すべきか、永住・定住外国人の地方選挙権を認めるべきか、移民基本法を制定すべきかなどについて各党へのアンケート結果がまとめられています。

<<今回参照した各政党マニフェストおよびホームページ上のみに掲載の詳細版ページリンク>>

【自由民主党】

総合政策集2019 J-ファイル

https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/pamphlet/20190618_j-file_pamphlet.pdf

【公明党】

公明党政策集 Manifesto2019

https://www.komei.or.jp/campaign/sanin2019/_assets/pdf/manifesto2019.pdf

【立憲民主党】

立憲ビジョン2019

https://special2019.cdp-japan.jp/#rikken_vision

【国民民主党】

新しい答え2019

https://www.dpfp.or.jp/election2019/answers

政策INDEX2019

https://www.dpfp.or.jp/election2019/policies

【日本維新の会】

日本維新の会2019参議院選マニフェスト

https://o-ishin.jp/sangiin2019/common/img/manifest2019_outline.pdf

日本維新の会マニフェスト―詳細版―

https://o-ishin.jp/sangiin2019/common/img/manifest2019_detail.pdf

【日本共産党】

2019参議院選挙公約

https://www.jcp.or.jp/web_download/2019/06/201907-sanin-kouyaku-zen.pdf

各分野の政策

https://www.jcp.or.jp/web_policy/2019/06/2019-sanin-index.html

【社民党】

ソーシャルビジョン 3つの柱

http://www5.sdp.or.jp/data/election_sangiin_2019/sangiin_2019_manufest_201906.pdf

2019年 参議院選挙 選挙公約詳細

http://www5.sdp.or.jp/election_sangiin_2019_detail