所属なき言語難民―「既卒(きそつ)」のティーンエイジャーたち

日本に来ても、社会的な「所属」を持てない外国ルーツの子ども。受け皿の整備が急務(写真:アフロ)

平成27年度国勢調査の結果が、2017年4月26日に公表されました。この調査によると、外国籍を持ち、日本に暮らす15歳~19歳のハイティーン(10代後半)の子ども・若者は全国に74,517人いることがわかりました。同年代の日本国籍を持つハイティーンは約589万人です。

同じように日本に暮らしている10代後半の子ども・若者ですが、彼らの現状を比べると大きな違いが見えてきました。

15歳~19歳の日本人の子ども・若者の状況(27年度国勢調査)
15歳~19歳の日本人の子ども・若者の状況(27年度国勢調査)

上の図は、平成27年度国勢調査「就業状態等基本集計」より、労働力状態(年齢別5階級)のデータより作成しました。日本人のハイティーンの場合、「通学」が77.7%であり、「通学のかたわら仕事(6.6%)」を合わせると、おおむね84%が高校または大学、専門学校などに通っています。

一方で、こちらの図を見てください。

15歳~19歳の外国人の子ども・若者の状況(27年度国勢調査)
15歳~19歳の外国人の子ども・若者の状況(27年度国勢調査)

こちらは同じ調査から、外国籍を持つハイティーンの子ども・若者の労働力状態をグラフにしたものです。外国籍の場合、「通学」は48.9%にとどまり、「通学のかたわら仕事(6.2%)」を合わせても、55.1%にしかなりません。日本人の同年代の方と比べ、学校に通っている割合が低いのが特徴です。

また、外国籍のハイティーンの方は「労働力状態『不詳』」の割合が25.5%(日本人は6.3%)と高いことも目立っています。

なぜ通学率が低いのか

1つは外国にルーツを持つ子どもたちの「高校進学率の低さ」が挙げられ、また、もう1つにはこうした子どもたちの「高校中退率の高さ」が考えられます。

彼らの高校進学に関する課題について、詳しくは筆者の過去記事をご一読いただければと思いますが、進学率が60%程度に留まり、高校中退率は現場ベースでも15%以上にも上ることが、国勢調査上の通学率の低さとして表れているのではないかと見られます。

制度の狭間でーどこにもつながらない「既卒」の子どもたち

私たちの支援する外国にルーツを持つ子どもたちは、年間100名前後にのぼりますが、このうちの約20%程度が、出身国(海外)で義務教育相当にあたる9年間の教育機関を修了した後に来日した、15歳以上の「既卒(きそつ)」の子どもたちです(日本国籍を持つ既卒者も含まれています)。

年間を通して、この既卒の子どもたちが日本語教育機会と高校進学支援機会を求めて、私たちの支援現場へ続々とやってきています。その多くが、お父さんやお母さんが幼少期の子どもを親戚などに預けて来日し、経済的な基盤ができた後や、子どもたちの教育の節目(現地の中学校卒業など)などでわが子を日本へ呼び寄せたというケースです。

来日直後の外国にルーツを持つ学齢期の子であれば、日本の小中学校への就学を通して行政とつながることができますし、学齢超過(義務教育年齢を超えた15歳以上)であっても義務教育未修了者であれば、アクセス可能な地域に夜間中学がある場合はそこへ就学することが可能です(とはいえ、まだまだ不十分な状況ではありますが、最近では義務教育修了者受け入れの動きも拡充方向に)。

また、日本語学校や大学への留学生の場合も、来日直後から「学生」としての所属を得ることができ、日本語学校などを通じて社会との接点は確保され、万が一の際には教育機関などが行政支援へ当事者をつなぐことができます。

「つながりづらく」「発見されにくい」子どもたち

一方で、15歳以上で来日した既卒の外国にルーツを持つ子どもたちが日本国内での教育の継続(高校進学)を希望する場合には、無事に高校への進学を果たすまで、日本社会の中で所属を得ることが困難であり、所属を持たないことで、行政がその存在を把握できる機会も限られています

NPOなどの支援団体であっても、主たる支援対象者が「学齢期」の外国ルーツの子どものみでニーズにあっていなかったり(この場合、「高校進学の勉強は教えられない」と断られることも)、1か月あたりの活動日数が少なく、十分な支援に至らないなどのケースも見られます。

冒頭にご紹介した国勢調査上、25%を超えた「労働力状態『不詳』」の15歳~19歳の外国籍の子ども・若者(数にして、約19,000人)の中には、こうした所属を持たない子どもたちも少なくないのではないか、とみています。

行政にも民間支援にも「つながりづらく」、どこからも「発見されにくい」状態で、さらに保護者の日本語の力が不十分な場合などは、日本社会の制度等について正確な情報を得ることが難しくなります。

「外国人は日本の高校には行けないと思っていた」と言った誤解が生じたり、いつまでも日本語を学ぶ機会を得られないまま、進学も就労もできないような状態に陥り、社会から隔絶された日々を過ごすことも珍しくありません。

家庭の中などでトラブルがあっても、日本語が不十分な、社会経験のないティーンエイジャーが自ら声を上げることは難しく、発見が遅れるかそのまま埋もれてしまう危険性があります。

いち早く「発見」するために

現在、公立小中学校の中でこうした日本語を母語としない子どもたちの日本語教育を支えるため、政府は体制整備を進めつつあります。高校進学後の支援も、先駆的な自治体内では取り組みが進んでいます。また、定住外国人を対象とした就労のための日本語教育を含む研修事業なども拡充され始め、日本政府は、少しずつ支援の手を広げようとしています。

その一方で、いずれの枠組みからもこぼれ落ちている10代の子ども・若者たちが、日本語を学ぶこともできないままにこの日本社会で暮らしている実態があり、まずはその現状を把握し、社会が彼らの存在を認知する必要があります。

また、外国の学校で義務教育を修了していたとしても、日本語を学びたい外国人や若者の受け入れをすべての夜間中学で進めたり、公立中学校内に設置されている日本語学級のみを利用できるようにするなど、現在ある枠組みであっても受け皿として機能できるような可能性を探り、進めて行くべきではないでしょうか。

外国人労働者100万人時代を迎えた今、国はその子どもたちの教育保障を

厚生労働省が1月27日に発表した外国人雇用の届出状況によると、日本で働く外国人労働者は、前年度と比べ19%以上増加し、初めて100万人を超えました。4年連続で過去最高を記録し、今後も増加を続けるでしょう。

外国人労働者は生活者でもあり、制約のない在留資格であれば家族を呼び寄せ、国内で共に暮らす流れも加速しています。外国人労働者が呼び寄せる家族の中には、「子ども」も含まれており、子どもたちの教育や日本での自立・就労は外国人の親にとって大きな関心事です。

どの年代の子どもたちであっても、日本国内での教育を保障することは、親世代である外国人労働者の定着を促し、また近い未来のバイリンガル人材を育成する社会的に重要な投資でもあり得ます。子どもたちの時間は限られています。「手を伸ばしやすいところから、少しずつ」の対処療法ではない、外国ルーツの子どもたちの現状を未来を見据えた教育の保障と、適切な施策の実施が求められています。