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Omoinotake 『チェリまほ THE MOVIE』主題歌「心音」は「ポジティブだけど泣ける」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ソニー・ミュージックレーベルズ

『チェリまほ THE MOVIE』の主題歌「心音」が好調

島根県発の要注目3ピースバンド・Omoinotakeが手がけた、現在ヒット中の映画『チェリまほ THE MOVIE~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』の主題歌「心音」が、4月13日に配信され好調だ。SNS上では、映画を観たユーザーから「心音」について「心に刺さって泣けた」「感動した」「号泣」「結婚式で使いたい」等、様々な感動したというコメントが飛び交い、ドラマ版(2020年10月期)でもオープニングテーマ「産声」を担当したOmoinotakeの、劇場版での主題歌にも注目が集まっていた。

ドラマのオンエア終了後、その反響の大きさから劇場版へと進化した“チェリまほ”。Omoinotakeはこの「心音」と向き合ったのか、藤井怜央 (レオ/作曲/Vo&Key)、福島智朗(エモアキ/作詞/B)、冨田洋之進(ドラゲ/Dr)にインタビューした。

「ドラマ版のOPテーマ『産声』とつながってはいるけど、新しいものを作りたかった」(エモアキ)

エモアキ ドラマ版のオープニングテーマ「産声」はどうしても尺が決まっていて、1分半でワンコーラスしか流れないのですが、本当はもっと詰め込みたい言葉がたくさんありました。なので今回の劇場版の主題歌では、そこをより深めたいという気持ちが強くて。改めて「産声」を聴いたときに、ひとりよがりな心の誕生を歌った歌だと思って、「心音」は最初は“Reborn”という仮タイトルで書き始めて、でも書きたい心は「産声」の時の延長線ではなく、つながってはいるけど新しものを作りたいという思いがあったので、そこを突き詰めていきました。

デジタルシングル「心音」(4月13日配信)
デジタルシングル「心音」(4月13日配信)

<産声をあげて心音を打つ>という歌詞に「産声」との繋がりを感じることができ、詞先でできあがった曲だということだが<バラバラ><ジグザグ><ドキドキ><トクトク>という擬音語・擬態語が効果的に使われ、それが曲全体のリズムも作りだしている。

エモアキ 「産声」にも<胎動>とか、まさに<心音>とか<鼓動>という言葉が含まれているので、その辺は絶対に使いたいと思っていました。詞先でいくと決めた時点で、擬音語・擬態語を入れて表現してみては」というアイディアがメンバー、スタッフから出てきて、元々の<バラバラで産まれた僕らなのに 同じリズムを刻む二つの心音」と、後半の<バラバラで生まれた僕らだから 残りの時間くらい そばに居てほしい>というフレーズに、自分が思っている“パンチ”をぎゅっと詰め込めた歌詞だと思っていたので、それを薄めないようにしたいと思いました。

レオ 今回は2コーラスくらい歌詞が完成した状態からメロディ作りに取り掛かったので、<バラバラ><トクトク>というワードも印象的だし、<僕の心が>という歌の入りとか含めて1番、2番でちゃんと形ができていて、加えて<コピー&ペースト><ポーカーフェイス>とか、立たせるべき言葉が見えやすかったです。でもそれがありがたい反面、当然そこにベストなメロディを付けなければいけないので、200パターン位作りました(笑)。映画の予告で、赤楚衛二さんと町田啓太さんが出ているシーンから曲が流れるのも想像できたので、<バラバラで生まれた 僕らなのに>というメロディを、どれだけ最強のものにできるかというところに、まずは一点集中しました。

「原作、ドラマのファンの方が『産声』を気に入ってくれて、それが本当に嬉しかった。『心音』も期待に応えたかった」(レオ)

「『心音』はポジティブだけど泣ける曲にしたかった」(エモアキ)

ドラマ版の主題歌「産声」が好評だったこともあって、さらに力と気合が入った。

レオ 「産声」の時に原作のマンガ、ドラマのファンの方が『ごくドラマに合っている「原作の雰囲気を汲んで作ってくれている」って言ってくれたのが本当に嬉しくて、「心音」でもその期待を裏切ってはいけないと思いました。

エモアキ 1番が主人公・安達清(赤楚衛二)の心情で、2番が黒沢優一(町田啓太)の心情を描いていて、映画のエンドロールでは2番に入った瞬間に、黒沢さんのクレジットが入ってくるような作りにしていただいたり、嬉しかったです。自分で言うのも変ですが、本当に歌詞がバッチリはまっていてよかったです。自分が得意としているものが、焦燥感とか喪失感からくるエネルギーだと思っていて。この「心音」は、ポジティブだけどどこか泣けるという曲にしたかったし、こういうのもできるんだという新しい発見もありました。改めて、泣けるって何だろうって考えました。嬉しくて泣けることもあるし、それはどうしてだろうと思ったら、誰かと感情が重なっているってすごいことだと改めて思いました。「心音」では、そこが描けたと思っています。

アレンジも自分達で手がける

泣けて踊れる曲が、Omoinotakeの音楽だ。「心音」もホーンが印象的に響く繊細かつ熱いバラ―ドでまさにOmoinotakeの真骨頂ともいえる一曲だ。メジャー1stEP「EVERBLUE」では、プロデューサーに蔦谷好位置を迎え、そのアレンジ手法を目の当たりにし、大いに刺激になり、それが今回のアレンジにもつながっているという。

ドラゲ レオがアレンジしたものを送ってきた時に、元々こういうゆったりとしたビートが好きだったこともありますが、歌詞やメロディをすごく引き立てるアレンジで心地よくて、でもクールな部分もあって。すごいアレンジ作ったなって思って、本当に「藤井君、万歳!」ってなりました(笑)。

エモアキ 今まで何人かのアレンジャーの方が手がけてくれて、曲が華やかになっていましたが、今回はレオのアレンジの時点でいきなり華やかになっていて。

レオ まさに「EVERBLUE」で蔦谷好位置さんに、2トランペット+サックス+トロンボーンというホーンアレンジをしていただいて、それを参考にしながら同じ編成で試行錯誤しながら考えました。今回は自分達でアレンジまでやりましたが、やっぱりアレンジャーの方とやると刺激をもらえるので、これからも曲によって色々と試してみたいと思います。

コロナ禍でのライヴは「やっていいのだろうか、でもやらなくちゃいけない、もどかしい気持ちでいっぱいなった」(ドラゲ)

Omoinotake は昨年11月に発売した 1st EP「EVERBLUE」のリリースワンマンツアーを行なっていたが、今年2月藤井・冨田が新型コロナに感染し、地元島根・松江での公演が当日に中止になるという試練に見舞われた。誰の身に起こってもおかしくない状況だが、3月に無事振替公演を地元で行ない、リベンジを果たした。

ドラゲ 仙台からツアーが始まって、Twitterを見ると「こういうご時世だからライヴやめます」という声もたくさんあって。もどかしい気持ちでいっぱいになりました。一方で楽しみにいてくれている人達もたくさんいるし、ライヴをやらなくちゃいけなくて、でもやっていいのかなという不安もずっとあって。その問題が実感として間近にやってきたなって思いました。3月の島根公演ではお詫びと感謝の気持ちを込めて、アンコールでいち早く「心音」を披露しました。

エモアキ 1ヶ月延期したことで、観に来れた人も逆にたくさんいて。それも不幸中の幸いというか。とにかく安心してたくさんの人に観てもらえる嬉しさのようなものはありました。

「目標は『紅白歌合戦』に出場すること。そのためには“ヒット曲”を作らなければいけない」(レオ)

冨田洋之進(ドラゲ/Dr)、藤井怜央 (レオ/作曲/Vo&Key)、福島智朗(エモアキ/作詞/B)
冨田洋之進(ドラゲ/Dr)、藤井怜央 (レオ/作曲/Vo&Key)、福島智朗(エモアキ/作詞/B)

自他ともに認める“ライヴバンド”であるOmoinotakeは、この後「OSAKA METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2022」を始め、フェスや対バンライヴ、イベント等、ライヴを積極的に行なっていく。メジャーデビュー後、コロナ禍で思うように活動ができない部分もあったが、3人のこれからの“野望”を聞いてみた。

レオ この前チームで「最終目標って何だったっけ?」て改めて話し合って、昔から掲げている「紅白歌合戦」に出場することだということを再認識して、そこに向けてどうするべきかということです。ヒット曲を作りたいというのは変わりないので、それを実現させます。

エモアキ 国民的に認知される曲を作りたいと毎回思いつつ、着々とステージを上げていくしかないということだと思います。

ドラゲ 「紅白」に出ることができたら、日本武道館でもライヴができる、そんな感覚です。

Omoinotakeは5月28日ブルーノート東京で行われる「LIVE With ensemble Vol.1

MONONKVL × Omoinotake」に出演する。"With ensemble"はプロデューサーにヴァイオリニストでmillennium paradeのメンバーとしても活動する常田俊太郎、クリエイティブディレクターに映像監督・林響太朗、音楽監督にチェリスト/作曲家/編曲家として多方面で活躍する徳澤青弦を迎え、オリジナルアレンジのオーケストラ演奏に、毎回ゲストアーティストを迎えてその日限りのライヴ・アンサンブルを切り取るYouTubeの人気コンテンツだ。今回は観客を迎えて行う初のライヴで、ストリングスの音が映えるOmoinotakeの音楽が、どんな表情で聴き手に届くのか楽しみだ。

Omoinotake オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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