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森口博子 “一音入魂”のガンダムソングカバー集最終章は、TMN他とのコラボで“男達の歌”を熱く届ける

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/キングレコード

人気シリーズの最終章『GUNDAM SONG COVERS 3』は、男性ボーカル曲をカバー

森口博子がガンダムソングの素晴らしさを、一人でも多くの人に伝えるべく取り組んでいる“大人のためのガンダムソングカバーアルバム”シリーズの第3弾で、最終章の『GUNDAM SONG COVERS 3』が3月9日に発売された。この企画の始まりは、2018年にNHKで放送された「発表!全ガンダム大投票」で、名曲の宝庫と言われている全361曲のガンダムソングの中から、森口のデビュー曲で「水の星へ愛をこめて」(「機動戦士Ζガンダム」のOP)が1位、「ETERNAL WIND ~ほほえみは光る風の中~」(「機動戦士ガンダムF91」主題歌)が3位にランクインしたことから始まった。これまでのシリーズ2作はガンダムファンはもちろん、ガンダムを知らなかったリスナーからも絶賛され、いずれもロングヒットになっている。

『GUNDAM SONG COVERS 3』(3月9日発売・初回限定盤/(C)創通・サンライズ)
『GUNDAM SONG COVERS 3』(3月9日発売・初回限定盤/(C)創通・サンライズ)

そして第3弾の今回は男性ボーカル曲だけをセレクトし、カバー。TM NETWORK、オーイシマサヨシ、押尾コータローら豪華アーティストとのコラボにも注目だ。森口にインタビューし、今回の作品に込めた思いを聞いた。

「シリーズがここまで大きくなるなんて本当に驚いています。第一作目がオリコンウィークリー3位、「日本レコード大賞」企画賞を受賞して、続編がオリコンウィークリー、ビルボードジャパン週間ランキング2位と、ありがたい事に予想以上の大反響だったので、実は2作目の企画会議の時から、3作目のアイディアが既に湧き上がっていたんです。豪華アーティストの方々とのハッとするようなコラボレーションの嵐で、ジャズからロック、アッパーからスローバラードまで、アニソンや森口博子への先入観、食わず嫌いの壁をとっぱらってくれたこれまでの作品に続いて、3作目もかなり贅沢なアルバムが誕生しました。1曲目は、あの“燃え上がれ〜ガンダム♪”の「翔べ!ガンダム」が、11人編成のビッグバンドスタイルのジャズアレンジになっています。私の頭の中で鳴っている音を、スキャットでスタッフの皆さんに説明して、アイディアを採用してもらいました。『こう来たか!』ってファンのみなさんに驚いて欲しかったのですが、MVでも『イイ意味で裏切られた』などの感想が届き、大反響で大成功で興奮しています」。

TM NETWORKとのコラボは「3人のコーラスが聴こえてきた瞬間、思わず『感動!』という歓喜の声と、涙が出ました」

今回のテーマは、ガンダムの世界を彩った"男達の歌"。男性ボーカル楽曲にスポットを当て、豪華ミュージシャンをゲストに迎えレコーディング臨んだ、それぞれのコラボの熱量が高い。「BEYOND THE TIME ~メビウスの宇宙を越えて~」(「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」主題歌)は 、TM NETWORK とのコラボが大きな注目を集めている。

「友人でもある木根尚登さんも、このカバーシリーズを褒めてくれて嬉しかったんです。それで今回是非このTM NETWORKの楽曲を、メンバーのみなさんとコラボレーションさせていただけたら、ファンのみなさんも喜んでくれるだろうなと思って木根さんに相談したら、みなさん快諾してくださって、感激しました。すぐに木根さんと小室哲哉さんにお会いして、小室さんのスタジオで打ち合わせしました。オリジナルは打ち込みでカッコいい世界観だったので、今回は『やわらかく、ピアニスト小室さんが見えるアレンジでお願いします』と、私の制作スタッフからお願いしまして、コンセプトを説明させていただきました。リアレンジは随所にその美しい旋律が際立っているのと、イントロから宇宙空間、音の立体感を感じて、3D音楽のようで心が震えました。ガンダムを知らない方も、すごく凛とした美しい世界を感じて引き込まれること間違いなしです。コーラスをお願いしました宇都宮隆さんと木根さんにはレコーディングの前日、電話でエール&アドバイスをいただいたんです。本番はお二人の声を想像しながら歌いましたが、完成したものを聴いて驚きました。木根さん宇都宮さんと、なんと小室さんまでコーラスを入れてくださって、3人のコーラスが聴こえてきた瞬間、思わず『感動!』という歓喜の声と、涙が出ました。みなさんが愛情を持って声を入れてくださって、このカバーシリーズがここまで成長したんだなって感慨深かったです」。

「ターンAターン」を歌った西城秀樹と、当時交わした会話とは?

「ターンAターン」(「∀ガンダム」OPテーマ))は、オリジナルは西城秀樹のドラマティックな声が、ガンダムのドラマティックな世界観をさらに盛り上げる、熱いロックだ。

「この曲を知らない方に、まず原曲の秀樹さんの熱いボーカルを聴いていただきたいです。作品のタイトルを連呼するフレーズがあるのですが、これはアニソンに限らずボーカリストにとっては表現力を問われるというか、すごくハードルが高いフレーズなんです。でも秀樹さんの熱量と、絶対的オーラは改めて唯一無二だと思います。秀樹さんが、当時この曲を歌う時に私に電話をくださいました。『博子ちゃん、ガンダムってどんな世界?』って。私が『とてもひと言では語れない、難しい世界です』って返すと『博子ちゃんはガンダムをずっと歌ってるから、ガンダムの先輩だね』って。その会話がまるで昨日のことのように思い出されます。今回、私がカバーさせていただくにあたり、レコーディングの当日に奥様に『これから歌入れです』とご報告させていただきました。歌っている途中でエネルギーが足りないなって感じて、でも徐々にエネルギーが湧き上がってきて、これは秀樹さんが力をくれていると感じた瞬間がありました。アレンジは原曲の熱量をそのまま伝えたいなと。原曲には雅な音がポイント的に入っていたので、更に強調したくて和楽器バンドの神永大輔さんの尺八をリクエストしました。あんな、管楽器のようなアグレッシブな尺八の音は初めてで、度肝を抜かれました。新たなロックが体感できます」。

「『Gの閃光』は絶対挑戦したかった」

『~2』で、歌って欲しいガンダムソングへのリクエストを募ったところ、10万票を越えるリクエストのベスト10は全てが女性ボーカルものだった。しかし11位以下には、男性ボーカルもので歌っていない名曲がたくさんあって、挑戦したいという思いに駆られたことも、今回の作品の制作につながっている。そんな中でも森口が、絶対に挑戦したいと思った曲とは?

「『Gの閃光』(「ガンダム Gのレコンギスタ」EDテーマ)です。今まで色々なイベントやライヴでカバーさせていただいているのですが、なんて清々しくて、エネルギーが湧いてくるいい曲なんだろうってずっと感じていました。押尾コータローさんとはシリーズ全作でコラボさせていただいていて、去年私の35周年コンサート(東京国際フォーラム)にも出演していただきました。キラキラでパーカッシブなギターが最高にカッコイイです!!」。

これまでのシリーズでも共演している、リスペクトするアーティストとのセッションは「感動を裏切りません」

『GUNDAM SONG COVERS 3』(通常盤)
『GUNDAM SONG COVERS 3』(通常盤)

SALT&SUGARとの「いくつもの愛をかさねて」では、塩谷哲の透明感を感じるドラマティックなピアノと、森口が尊敬するボーカリスト・佐藤竹善の歌と響き合う様子は「シンプルイズベストの究極で、塩谷さんの美しいピアノと、竹善さんの心鷲掴みのとろける歌声で腰が砕けます」(森口)。以前から親交がある3人の、固い信頼関係から生まれる、一発録りセッションから伝わってくるものを味わいたい。

一発録りといえば、「RIVER」では、このシリーズではおなじみのヴァイオリニスト寺井尚子の表情豊かなヴァイオリンの音色とピアノのセッション。森口の歌の陰影をより濃くしている。「どんな時も尚子さんの歌心ある情熱的な演奏は、感動を裏切りません」。さらにオーイシマサヨシとのコラボ「STAND UP TO THE VICTORY 〜トゥ・ザ・ヴィクトリー〜」は、「オーイシマサヨシさんの疾走感あふれる天才的なアレンジと、ハッピーな歌声は世界を救います!!」。

このシリーズを振り返って

VOJAの声が重なって、壮大な宇宙をイメージさせてくれる「ビギニング」では、レコーディン中に思わず涙が出てきたという。

「ゴスペルコーラスグループのVOJAさんの生命力ある歌声が、この神々しい世界にぴったりなんです。この曲は最初穏やかに始まって、最後は扉を開けるように広がって、盛り上がっていきます。<すこやかに>という富野(由悠季)監督の歌詞(井荻麟名義)や、作曲と歌の井上大輔さんの祈りのような旋律と、普段私が願っていることとすごくシンクロしていて。私は“健やかに”という言葉を、ブログやラジオでもよく使いますが、これはパーソナルな部分はもちろん、地球的規模の意味でいつも届けています。そういう意味合いとか、ここまで来たんだなって改めてこのガンダムシリーズの偉大さと、このカバーシリーズを振り返って、私はこんな豪華客船にファンのみなさん、スタッフのみなさん、アーティストのみなさんに乗せていただいていたんだなって泣けてきました」。

改めてそのシンガーとしてのプライド、そして脱帽の表現力を感じることができる一枚に仕上がっている。

「佐藤竹善さんに『このシリーズの歌には気迫を感じる』と言っていただけました。やっぱりメッセージ性の深いガンダムソングは魂を全力で注ぎ込まなければ歌えません。それくらいいい意味で手に負えない作品ばかりです。でもそれが誰かの心に届いて響いてくれるのであれば、という思いでシリーズ3まで歌ってきました。歌手・森口博子のテーマでもある“一音入魂”の精神が、このアルバムには込められています」。

■『森口博子コンサート“Starry People”』/2022年5月3日(火/祝) 昭和女子大学 人見記念講堂(開場 16:30 / 開演 17:30)

森口博子『GANDUM SONG COVERS 3』特設サイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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